地獄の沙汰も慈愛次第!婚約者は姉を溺愛したので私は真実の愛を貫きます!

ユウ

文字の大きさ
108 / 224
第2章小さな奇跡が生んだ真実の愛

8ハイネの愛






意地の悪い笑みを浮かべるビアンカにハイネは頭を抱える。
娯楽が少ないからと言って揶揄われるのは嫌だったが口で勝てる自信がない。

「人魚姫の涙を贈ったようだな」

「問題がありましょうか」

「ないな?あれは元々ディアナ嬢に婚約の暁にプレゼントする予定だったからな」

「ぐっ…」


そんなことまで覚えているとはと思い、また頭が痛くなる。
もう十年以上前の話だ。


「お前の母君の故郷では好いた相手に真珠の装飾品を贈る風習があったな」

「はい…」


「特にイヤリングや指輪には意味がある。七色の真珠が国宝級だが、お前の思いを込めてあるだろう」

「重たい男ですよ」

「くくっ…良いではないか。価値も分からず見えだけで身に着けられるよりも」

サロンでディアナが身に着けていた装飾品に気づいたビアンカは気づかれないように何度も見ていた。


「大事に身に着けていたぞ。とても…」

「そうですか」

「まだ忘れられないのだろう」

「姉上!」


ハイネの心を見透かしたビアンカは確信していた。


(馬鹿な弟だ。ディアナ嬢が好きでたまらないくせに)


普段顔に出さないハイネがここまで表情が変わるのは久しぶりだった。
ハイネの感情を殺したのは王家であり社交界のくだらない常識だった。



「私は…ディアナが幸せなら」

「センチメンタルだな?無理やり召し上げて妃にすればいいものを」

「姉上、これ以上戯れるなら許しません」


「失言が過ぎたか」


ビアンカは戯れたつもりはない。
母親が違えど、ハイネは大事な弟であるのは変わらない。


「私はお前こそが王に相応しいと思っている。今でもお前が望めばすぐに立太子させるぞ」

「何度も申し上げたはずです。私は国に混乱を呼ぶ気はありません」


「頑なだな…」


ハイネは既に王位継承権を返上しているが、ビアンカの力で撤回させることは可能だった。
だが、国に混乱を呼びクーデターが起きることを望まないハイネは頑なだった。



ビアンカと距離を置いているのも自分は王族であるが王子としての立場がないというアピールだったからだ。



「ハイネ…お前はまだ愛しておるのだろう」

「その愛が彼女を苦しめました。私がディアナを愛したせいで」

「お前は悪くないだろう」


「今でもディアナを愛しております。ですが、望むのはディアナが幸福になること」


拳を握りながら告げられた言葉はあまりにも悲しいものだった。
愛しているから手を離さなくてはいけない。


愛しているから遠くから見守りたい。
いずれ他の男に愛され抱かれてもハイネはそれでいいと思った。


「今は傍で言葉も交わせます。笑い合うことも許される」

「それだけだ」

「十分です」



ハイネはディアナを愛している。
だが恋心とは似つかわしくない感情になりつつあった。


「私はディアナに見返りを求める気はありません」

「ハイネ…」


迷いなく言い切る言葉にビアンカは胸が抉られるようだった。


己の思いを閉じ込め相手の幸福だけを願い、傍で見守れるなら幸福と言う。


(これを愛と言わずとして何というんだ)


愛の形が様々だとしても、真実の愛以外に考えられないと思うビアンカだった。



感想 251

あなたにおすすめの小説

三度裏切られた私が、四度目で「離婚」を選ぶまで

狛犬
恋愛
三度、夫に裏切られた。 一度目は信じた。 二度目は耐えた。 三度目は――すべてを失った。 そして私は、屋上から身を投げた。 ……はずだった。 目を覚ますと、そこは過去。 すべてが壊れる前の、まだ何も起きていない時間。 ――四度目の人生。 これまでの三度、私は同じ選択を繰り返し、 同じように裏切られ、すべてを失ってきた。 だから今度は、もう決めている。 「もう、陸翔はいらない」 愛していた。 けれど、もう疲れた。 今度こそ―― 自分を守るために、家族を守るために、 私は、自分から手を放す。 これは、三度裏切られた女が、 四度目の人生で「選び直す」物語。

