地獄の沙汰も慈愛次第!婚約者は姉を溺愛したので私は真実の愛を貫きます!

ユウ

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第1章白銀の錬金術師の奮闘記

34崩れる前兆





詐欺師に騙された損額は決して軽くない。
被害届を出せばこちらも被害者となるが、顧客を失うのは目に見えていた。


商売は信用が第一。
商人貴族ならば誰もが知っているので、買い付けをする時にはその土地に詳しい者。
鑑定資格のある者を同行させるのだが、今回は鑑定士も、その土地の職人も同行させていなかった。

そもそも芸術に関する目利きを持つのはディアナだけだった。
ディアナは幼少期にドワーフの工房にて芸術の鑑定スキルを学ばされ、本物と偽物の区別を数年間学んできた。


陶器の良し悪しは素人が簡単に見分けられるわけがない。
宝石に関しても同様だったが、偽物と本物の見分け等簡単だと高を括った結果だった。


これまで商人からの直接的な取引はディアナが行い、最終チェックはジョナサンがしていたのだ。


「ジョナサン!どうしたらいいの!」

「ですから、被害届を」

「そんなことをすれば笑いものじゃない。そうよ…どうせ本物なんて分からないわ」

「もし偽者だと知られたら奥様は詐欺師です。ファティマ様の容疑はまだ消えておりません。貴族を嫌う新聞記者の餌食になります」

「ジョナサン!」


「ディアナお嬢様を邪魔に思っていたという噂は信憑性が高いのも事実です」

「私はどの子供たちも平等に愛していたわ。あの子は物分かりがいいからわかっているはずよ…なのに駄々をこねて」


(駄々をこねたのはファティマ様でしょうに)


幼少期からわがままが多かったファティマの所為で我慢を強いられたディアナは自然とわがままを言えなくなった。


子供が親にわがままを言うのはおかしいことではないが、抑圧された環境でディアナは子供ながら察していた。


同時に母親としての愛情を求める対象は侍女のルクティアに変わったのだった。


常に味方になり時に優しく、時に厳しく無償の愛を注いでくれたルクティアに母を望んだ。


なのに今更家族の情にしがみつくのはみっともないとさえ思ったが、感情的にならず執事として職務を全うするだけだった。




だが、事業以外でもシャンデラ家では問題が生じた。



使用人の質に関する問題だった。
これまで当たり前のように用意されたお茶の味が落ちていた。


「何なのこのお茶!私はいつものお茶にしてって言ったのよ!」

「申し訳ありません」

「お菓子だって何よこれ!まずいじゃない」


お茶の時間、ファティマが声を荒げた。
これまで飲んできた茶葉と明らかに質が異なっている。

茶葉は同じだが味が違うのだ。


お菓子に関してもバターとチーズを贅沢に使った菓子ではあるが味が悪かった。



「お茶とお菓子は…ルクティアが用意していまして」

「お茶なんて誰が入れても同じでしょ?そんな事も出来ないなんて役立たずね!」


イライラするファティマは容赦のない言葉で侍女を責め、ティーカップをひっくり返し、お茶が侍女の袖にかかった。

「おい、ファティマ!」

「我が家にふさわしくないわ」


解雇を意味していた。
侍女は泣きながらその場を出ていき、他の侍女達も次は自分かと怯えながら業務に戻っていった。


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