地獄の沙汰も慈愛次第!婚約者は姉を溺愛したので私は真実の愛を貫きます!

ユウ

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第1章白銀の錬金術師の奮闘記

74ディアナの部屋





ルクティアに案内される形でディアナとシリルは寝かされる。
制服のままでは苦しいだろうと二人の服を着替えさせる慣れた手つきは熟練の侍女そのものに見えてしまう。


「すごいわ。なんて無駄のないの」

「まだ若いのに…まるで王宮勤めの侍女ね」


「恐れ入ります」



ディアナの手を優しく包み込みながらシリルの手を離されると痛々しい手の傷が見えて胸が痛む。

「お嬢様…こんなに手を」

「ルクティア。辛いなら私が」

「いいえ、お嬢様のお世話は私が」


ここで逃げるようなら侍女失格と己の心を叱り飛ばす。
内出血ができるほど手を強く握り、唇は切れており噛みしめたのが分かる。



「この方はきっと、お嬢様の大切な方なのですね」

「え?」

「シリル様が?」



ルクティアは悲しみと同様に少しだけ嬉しいと思った。
自分の身を犠牲にしてまで守りたい誰かに出会えたことは幸福だと。


「お嬢様はこのような無理をされる方ではありません。少なくともこれまでは」

「ああ…そうだな」

「痛々しい傷ですが、お嬢様の心は守られたのでしょう」



ずっと見て来たから分かっている。
弱そうに見えても芯が強く、大切な人を守る為ならばどんな苦難にも立ち向かえる強さを持っている。




「お二方の事もお嬢様から伺っております」

「え?私達のことも?」

「どんな話か気になるわね」



特にユーリはお世辞にも良い友人とは思っていない。
性別がはっきりしない女装貴族なんて呼ばれているので少し不安に思う。


「ええ、お優しく美しい。素敵なご友人だと」

「まぁ、当然よね」

「素直に喜びなさいよ」



素敵な友人だと言われ喜ぶが、当然だとドヤ顔をするマリーに呆れながらもユーリも笑みを浮かべた。


「それにしても素敵なお部屋ね。アンティークの品が多いわ」

「本当に見事な骨董品に難しい本が沢山ね」

普段から専門書をよく読んでいるのを目にしたが、部屋に錬金術だけでなく医学の専門書がびっしりだった。


「これは?随分古いわね」

「そちらはお嬢様が幼い頃、こっそり教会で学ばれたジャンルです」

「こっそり…ごめんなさい」


ユーリはルクティアの言う意味を理解した。
通常、貴族令嬢が学びに精を出すことははしたないという前時代的考えの貴族は少なくない。



特に家族の間で冷遇されていたのならなおのことだ。


「おかしいわよ。淑女は聡明であるべきだと言いながら」

「そうよね。矛盾しているわね」


聡明で美しくあれと淑女教育で教えられるのに必要以上の教養は生意気だと言うのだから。


「幼少期にお嬢様は専門書が読めるほどの知識を得ました。錬金術の基礎も六歳で理解されたのです」


「は?」

「六歳…」

「ドワーフの皆さんが傍にいたのも影響しております」


英才教育は早い方が良いと言われている。
特に三歳までが勝負とされており、ディアナも三歳の頃に教育を受けた。


「その…当時はシャンデラ家は色々忙しかったので」

「放置されたんでしょ?」

「何処までも最低な家族」


ディアナの向学心の旺盛さは幼少期の寂しさを紛らわすものではないかと二人は思った。
幸いにもファティマに集中しているおかげで錬金術を学ぶことに反対はなかった。

所詮は子供の遊びだと片付けられたのだから。


「ディアナの才能は長年の努力の賜物ね」

「美は一日にしてならずと同じよ」


二人も長年の努力を重ねて今があるので痛い程わかった。


「それにしても起きないわね。この男」

「ユーリ。シリル様に厳しくない?」

「レディーの部屋で図々しく眠れる神経が信じられないのよ」


一向に起きる気配のないシリルの頬を引っ張りながらぶつくさと文句を言う。
穏やかな表情をしているので余計に憎らしいと思ったが、この静けさもすぐに終わる。


「うっ…」

「あら起きたの?眠り姫」

「何がだ…は?」



いつもと違う天井に驚き起き上がると制服ではなく緩んだ部屋着に胸元が少し開き、傍には温もりを感じる。


そして――。


隣で眠っているディアナを見て絶叫するのは言うまでもない。





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