悪役令嬢にされたので婚約破棄を受け入れたら、なぜか全員困っています

かきんとう
恋愛
 王城の大広間は、いつも以上に華やいでいた。  磨き上げられた床は燭台の光を反射し、色とりどりのドレスが揺れるたびに、まるで花畑が動いているかのように見える。貴族たちの笑い声、楽団の優雅な旋律、そして、ひそやかな噂話が、空気を満たしていた。  その中心に、私は立っていた。  ――今日、この瞬間のために。 「エレノア・フォン・リーベルト嬢」  高らかに呼ばれた私の名に、ざわめきがぴたりと止む。

「仲睦まじい夫婦」であるはずのわたしの夫は、わたしの葬儀で本性をあらわした

ぽんた
恋愛
サヤ・ラドフォード侯爵夫人が死んだ。その葬儀で、マッケイン王国でも「仲睦まじい夫婦」であるはずの彼女の夫が、妻を冒涜した。その聞くに堪えない本音。そんな夫の横には、夫が従妹だというレディが寄り添っている。サヤ・ラドフォードの棺の前で、夫とその従妹はサヤを断罪する。サヤは、ほんとうに彼らがいうような悪女だったのか?  ※ハッピーエンド確約。ざまぁあり。ご都合主義のゆるゆる設定はご容赦願います。

(完)妹の子供を養女にしたら・・・・・・

青空一夏
恋愛
私はダーシー・オークリー女伯爵。愛する夫との間に子供はいない。なんとかできるように努力はしてきたがどうやら私の身体に原因があるようだった。 「養女を迎えようと思うわ・・・・・・」 私の言葉に夫は私の妹のアイリスのお腹の子どもがいいと言う。私達はその産まれてきた子供を養女に迎えたが・・・・・・ 異世界中世ヨーロッパ風のゆるふわ設定。ざまぁ。魔獣がいる世界。

平凡令嬢は婚約者を完璧な妹に譲ることにした

カレイ
恋愛
 「平凡なお前ではなくカレンが姉だったらどんなに良かったか」  それが両親の口癖でした。  ええ、ええ、確かに私は容姿も学力も裁縫もダンスも全て人並み程度のただの凡人です。体は弱いが何でも器用にこなす美しい妹と比べるとその差は歴然。  ただ少しばかり先に生まれただけなのに、王太子の婚約者にもなってしまうし。彼も妹の方が良かったといつも嘆いております。  ですから私決めました!  王太子の婚約者という席を妹に譲ることを。  

居場所を失った令嬢と結婚することになった男の葛藤

しゃーりん
恋愛
侯爵令嬢ロレーヌは悪女扱いされて婚約破棄された。 父親は怒り、修道院に入れようとする。 そんな彼女を助けてほしいと妻を亡くした28歳の子爵ドリューに声がかかった。 学園も退学させられた、まだ16歳の令嬢との結婚。 ロレーヌとの初夜を少し先に見送ったせいで彼女に触れたくなるドリューのお話です。

将来の嫁ぎ先は確保済みです……が?!

翠月 瑠々奈
恋愛
ある日階段から落ちて、とある物語を思い出した。 侯爵令息と男爵令嬢の秘密の恋…みたいな。 そしてここが、その話を基にした世界に酷似していることに気づく。 私は主人公の婚約者。話の流れからすれば破棄されることになる。 この歳で婚約破棄なんてされたら、名に傷が付く。 それでは次の結婚は望めない。 その前に、同じ前世の記憶がある男性との婚姻話を水面下で進めましょうか。

再会の約束の場所に彼は現れなかった

四折 柊
恋愛
 ロジェはジゼルに言った。「ジゼル。三年後にここに来てほしい。僕は君に正式に婚約を申し込みたい」と。平民のロジェは男爵令嬢であるジゼルにプロポーズするために博士号を得たいと考えていた。彼は能力を見込まれ、隣国の研究室に招待されたのだ。  そして三年後、ジゼルは約束の場所でロジェを待った。ところが彼は現れない。代わりにそこに来たのは見知らぬ美しい女性だった。彼女はジゼルに残酷な言葉を放つ。「彼は私と結婚することになりました」とーーーー。(全5話)