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第1章白銀の錬金術師の奮闘記
55嫌われ役員の見解②
ディアナの会計就任の初日にアリエスは一人では処理できないことを理解して否応なく仕事を義務付けた。
泣いて泣きついてくるなら即資格はない。
かといってできないのにできると虚勢を張れば同様だった。
能力が伴っていても一日でできるわけがない。
最後まで責任を持ってやるなら多少は手伝ってやろうと思ったのだが、ディアナはその斜め上を言った。
速読で暗算をして計算の不備を指摘し、訂正を行ったうえで予算の組み込みがあまりにも酷いことを進言した。
しかも五年分の会計報告書にして薄いと言い、一人で五年分の会計報告の処理を行ったのだからアリエスはひっくり返りそうになった。
一人でできる量ではないし、王宮会計士が五人いても今日中に無理な仕事を十分で終えた。
その後は改ざんされた会計報告書を一時間で見つけ出す神業をしたのだ。
規格外にも程がある。
その後も休まずに数字と向き合い、尚且つ己の未熟さを突きつけられた気分だった。
アリエスはこういう人間を理解していた。
(こいつオタクか!)
数字を見て嬉しそうにする横顔は身近にいる好きなことに没頭して周りが見えなくなる生粋のオタクだと感じた。
そして同時に気づいた。
ディアナは家族に対する関心は薄い。
婚約者に婚約解消をされても傷ついた心を隠すために仕事に没頭しているのではなく本当に好きな事に没頭しているのだと。
優しい人間は誤解するがアリエスは気づいていた。
(ディアナ嬢は完全に関心がないな)
恋愛に興味なし。
婚約者にも興味なし。
好きな事をしていられるなら噂もどうでもいい。
自分の世界の中で生きていける人間だと察した。
なのに周りは――。
「ぐずん…私はあの子が気の毒だわ」
「泣くことないだろ」
「だって!貴族のお姫様が家族にあんな仕打ちを受けて!なのに一度も責めないのよ」
ユーリが嘆き続ける中、シリルとハイネが慰めるのだが、その傍らでアリエスは冷めた目で見ていた。
(いや、興味ないだけだろ)
アリエスはかなり客観的に見ていた。
実際ディアナは家族に情の一滴すら残っていない。
血が繋がっていようと前世を思い出した時点で他人だった。
むしろ、血の繋がらないルクティアやルーカスに対しての方が身内としての情が強い。
「アンタ冷たいのよ!もうこうなったら私があの子のママになるわ!」
「なれねぇよ。性別不明だじゃ」
「お黙り!ディアナちゃんを養女に迎えるわ。特別養子縁組をすれば親の許可は要らないのよ!」
強硬手段に出てディアナを養子に迎えようとするユーリに周りは困り果てる。
「待てユーリ。それは…」
「ハイネ様!私は婚約者の屑男にも文句を言ってやりたいんです」
「無礼だぞ!」
ユーリを止めようとするシリルだったが、完全に頭に血が上っているユーリを止めることは難しかった…
「お止めなさいなユーリ」
そこに現れたのはロクサーヌだった。
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