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第1章白銀の錬金術師の奮闘記
54嫌われ役員の見解①
重苦しい空気の中、コーヒーを飲みながらアリエスはため息をつく。
(不憫ねぇ?)
ユーリは相当ディアナを気に入っているのが分かる。
別にアリエスはディアナを嫌っているわけではないし、女性だから嫌いというわけでもない。
ただ気に入らないと思っている。
アリエスは貴族も平民も身の丈に合わないものを与えられるべきではない。
(分相応の地位を得た先は破滅しかないだろ)
態度と口が悪いが、己の役目には責任感を持っている。
貴族としての誇りと与えられた責任を最後まで果たそうとする思いからだ。
以前からシャンデラ伯爵家の事は耳にしていた。
身の程知らずの代名詞と言わんばかりのあの家族に良い感情は抱いていなかった。
特に嫌悪していたのが、ファティマだった。
伯爵令嬢でしかない何の取りえも才能も実績もない令嬢が第二王子殿下の妃になるなんてありえない。
王家の婚姻はそれ程甘くないのだ。
例え強い魔力があり、美貌があっても意味をなさない。
外交を円滑に進めるだけの話術。
敵国を黙らせて有利に運ぶだけの機転と、不正を暴く為に最後まで戦うことができる度胸。
そのすべてが要求される。
同時に身の振り方も理解しなくてはならない。
(シャンデラ伯爵令嬢はすべて不合格だろ)
昨年までハイネは生徒会の役員だったが今年になって自ら辞任した。
その理由はファティマとの婚約解消騒動によるものと、当初会計をしていた先輩が病気の為に学園を退学したからだ。
社交界で問題を起こす人間に生徒会役員は相応しくない。
ハイネは責任を感じて辞任した。
それほどに生徒会役員は重責だった。
特に副会長の次に権力を持つのは会計なので、その役目を担うのは相当優秀でなくてはならないのだから。
だからこそ当初は納得できなかった。
ディアナがその役目を担うことになったのを。
見た目はパッとしない。
堂々とした姿勢も見せられず、貴族か平民かどうかも分からない危うさを感じたアリエスは早々に追い出そうと決めた。
やり方は乱暴だと自覚している。
だが、得体のしれない生徒を置くわけにはいかないし、特別科と言っても制服を勝手に借りて特別科に潜入する生徒は過去にいたのだから。
だからあんな強引な真似をしたのだが、後から経緯を聞かされ早とちりをしてしまったと思ったが、認める気はなかった。
婚約者を姉に寝取られ公の場で婚約破棄を突き付けられた令嬢。
その体たらくに呆れていたからだ。
たとえ被害者でも、家族に味方がいなくともできることはあったはずだ。
受け身で誰かが助けてくれるなんて思っていたら貴族社会で生きていくことはできない。
貴族社会の理不尽さを嫌というほど理解しているアリエスは何もできなかったディアナに同情する気はなかった。
だが、その考えはディアナが会長になって数日で覆された。
ディアナ・シャンデラという令嬢は色々ぶっ飛んでいたからだ。
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