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第1章白銀の錬金術師の奮闘記
9騎士科の怒り
一般科、騎士科の訓練場にて。
一人怒り狂う美しき男装の麗人が素振りに励んでいた。
「はぁ!はぁ!」
女性ながら将来近衛騎士団長と期待されるセフィーナ・ファイブスター。
中性的な顔立ちであるが、男装をすれば女性と分からないほど男性的だった。
ファイブスター家は由緒正しき王族専属の護衛騎士の家柄だった。
その昔は王家の秘宝の一つ聖剣を与えられたともいわれる名門中の名門だった。
セフィーナ自身も騎士としての高い誇りと努力を重ねてきた。
それゆえに騎士道を貫いている。
正々堂々とした一本気な性格のセフィーナは無心に剣を振るうのだが、上級生が心配そうに見ていた。
「セフィーナ様が荒れておられるな」
「無理もない。ディアナさんの件を聞いたらな」
「結局犯人は内々に片付けられたんだから許せないだろう」
上級生は歯がゆい気持ちだった。
「医務室で体調を崩されたディアナさんは早退したそうだ」
「聞けば様態が酷く、未だに水以外飲めないとか」
学園内では毒の影響で嘔吐が激しく水分を取っても嘔吐したと噂が流れた。
実際は自業自得で嘔吐しただけなのだが、偽りの噂が広がりつつある。
「様子を見に行かれたシリル様が急いで看病したそうだ」
「何でも吐血して制服が汚れたとか…大丈夫だろうか」
騎士科の三年生はディアナと懇意な関係にある。
専攻科目の馬術の授業で実習を一緒にしたこともあり親しい間柄だった。
本来なら身分が邪魔をするのだが、ディアナの願いもあって普通の先輩後輩の関係となっている。
「あの男も最低だ」
「あんなにも素晴らしい婚約者を捨てるなんて」
「女性を見る目がないんじゃないか」
騎士科の生徒は下級貴族の三男が多く環境に恵まれない生徒が多い。
王族のお膝元の王立学園で功績を残せば騎士として身を立てられるのだが、騎士の道は険しく伯爵以上の家に仕えるのはまず先に身分が優先される。
生まれ持って優遇される者。
どんなに才能があって、努力をしても正当にみられず。
例え雇われてもよい待遇とは限らないのだが、彼らの身近に格別の待遇で護衛騎士と出迎えられている騎士がいる。
それがルーカスだった。
「何処の世界に一介の騎士に過ぎない男に母親の治療費を肩代わりするお嬢様がいる」
「しかも貧しい平民出身の騎士だ…」
貧しい領地で生まれたルーカスは早くに父を亡くし病気の母は重い病で苦しんでいたが、治療費を支払うこともできなかったルーカスに代わりディアナが治療費を支払ったのだ。
「ディアナさんは立派な方だ」
「俺も将来はディアナさんのような心ある主に仕えたい」
彼らにとってディアナは可愛い後輩であり、騎士にとって理想的な主人だった。
だからこそ余計にディアナを裏切ったオルフェが許せない。
「今度の授業で、二年生の指導があるんだが」
「腐った性根を叩き直してやろか?」
男として騎士としてオルフェを鍛えなおしてやろうと心に誓うのだった。
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