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第1章白銀の錬金術師の奮闘記
59涙と別れの言葉
慰謝料の話は片付いたが、ディアナが一番気にするのは今後の事だ。
「今後はどうなりましょうか」
オルフェとは婚約が完全に解消ということになれば次なる問題が発生する。
「姉との…」
「こうなった以上、愚息は婿に出す」
「え?」
予想外の言葉に驚く。
オルフェはルーズベルト家の長男で、姉はいるが既に嫁いでいる。
跡継ぎを作るにしても、難しい状況だ。
「婚約者を裏切ってまで欲したのだ」
「向こうのご両親も文句は言うまい」
(絶対に文句を言うわ!)
あの両親が許すはずがない。
第一婿養子になる条件は、男子に恵まれない家がとる手段であって、跡取りがいる家で更に婿養子を取るなんてありえないのだから。
「君のご両親は真実の愛で結ばれたのだから、真実の愛を貫いた愚息を拒否しないだろう」
「ええ、私達は真実の愛で結ばれた夫婦でないので理解不能だが?」
無言の怒りを察した。
二人は真実の愛を都合よく利用する者を忌み嫌っていた。
二人の結婚は愛のない政略結婚であったが二人の間には強い絆があった。
恋心がなくとも互いを思いやり支え合う形を愛と言わないならなんというのかとディアナは思った。
「私はお二人は真実の愛で結ばれたと思っております」
「え?」
「お二人は互いに深い愛で結ばれ、強い信頼がございます。お二人以上に互いを慈しまれている夫婦がいましょうか」
ずっと憧れていた。
強く凛としてかっこいいルーズベルト伯爵夫人。
強く美しい妻を支え内情の功を持って支えるルーズベルト伯爵。
「私はお二人の娘になりとうございました」
「ディアナ嬢…」
「本当に!あの馬鹿は!」
気丈な戦姫と呼ばれたルーズベルト伯爵夫人は涙を流した。
気が強いと言われる一方で慈悲深い女性であることを理解していたのだから。
「もうこんな資格はないが最後の願いを聞いてくれないか」
「はい」
「どうか、自由に…君の思うとおりに生きてくれ」
震える手でディアナの手を強く握る。
「君は箱庭に生きる令嬢ではない。鳥籠ではなく広い空を羽ばたく鳥だ」
「はい…はい!」
「例え、縁が切れても私は…私達は味方だ。私の実家は東北の辺境伯爵家だ」
「国外に出るときは力になれるだろう」
なんて温かい人達だろう。
血の繋がりは一滴もないのに、縁が切れても守ると言ってくれる優しい二人に。
(この方達の娘になりたかった…)
こんな形で二人を悲しませることになったことを心から悔いた。
ならばせめて…
(お二人がこれ以上苦しまないように働きかけよう)
王家に直接抗議することは難しい。
ならば別の方法で二人の名誉を守る方法を考えようと思ったのだった。
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