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第1章白銀の錬金術師の奮闘記
64不誠実な愛
「ディアナは僕のものなんです」
最後の言葉がハイネの理性を壊すに十分だった。
「ユーリ、手を出すな」
「ですが…」
「こいつは俺が」
ユーリがここまで怒りを抱いたのはオルフェの侮辱の数々ではない。
ディアナを物扱いしたからだった。
(この男はどこまでも彼女を!)
搾取され続け、傷つき、苦しんだディアナがようやく明るい場所で居場所を見つけ歩き出した。
必死に努力してようやく認められるようになったのに邪魔をしようとするオルフェを野放しにはできない。
(ディアナをこれ以上傷つけるなら容赦しない!)
ハイネが一歩前に進もうとした時だった。
「王家に対する侮辱は万死に値する」
凍り付くような声と一緒にオルフェの体が動かなくなる。
「なっ!」
「貴様、ハイネ様を侮辱するとは」
足元が凍り、オルフェは体から体温が奪われる。
足元から膝まで凍り付き寒さで震える中、シリルは更に氷の魔術を使いオルフェの場所だけ凍らせる。
まるで氷の檻のように。
「寒い…何だ」
「動くな。動けば凍死だ。今すぐハイネ様に無礼を詫びて土下座をしろ」
「シリル。君は本当に極端だね」
「でも、今回は褒めて差し上げましてよ」
背後で困った表情をするアルフレッドと表情を変えないロクサーヌには止める気はなかった。
「とりあえず僕も参戦しましょうか?」
「君はいいよ。ミカエル」
「分かりました」
ミカエルも剣を取り出し万一の時に加勢をする気満々だった。
「ぐっ…ディアナ!」
声を張り上げるオルフェはディアナの名を呼ぶも、
「ルーズベルト様、なぜこんな真似を」
「ディアナ。こっちへおいで…」
「名前で呼ばないでください」
明らかな拒絶だった。
オルフェとの関係は既に終わっている。
「何を…」
「貴方との関係は終わりました」
ディアナは一定の距離を保ちながらはっきりと拒絶を示す。
「ハイネ様に無礼な物言いはお止めください」
「君は僕よりも彼を取るのか!そんなに王族がいいのか」
「何を言っているんですか?貴方には姉がいるではありませんか。私を裏切ってまで望んだ姉が」
オルフェの言っていることが分からない。
ハイネを目の敵にするオルフェに不快感を抱く。
「裏切ったなんて…僕はそんなつもりはなかった」
「もう聞き飽きました。すぐにこの場から出て行ってください」
土足でこの場に入ってきて、ハイネを侮辱し、不誠実な真似をするオルフェに気持ちが悪かった。
「君が愛しているのは僕だろ?ファティマ様との仲を嫉妬したからって」
(嫌だ…気持ち悪い)
胸の奥に不快感が走る。
この感情はディアナの心の奥底の感情だった。
『やめて…気持ち悪い!』
もう一人のディアナが悲鳴を上げている。
かつてオルフェを思っていたディアナは今のオルフェを見て心の底から絶望していた。
姉を愛したその口で平気で嘘をつくオルフェが嫌で仕方なかった。
「やめて…」
側にいるシリルの腕を掴む手が震えていた。
(何処まで苦しめるのだ!)
シリルはディアナがまた苦しめられていると思い、魔力を強めた。
「嫌がる女性に無理やり迫るとは言語道断だ」
「ディアナ!君は僕を愛しているんだ!」
「愛していません!汚らわしい!」
「なっ…」
オルフェの声を聞くだけで吐き気がする。
これ以上声も聞きたくない、顔も見たくなかった。
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