地獄の沙汰も慈愛次第!婚約者は姉を溺愛したので私は真実の愛を貫きます!

ユウ

文字の大きさ
74 / 193
第1章白銀の錬金術師の奮闘記

51切れた糸




割れた食器の破片が散らばり、侍女が無言で掃除をする。
ファティマに突き飛ばされたシャンデラ伯爵夫人はそのまましゃがみこんだまま立ち上がることはできない。


(どうして…)


顔をうつむかせながら涙が零れるも、誰も手を貸すことも慰めることもしなかった。


(何故なの…)


誰もが自分の事で精一杯だからだ。
家族を心配する余裕もなく、どうしていいか分からない。


彼らは同じことを考えていた。
誰も自分に寄り添ってくれないことを疑問に感じた。


(誰も私を心配しない…どうして?)

これまで落ち込んだ時、心配事があった時は常に声をかけてくれる存在がいた。


そう、ここにいるはずのもう一人の娘が。



『お母様、どうしたの?』


何も言わなくても傍にいて寄り添い話を聞いてくれたのはディアナだけだった。

家族が悩んだ時、悲しいときは何も言わずに支え、欲しい言葉をくれた。
嬉しいときは共に喜び、悲しいときは共に悲しんでくれた家族思いの優しい娘だったはずなのに。



(どうしてディアナがいないの…どうして!)


何故ここにいて慰めてくれないのか。
心配してくれないのか。

家族なのに、娘なのに!
母親が悲しんでいるのにと嘆き続ける。


(自慢の娘のファティマがおかしくなった。ディアナがいなくなった所為で!)


愛する娘に初めて拒絶をされ、慰めてくれる娘がいない。
愛する家族の絆が壊れていくのはディアナがいないからだと八つ当たりに近い感情を抱き出す。



「ディアナを…」

「母上?」

「ディアナを連れ戻すのよ」



うわ言のように言葉を紡ぐ姿にカミエルは母を見る。

「ファティマは今傷ついているの。家族が支えないと…ディアナがファティマに謝って償えばあの子は戻るわ」

「母上…何を言っているんです」


「優しいディアナなら分かるわ。姉を傷つけてしまったんだもの!そうでしょう!」

すべてが元に戻る。
そう確信したように言う母にカミエルは首を振った。

しかし、母の言葉に賛同する父までも同じことを言い始めた。


「そうだ。ディアナがファティマに」

「父上まで何を言うのです!」

「お前こそ何だ!家族なんだから当然だろう!妹が姉を支え守るのは当然だ!」


この時ようやく家族という形の歪さを理解する。
本当はもっと前から歪な絆に気づいていたかもしれない。


けれど、見て見ぬふりをしていた。
家族の形はそれぞれ違うことも理解していたし、我が家は仲が良く理想だと。


けれどその理想が誰かの犠牲で出来てるとしたら?
ディアナという存在が生贄になり幸福な家族の形を維持しているとしたら?



「私は…なんということを」


我が身可愛さに妹を犠牲にして壊してしまった事実を改めて思い出すカミエルは頭の中で糸が切れる音がした。



もう戻らない家族の糸は結びなおすことも不可能な状態にまで来ていたのだから。




感想 228

あなたにおすすめの小説

試験でカンニング犯にされた平民ですが、帝国文官試験で首席合格しました

あきくん☆ひろくん
恋愛
魔法学園の卒業試験で、私はカンニング犯に仕立て上げられた。 断罪してきたのは、かつて好意を寄せてくれていた高位貴族の子息。そしてその隣には、私を嫌う貴族令嬢が立っていた。 平民の私には弁明の余地もない。私は試験の順位を辞退し、その場を去ることになった。 ――だが。 私にはもう一つの試験がある。 それは、帝国でも屈指の難関といわれる帝国文官試験。 そして数日後。 その結果は――首席合格だった。 冤罪で断罪された平民が、帝国の文官として身を立てる物語。

愛人と暮らすために私と結婚した伯爵子息、皇帝宮の夜会で本音を喋る魔道具を使ったらすべて暴露されました

あきくん☆ひろくん
恋愛
愛人と暮らすために私と結婚した伯爵子息。その本性を知ったのは、結婚した後でした。 私は子供を産むためだけの妻。生まれた子は愛人が育て、私は屋敷に閉じ込められる運命だという。 絶望する私が思い出したのは、大魔導士から渡された魔道具。「心に思ったことを言葉にしてしまう」もの。 そして皇帝宮の夜会で――伯爵子息は皇太子の前で、自分の本音をすべて喋ってしまいました。 この作品は、「僕に仕えるメイドは世界最強の英雄です」シリーズの外伝です。 リリアーナは、第1作目の第3部のおまけ、のお話にでてくる子爵令嬢です。

