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第1章白銀の錬金術師の奮闘記
43王家の婚約と真実の愛
母の意図を全く理解していないオルフェは尋ねた。
本当は痛みで今すぐ気を失いそうだったが、どうしても知りたかった。
「僕はディアナの婚約者に望まれたはずです」
「何だ?お前はまさか、ディアナ嬢の両親に頭を下げられたと?何様だ?本来ならお前の婚約者は男爵か、良くて子爵令嬢の三女ぐらいだ」
「は?」
「ディアナ嬢程の才女を嫁にもらうには相当な支度金が必要になる。だから私は彼女が嫁いだ暁には女主人の座を任せ尚且つ生前贈与をするつもりだった」
「なっ!それは…」
「そうだ。ディアナ嬢はたんなる嫁ではない。我が家の養子に迎え、後にルーズベルトの遺産と私の遺産のすべてを贈与する予定だ」
(実子を差し置いてだと!)
ウィステリア王国の法律では血縁者にしか遺産相続の権利はない。
だが戸籍に養子縁組をすれば遺産相続が可能であり、特別な手続きをした場合、母親の遺産が土地や宝石などならば贈与可能だった。
その場合、立会人が必要になるが、余程の問題を起こさない限り可能だった。
「馬鹿なディアナにそんな価値は…ぐぁぁあ!」
「口を慎め!ディアナ嬢はハイネ殿下の妃、しかも唯一の妃に望まれた令嬢だ!」
オルフェの胸に鋭く突き刺さった。
信じることなんてできなかったし、信じたくなかった。
「なのにシャンデラ伯爵夫人が強引に姉の方を婚約者に押したのだ…王家は最初からディアナ嬢だけを望んでいた。だから格別の配慮をし、王宮にも招待をされたというのに」
「うっ…嘘だ」
「信じるか信じないかは勝手だ。だが、王家は今回のことを非常にお怒りだ」
「あっ…ああ」
「私も死んで詫びても償えぬ。旦那様になんと言えばいいのか…ああ」
頭を抱えながら嘆き悲しむ母の声などオルフェの耳に届いていなかった。
(じゃあ僕は…自ら黄金を手放したのか?)
王家から望まれる令嬢を婚約者にすれば今後も特権を得られる。
浅ましいことしか頭にないオルフェは、内心沸き立つ心を抑えられなかった。
(ディアナがいれば…僕は!)
学園での評価も、社交界での噂も挽回できる。
むしろ、自分を馬鹿にした連中を叩き潰してひれ伏せることができると思ったのだが…
「待ってください!ディアナを…あれを説き伏せます」
笑みを浮かべ、見上げるが。
「この外道が」
「え…」
胸倉を掴まれ床に叩きつけられる。
「ディアナ嬢と呼ばぬか!あれだと?説き伏せる?何を言っているんだ!」
「あばばば!」
「紳士の欠片もない発言、礼儀がない…婚約破棄をしておきながら己の都合で取り下げるとは!」
もはや息子に向ける表情ではない。
外道に成り下がった最低な男を見る目で、愛情の一ミリも抱けなかった。
「既に王家は新たな縁談を用意している。侯爵以上の家だ…隣国の皇族も視野に入れている。ディアナ嬢が望むなら平民であっても可能だろう」
「は?」
「分かるか?ハイネ殿下が両陛下に頭を下げて動かれたのだ。あの方は真実の愛を示された」
「真実の愛…」
「愛する女性への思いだ。真実の愛とは愛する者の為にすべてをかけることだ」
若い世代で流行している真実の愛は誰かが拒もうとも自分達の愛だけを選んだものだ。
「相手の幸福を願い行動する。これこそ真実の愛であろう?」
皮肉に近い言葉に最後の力が尽きたオルフェは意識を手放した。
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