地獄の沙汰も慈愛次第!婚約者は姉を溺愛したので私は真実の愛を貫きます!

ユウ

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第1章白銀の錬金術師の奮闘記

48美しき王女殿下




美しい薔薇園から小さな道が続く先に小さな古びた神殿が隠れように建てられている。
白い門に絡まるツタは侵入者を防ぐためのもので、簡単に入ることは許されない。


「よく来てくれた」


美しい金髪をなびかせる美女。


ウィステリア王国の第一王女ビアンカの登場だった。


「この度はお招きにあずかりまして誠にありがとうございます」

「堅苦しい挨拶はいい。さぁ入ってくれ」

ビアンカの案内でパル・ロワイヤルに入るとピアノの音色に活気あふれる声が聞こえた。


「まぁ…何て素敵な柱」


案内されながら目が行くのは見事な柱に、年代物の調度品。
ここは芸術の塊だった。

「ノワールの絵…彫刻の神ドトールに、帝国の技術、ステンドグラス…」


目を輝かせながら周りを見渡すディアナは視線を感じてようやく我に返る。


(しまったぁぁぁぁ!)


つい芸術品を前にして礼節を忘れたと後悔した。

「申し訳ありません。はしたない真似を…」

「何がだ?君は何かはしたない真似をしたのか?」


ビアンカはディアナの詫びを受け取らなかった。
怒っている様子は一切なかったビアンカはただ訪ねた。


「ここは芸術や音楽や政治を語り合う場だ。芸術への賛美を咎める者はいない」

「はっ…はい」

「それにしても本物だとすぐに分かったのは君が二人目だ。君はこの聖杯伝説は知っているか?」

「ない。ノアの民が深海の神に賜った奇跡の杯ですね」

「ほう…かなり読み込んでいるな」



聖杯伝説とはウィステリアの神話伝説の一つだった。
物語は海を司る神が人間に杯を与える物語だ。

教養を嚙った程度の貴族令嬢が理解するには困難だ。
芸術に精通し、文学を深く愛する者ぐらいにしか良さを理解できない。


現に聖杯伝説を古臭いという女性は多いので愛読する人間は片手で数える程度だった。


「神々が人間を試す瞬間には何度も読み返しました」

「本当か?君は最後の審判まで読んだか?」

「勿論です。ただ残念なのは原文が少ないことです。原文で読みたかったのですが」

「君は古語を理解しているのか…」


深く考えもしなかったディアナはビアンカが驚いていることに気づきもしなかった。


淑女教育の一環として文学にも親しみを持つことは大事だったが、古語まで深く学ぼうとする令嬢は少なかったが、ディアナは一人で机に向かう時間が多かった。


ハイネからも古語を学ぶ機会を与えられ、ルーズベルト家にも古い文献があるので時折読ませてもらっていた。



「君は語学が堪能と先生から聞いている。今日はプロヴィデンスの学者もサロンに来ている」

「まぁ…」

「プロヴィデンス語は話せるか?」

「日常会話程度ならば」

「上等だ」

手を差し出され、その意図を読み取り、ディアナはその手を取った。


「君の今日の装いは見事だ。まるで戦場に向かうかのようだ」

「戦場ですか…」

「ああ、サロンでは敵の情報を入手できる場でもある。君の腕前を見せてくれ」



その眼差しは情熱の炎のように見えた。ディアナは場違いだとか怖いという感情は消えていた。




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