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第2章小さな奇跡が生んだ真実の愛
9孤独な王子
王家の中で誰よりも芸術の神に愛される者は孤独だと聞かされている。
心の空洞を埋める為に縋りつく何かが必要だからだ。
ウィステリア王国内にも並外れた才能を持つ者達のほとんどは家族に愛されなかった。
神から与えられた才能の対価。
誰もが欲するものを与えられても人が絶対に必要なものを得られない。
なんとも皮肉なのか。
ビアンカは誰よりも優しい弟を思うと胸が苦しかった。
母からも愛を受けずに、周りからも冷遇されたハイネの寂しさを癒したのは芸術だった。
そしてその芸術の先が無限の可能性を秘めた錬金術だった。
錬金術の神と呼ばれた大賢者に憧れを抱き、自身も知識と技術で人を救えるようになりたいと錬金術にのめりこむようになり、僅か五歳で大人顔負けの数学を解けるようになり、10歳で鑑定のスキルに目覚め芸術の才も磨きがかかっていた。
王家の中で誰よりも才を持ち、その才能を放置できなくなったが。
あくまで才能を利用できるだけと群がる輩が出て来ただけでハイネの心を空しくさせた。
それでも表向きは王子として勤めたハイネの心を満たしてくれたのが。
ディアナ・シャンデラだった。
ハイネの話についてこられるのは王宮家庭教師で数学教授か、錬金術の研究をしている科学者ぐらいだった。
ディアナはハイネ以上の博識で、錬金術への関心が強く向学心旺盛だった。
「ハイネ。その本は?」
「倫理の応用に関する論文です」
子供が読むには難関なジャンルだが、ハイネにはどういうことはない。
「ディアナ嬢とこの論文の甘さについて意見し合っていたんです」
「そっ…そうか」
この時ビアンカはディアナもハイネ同様に祝福を受けているのでは?と思った。
神々の祝福を受けても、その才能を生かせるのは条件が必要だった。
その条件は孤独だった。
家族から愛情を受けられず悲しみ糧にして才能を磨くこと。
「ハイネ。お前は私の可愛い弟だ」
「姉上?」
「私はお前の味方だ。忘れないでくれ」
例え貴族が何と言おうとも。
母の血を侮辱しようともハイネは私の可愛い弟だ。
だからせめてハイネには政略ではなく、愛のある結婚をして欲しい。
王室ではなく外の世界に出て羽ばたいて欲しい願いビアンカは直ぐにシャンデラ伯爵家との婚姻を結べるように働きかけた。
その結果婚姻は叶ったが、何を間違えたのか。
相手はディアナではなく姉のファティマだったのだ。
「どういうことだ!私は…」
「ですが殿下、妹君のディアナ嬢は魔力も低く価値がありません」
「貴様!」
堂々とディアナを侮辱し尚且つ魔力が低いなら側妃にもならないとまで言い出し堪忍袋の緒がきれそうになった。
「姉上、お止めください」
「ハイネ…」
「もういいのです。だから…」
ハイネの介入でビアンカは何も言えなくなった。
「ファティマ様は同年齢の令嬢の中でも強い魔力を持ちます。美しく太陽姫ともよばれていますし。控えめなハイネ様にピッタリ…ひぃ!」
「貴様。ハイネが根暗だと言いたいのか?不敬罪であるぞ」
「滅相もございません!」
大臣は気を良くしたのかペラペラ話、調子に乗り過ぎた結果ハイネを侮辱したことすら気づかず、ビアンカの愛剣を向けられる。
「ハイネ、この婚約は無効にしよう」
「いいのです」
「だめだ!ファティマ嬢とお前は絶対に合わない!」
断固として言い切るビアンカは確信があった。
社交界でもてはやされてはいるが、典型的な考えを持つ令嬢であることは知っていた。
前時代的な考えを良しとしないハイネが合うはずがない。
「でも、今断ったら面子を潰します」
「ならばアルフレッドの婚約者候補にすればいい。あれはあ腹黒だ。うん、そうしよう」
「アルフレッドは正当な王位継承者を持っています。母方の実家は公爵です」
ビアンカよりも状況把握がしっかりできているハイネは今後の事も考え受け入れた。
「ディアナ嬢の姉君なら愛を育てればいいんです」
「ハイネ…」
一番落胆しているはずのハイネに慰められ何も言えなくなってしまったビアンカだが、あくまで婚約者候補であり正式ではないなら婚約解消もできる。
万一の事を考え保険をつけた。
もし二人が上手くいくならばと望みをかけたが、顔合わせの日に打ち砕かれてしまった。
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