『ブスと結婚とか罰ゲーム』と言われた商人令嬢ですが、結婚式で婚約者の不正を暴いたら幼馴染の騎士様が味方でした

大棗ナツメ
恋愛
「なんで、お前みたいなブスと結婚しないといけないんだ」 そう言い放ったのは、結婚を一週間後に控えた婚約者だった。 商人の娘エフィは、持参金目当ての政略結婚を受け入れていたが、彼からは日常的に「ブス」「価値がない」と罵られていた。 そんなある日、エフィは父の商会の帳簿から男爵家の不審な金の流れを発見する。 さらに婚約者が娼婦と歩いているところを目撃し―― 「泣く暇があるなら策を考えなさい」 昔、自分が言った言葉を思い出したエフィは決意する。 結婚式の日、すべてを暴くと。 そして再会したのは、かつて「姉さん」と慕ってくれた幼馴染の騎士レオンだった。 これは、ブスと蔑まれた商人令嬢が、 結婚式で運命をひっくり返す逆転劇。

「お前は妹の身代わりにすぎなかった」と捨てられた養女——でも領民が選んだのは、血の繋がらない姉の方だった

歩人
ファンタジー
孤児のフィーネは伯爵家に引き取られた。 病弱な令嬢エーデルの「代役」として。社交も、領地管理も、使用人の采配も—— 全て「エーデル様」の名前で、完璧にこなしてきた。 十一年後。健康を取り戻したエーデルが屋敷に帰還した日、伯爵は言った。 「もう用済みだ、出ていけ」 フィーネは静かに屋敷を去った。 それから一月もしないうちに、領民たちが伯爵に詰め寄った。 「前のお嬢様を返してください」

(完)イケメン侯爵嫡男様は、妹と間違えて私に告白したらしいー婚約解消ですか?嬉しいです!

青空一夏
恋愛
私は学園でも女生徒に憧れられているアール・シュトン候爵嫡男様に告白されました。 図書館でいきなり『愛している』と言われた私ですが、妹と勘違いされたようです? 全5話。ゆるふわ。

【完結】気味が悪いと見放された令嬢ですので ~殿下、無理に愛さなくていいのでお構いなく~

Rohdea
恋愛
───私に嘘は通じない。 だから私は知っている。あなたは私のことなんて本当は愛していないのだと── 公爵家の令嬢という身分と魔力の強さによって、 幼い頃に自国の王子、イライアスの婚約者に選ばれていた公爵令嬢リリーベル。 二人は幼馴染としても仲良く過ごしていた。 しかし、リリーベル十歳の誕生日。 嘘を見抜ける力 “真実の瞳”という能力に目覚めたことで、 リリーベルを取り巻く環境は一変する。 リリーベルの目覚めた真実の瞳の能力は、巷で言われている能力と違っていて少々特殊だった。 そのことから更に気味が悪いと親に見放されたリリーベル。 唯一、味方となってくれたのは八歳年上の兄、トラヴィスだけだった。 そして、婚約者のイライアスとも段々と距離が出来てしまう…… そんな“真実の瞳”で視てしまった彼の心の中は─── ※『可愛い妹に全てを奪われましたので ~あなた達への未練は捨てたのでお構いなく~』 こちらの作品のヒーローの妹が主人公となる話です。 めちゃくちゃチートを発揮しています……

危害を加えられたので予定よりも早く婚約を白紙撤回できました

しゃーりん
恋愛
階段から突き落とされて、目が覚めるといろんな記憶を失っていたアンジェリーナ。 自分のことも誰のことも覚えていない。 王太子殿下の婚約者であったことも忘れ、結婚式は来年なのに殿下には恋人がいるという。 聞くところによると、婚約は白紙撤回が前提だった。 なぜアンジェリーナが危害を加えられたのかはわからないが、それにより予定よりも早く婚約を白紙撤回することになったというお話です。

姉妹同然に育った幼馴染に裏切られて悪役令嬢にされた私、地方領主の嫁からやり直します

しろいるか
恋愛
第一王子との婚約が決まり、王室で暮らしていた私。でも、幼馴染で姉妹同然に育ってきた使用人に裏切られ、私は王子から婚約解消を叩きつけられ、王室からも追い出されてしまった。 失意のうち、私は遠い縁戚の地方領主に引き取られる。 そこで知らされたのは、裏切った使用人についての真実だった……! 悪役令嬢にされた少女が挑む、やり直しストーリー。