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第1章白銀の錬金術師の奮闘記
75ちぐはぐな二人
着衣の乱れた男女が同じベッドで寄り添い眠る。
しかも記憶がないとくれば当人は勘違いをするのは当然だった。
恋愛とは全くの無縁な生活を送るシリルからすれば晴天の霹靂だった。
「うわぁぁぁ!」
ベッドの上で驚き、シーツで足を滑らせそのまま床に落ちる。
「本当に野暮ったいわ」
「二つ名なんだった?氷の貴公子?ヘタレな貴公子じゃなくて?」
あまりのヘタレっぷりに二人の目は死んでいた。
学園では女子から氷の王子様等と呼ばれているのに、これを見れば千年の恋も冷めそうだった。
「私は何を…」
「ちょっと静かにしてよね。ディアナちゃんが起きるじゃない」
「そうよ。まだ体力戻ってないのよ。かなり無茶をしてるんだから」
「無茶…私の所為か?」
「無茶させたのはアンタよ」
ショックで声も失う。
真実であるが言い方が問題だった。
誤解を重ねるような言い回しをされれば記憶が曖昧なシリルは誤解をするだろう。
「私は…なんということを」
頭を抱えしゃがみ込むシリルはショックを受け一人ブツブツ言っている。
「ユーリ。あれどうするの」
「放っておくわ」
一人落ち込んでいるシリルを放置し、ディアナが起きないようにしようとした時だった。
「うみゃ…」
「あ、起きちゃった」
「タイミング最悪ね」
何故こうもタイミングが悪いのか。
ディアナはうっすら目を開けると部屋の隅で頭を抱えてブツブツ言うシリルを目にした。
「副会長?」
ぼーっとするディアナはまだ覚醒していない。
「お嬢様。お目覚めになられてようございました」
「お嬢様…」
ルクティアとルーカスが心の底から安堵した表情になる。
「お水を…」
「うん」
喉が嗄れていたので丁度よいと思いながら水を飲みながら目を覚ます。
そして朧気な記憶が少しずつ整理される。
「わぁぁぁぁ!」
「ちょっと何?」
「ディアナちゃんどうしたの!」
「お嬢様!」
「どうなさいました!」
今度はディアナが絶叫する。
「副会長ぉぉ!」
「ちょっと!まだ起き上がったらダメよ!」
ユーリが止めようとするよりも早く俊敏な動きでシリルのもとに行く。
「シャンデラ…私は」
「副会長!私を氷で殴ってください」
「は?」
涙目で土下座をするディアナにシリルは素っ頓狂な声を上げた。
「何を言っている」
「おもいっきり気が済むまでボコボコに殴ってください!拷問も受けます…火あぶりでも」
「待て待て!」
シリルは何故そうなるか分からなかった。
この状況から言えば悪いのは自分であるはずなのにディアナが土下座する意味が分からない。
「何故お前が謝る?」
「私は副会長の操を汚しました」
「そうか私の…はぁ?」
「何言ってんのディアナちゃん!」
「何処でそうなった!?」
ディアナの爆弾発言に一同は突っ込んだ。
傍らにいるルクティアとルーカスは遠い目をしている。
互いに誤解をしているのだから。
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