地獄の沙汰も慈愛次第!婚約者は姉を溺愛したので私は真実の愛を貫きます!

ユウ

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第1章白銀の錬金術師の奮闘記

36スラリンカ商会




王都三大商会の一つ。
スラリンカ商会は工芸品で成功した服飾店でもあった。
特に髪飾り等は国一番と言われており、上流階級だけでなく平民も買い求めに来る。


スラリンカ商会は元は他民族出身であることから一時はよそ者扱いを受け、王家御用達には相応しくないと酷評を受けたのだ。


新しく仕立て屋を始めたのだが手違いが起きた。
伯爵家の要望のデザインの服と、請け負ったデザインに相違があった。


商会側の責任ではなく発注した伯爵家の手違いだったが、貴族社会では貴族が黒と言えば平民は白でも黒というのが鉄則だった。


「これはどういうことなの!」


「申し訳ありません!」


「謝って済む問題ではないわ!こんな服で娘に恥をかかせる気!」



すぐに仕立て直したとしても最低でも三日はかかる。
明日のパーティーに必要なので手直しは無理だ。


デザイナーも、商人も怯えていた。
貴族の機嫌を損なえばこの町で商人として生きていくのは無理だった。


ただでさえ最近は他の商会から嫌がらせを受けているので、もう後がなかった。


「わぁ!このワンピース素敵」


「何をしているのディアナ…これは」

「ハイネ様がお好きな柄ね。当日にご一緒に並んだらペアルックになるんじゃないかしら。そしたら周りの令嬢は嫉妬してしまうかも」

「…確かにハイネ様のよく着ておられる柄と似ているな。いいかもしれん」

「貴方!」


伯爵夫人が夫を咎めようとするも、ワンピースを広げると仕上がりは見事だった。


「それにこのワンピースにハイネ様が送られた髪飾りをしたら完璧だと思うの。お姉様の美しい御髪にピッタリよ」

「まぁ…そうね」


最初こそ嫌がっていた伯爵令嬢も機嫌を良くした。

「それに、ご一緒にパーティーは三日でしょ?初日にこれを着て、二日目、三日目にお色を変えて着まわすなんてまるでファッションショーだわ」


「フンっ。いいわ…間に合わせられるわね?」


「はい!必ず!」


正直、三日でドレスを仕立て上げるなんて無茶ぶりもいいところであるが、できないわけではない。
むしろオーダーメイドのドレスに首飾り、髪飾り等の装飾品の依頼を受けられたのだから。


なんとしても成功させてみせると誓ったのだ。



(あの方は我らの救世主だ!)


最悪のタイミングで助け舟を出し窮地を救ってくれた令嬢に心の中で感謝をした。
あらかた打ち合わせを終えたのちにスラリンカ商会の会長カルセンはふと疑問を抱く。

「失礼ですがご息女がお二人と聞いていますが。仕立てるのはお一人分で?」

「ええ、姉のファティマだけでいいわ。あの子は必要ないわ」

「さようでしたか」


打ち合わせ中に伯爵夫人はこれでもかというほど長女の装飾品を選び、一式購入をするのに対して侍女に関してはリボン一つ選ぼうとしない。


遠回しに勧めても…

「あの子には似合わないし。必要ありません」

「はぁ…」


違和感は消えず残り続ける中、三日間のパーティーでの衣装は社交界でも人気になり、スラリンカ商会の評価はうなぎのぼりだった。



しかしその評価は伯爵令嬢が美しく着こなしたからだとか。
失態を犯した商会に挽回の機会を与えたと自慢するファティマにカルセンは心の奥が冷たくなるのを感じた。



挽回の機会をくれたのはディアナで庇ってくれたのもディアナだった。
それ以降スラリンカ商会はシャンデラ伯爵家ではなく、ディアナに忠誠を誓うようになったのだった。




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