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第1章白銀の錬金術師の奮闘記
44試着の苦しみ
「やっぱり大人可愛いよね!」
日が傾く時間、散らばるデザイン画。
囲むようなデザイナーとお針子に、上機嫌のマリーとユーリとは対照的な虚ろな目をするディアナ。
「お嬢様、そのお顔はダメです」
「もう三時間だよ?疲れた」
パル・ロワイヤルに行くための衣装を決めるべく、マリーとユーリに美容サロンに放り込まれたのだった。
タイミングを合わせたかのようにスラリンカ商会のデザイナーとお針子が訪れ衣装の打ち合わせが行われたのだが、三時間程既製品のドレスを着せられていた。
「くっ…着替えないで鏡で合わせるだけでいいじゃない」
「ちゃんとお顔と合わせなくては」
「だったら着替えなくてもデザイン画と顔を合わればいいんじゃない」
ディアナは何度も試着するのが面倒だから提案をした。
「等身大の透明な紙にデザインした絵を張って私が鏡の前に紙を持っていけばいいんじゃ…」
本人からすればたいしたことではないのだがこの時代ではかなり斬新なアイデアだった。
「ディアナ!」
「はっ…はい!」
「なんて素晴らしいアイデアなの!着替えなくてもいいなんて」
「それなら試着の手間が省けるし、時間がない時にもいけるわ!何てことなの」
マリーとユーリの目が恐ろしかった。
まるで燃えるような目でディアナを見る目は獲物を見つけたかのようだ。
「ああ、なんてことでしょう!そんな素晴らしいアイデアが思い浮かぶなんて…さっそく商会に戻って練り直さなくては!」
「これは革命になるわ!」
拳を突き上げるマリーはカバンから手帳を取り出しメモを始めた。
後にこれがきっかけでマリーはウィステリア王国の服飾業界に革命を起こすことになるのだが、この時ディアナはそんなことに気づかずに目下の悩みと奮闘していた。
(できるだけゆるくてコルセットしないのがいいな)
体の締め付けが限界だったのか、見た目より機能重視のドレスの物色を始めていたのだった。
そしてサロンに向かう当日。
寮の前に荷物が届いた。
差出人はなかったがカードには小人マークがついていた。
他にも二つ程の荷物が届いていたのだが先に身に覚えのある方から開けたのだが…
「これは…」
「ノームじゃな」
ディアナは魔力が低いため精霊を使役できないが小人とは契約している。
従魔契約のようなものではなく、また奴隷に近い契約でもなく、対等なものだった。
「最近姿を見なくて…」
「ノームの国では繁忙期だからな。まぁタイミングも悪かったのだろうが…何処かで噂を耳にしたのではないか」
「人外族の皆さんは何処で報連相をしているのですか」
「さぁな?」
茶化すようで答えてくれないジョルノにがっくりとしながら箱を開ける。
「何かしら?お菓子かな?それとも…」
「お嬢様ったら…え!」
ディアナに苦笑しながらルクティアも一緒に箱を開けると、とんでもないものが出てきた。
「ガラスの靴だ」
「ああ、オリハルコンを使っておるな」
神の秘宝とされるオリハルコン。
金の次に高価とされるが、国によっては金よりもずっと価値がある。
冒険者ギルドからすればオリハルコンの小さな欠片を見つけるのに生涯をかけるとも言われるのだ。
「何でそんなものが…」
「最近鉱山の仕事にもかかわっていると聞く」
だからって使うか?
ありえないだろう!と突っ込みを入れるがルクティアがうきうきしながら箱から取り出している。
「まぁ!サイズもピッタリですわ」
「ティア…」
勝手にディアナの足に履かせている。
既にこの靴を履いていくのは決定的になっているのだが、他の贈り物に視線が行った。
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