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第2章小さな奇跡が生んだ真実の愛
13賢者
王族の親族たるもの教養が求められる。
貴族令嬢として教養を高めるのは悪いことではないとシャンデラ伯爵夫妻を言いくるめて、ディアナに家庭教師をつけた。
ただし、ファティマがお茶をしている休憩時間の十五分だけだった。
長居すれば怪しまれるので細心の注意を払ったのだが…
「王女殿下!今すぐディアナ様をカーネル教授の元へ!」
「いいえ、ディアナ様は芸才の才能がございます」
「いいや、ディアナ様は科学者の母と呼ばれる我が祖母の元へ!」
王室家庭教師はディアナの才能を見抜きすぐに英才教育を徹底させるべきだと告げた。
可能ならば留学の手配をと、ビアンカがドン引きする程の形相で迫ってくるほどだったのだ。
「落ち着いてくれ」
「これが落ち着けましょうか。ディアナ様は、間違いなく賢者です。猊下の加護を得ているはずです」
「ええ、これ程の才能を溝に捨てるおつもりですか」
「淑女教育よりも専門的な勉強をすべきです!時間の無駄です」
ここまで言われる始末だった。
「現在ハイネ殿下とお勉強をされてますが、ハイネ殿下以上の才をお持ちです」
「そうか…ハイネ以上の」
王家の中でも天才と呼ばれるハイネ以上の才を持つならば賢者であるのは明白だと思った。
だが、決定打に欠ける。
これ程優秀なのに何故今まで公にされなかった?
それに賢者が生まれたのなら何故巫女が気づかないのか。
「ただ、気の毒ですな」
「何がだ?」
「聞くことによると。ご両親からは勉強を制限されておるとか…淑女として美しくあることを強要されているようで」
「これでは、才能を壊すだけです」
賢者となるべ生まれた者はその才能を開花させたのには条件がある。
身内に愛されないからだ。
愛されたい思いを別の場所で消化させ満たすのだが、ディアナの場合は家族に愛されたいがために心に制限をかけている。
「このままでは賢者の魂は消えます」
「それはならん」
「はい…ですが、ディアナ様はご家族に愛されたいと願い。歩みを止めようとされています」
ここで歩みを止めされてはならない。
彼らの言う歩みとは賢者への歩みと言う意味だ。
創造者としての歩みは国の発展に繋がる。
もしここで無限の可能性を持つディアナの才が歩みを止めればどうなるか。
「この国の王女として命じる。どんな手を使ってもかまわん。歩みを進めよ」
「ならば理解あるお方の家に嫁がせてはいかがでしょう?」
「何?」
「前時代的な考えではなく新しい考えを持つ。男尊女卑と真逆な考えを持つ方に」
この時ビアンカの脳内に浮かんだのはある貴族だった。
社交界では悪い意味で有名な夫婦で、男尊女卑の常識を壊したレディーファーストを掲げる貴族。
白羽の矢が立ったのがルーズベルト伯爵家だったのだ。
「…私の計画をことごとく潰した悪魔が!」
過去を思い出しながら忌々しいと言いながら扇を握りつぶすビアンカにハイネは冷や汗を流す。
「姉上、そんな暗躍を」
「万一の時は婚約解消も可能だからな」
「なんて酷い…」
「ハイネ。賢者とはそれ程国にとって重要なのだ。王家の婚約も奇麗ごとではない」
「分かっています。私達が黒い部分を必要以上見なくていいのは姉上が動いてくださっているから」
「ハイネ。お前は優しすぎた。この魔の巣窟には似合わぬほど純粋過ぎたのだ」
ビアンカはハイネの優しさが救いだった。
慰めでもあったのだからこそ、王室から出て幸福になって欲しかった。
「神とは残酷だな。大きな才の対価が人にとって絶対必要なものだ」
「私は愛されていないとは思っておりません」
「ハイネ…」
「母から愛されなくとも、姉上やアルフレッドに優しい友人がいます」
ないものねだりをしないハイネに泣けてくるビアンカ。
何故神はこうもむごい仕打ちをするのか。
誰よりも優しい人間が苦しみ、他人を踏みにじる人間が幸福になる。
こんなのは間違っていると思いながらも上手く立ち回れない愚かな自分に苛立つビアンカ。
「私はお前もディアナ嬢も好いている」
「存じております」
「お前が望むなら私の持てる限りを使いディアナ嬢と婚約させる」
「リスクが大きいです。私は今のままがいいんです」
一言ディアナが欲しいと言ってくれればビアンカはあらゆる手段を使って娶せただろう。
幸いにもディアナはハイネを好いている。
だがハイネはディアナの未来を守ることを選んだのだから。
「姉上、そろそろ時間です」
「ああ、今日はあれの謹慎が解ける日だ」
「はい」
何もなければいい。
そう思いながらハイネは王宮を出て学園に向かったが、一般科の校舎にて騒ぎを聞きつけることになるのだった。
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