地獄の沙汰も慈愛次第!婚約者は姉を溺愛したので私は真実の愛を貫きます!

ユウ

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第1章白銀の錬金術師の奮闘記

66怒りの凍気






倒れ込んだ、ディアナの目からは涙が流れていた。
雑音のように聞こえる周りの生徒の声は心配する声以外にも興味本位の心無い言葉が入り混じる。


その雑音が心を抉る刃になることをシリルはよく知っていた。


「急いで医務室に運ぶ」

「待て!ディアナを…」


食い下がるオルフェだったが、氷の刃が頬をかすめた。

「次は外さない」

「なっ…僕を!」

「貴様はどれだけ彼女を殺せば気が済む」

「は?」

オルフェは意味が分からないという顔をしている。
何も理解せず分かろうともしない事にシリルは言っても無駄だと分かっていたが、言わずにいられなかった。


「幼少期、彼女は明るい少女だった…だがその明るさを貴様は殺した一度目だ」

「何を…」

「そして二度目だ。貴様の婚約者としてふさわしくなろうとした彼女を殺した。そして今だ!」


シリルの中でディアナへの違和感があった。
学園内で目立つ存在ではないが、学園内の素行は悪くないと聞いていた。


学業面も優秀で、教師からの評価も悪くない。
絶世の美女ではない、天才的な才能を発揮するでもなく強い魔力があるわけではない。


だが、勉学に真面目で、王立学園の生徒として恥じない振る舞いをしていた。

だが、毒殺未遂事件以来ディアナは変わった。
淑女として恥ずかしくない振る舞いをしていたのに、なんというか貴族令嬢らしくない振る舞いが増えだした。


校則違反をするわけではない。
だが、以前のような控えめな令嬢とは思えない行動を始めた。


一歩下がって婚約者を立てる女性ではなくなっていた。


まるで別の人格が生まれたかのような。
親しいものは困惑したかもしれないが、それでも根本的な資質は変わらないと受け入れていた。


「ようやく落ち着いたと思ったのに」

「何を言って…」

「不安定な彼女はどれだけ苦しんだか貴様に分かるか!」


シリルはディアナの葛藤を目の当たりにしていた。
精神が不安定な中、一人で葛藤し家族からの援助を受けられない状態でどう生きていくか。


「使用人を養う為に貴族令嬢がどう働くか悩んでいた…」

「馬鹿な…そんな愚かな」


ディアナの葛藤を馬鹿だと告げた瞬間、地面から氷の砦ができる。

「ぎゃああ!」


最後に残った理性をオルフェが木っ端微塵にした。
ディアナの葛藤、苦悩をすべて馬鹿と片付けた時点でシリルの怒りは頂点に達していたのだから。


「貴様のような屑は要らん」

魔力が増大し、この場がすべて氷の世界になる。


「まずい!シリルの魔力が暴走している」

「ハイネ様!無理です…炎では解けません」

「シリルは王家を凌ぐほどの強大な魔力の持ち主だ。ハイネと私でも無理だ」


アルフレッドが何とかしてシリルの魔力を抑え込もうとするも意味をなさない。

「お止めなさいシリル様!貴方…死んでしまいますわよ!」

ロクサーヌが必死で呼びかけるも聞こえなかった。
既に理性を失っているシリルを止めることは誰にもできない。


「もう。この際この男を凍死させてしまえば気が済むんじゃない?」

「マリー…なんて腹黒いことを」


恐ろしいことを笑顔で言うマリーに冷や汗を流すユーリだったが、この場を鎮める為なら致し方ないと思う面々はうなずいている。


特にこの男は…

「お嬢様の為です。私が介錯いたします」

「止めろ!この僕に…」


一番乗り気なのはルーカスだった。




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