地獄の沙汰も慈愛次第!婚約者は姉を溺愛したので私は真実の愛を貫きます!

ユウ

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第2章小さな奇跡が生んだ真実の愛

25薪を求めて






ウィステリア王国では冬に入る前には薪を大量にストックしておかなくてはならない。
何故なら冬の期間が長く、毎年薪の値段が上がってくるからだ。

平民でも冬に入る前に十分な薪を用意しておく。
学園でも薪は、無償で手に入るわけではないのでそう簡単にどうぞというわけにはかない。


「申し訳ありませんが、こちらも余分は」

「ちゃんと用意してないのですか?」

「でしたら伯爵家に都合してもらっては?」


返ってくる言葉はどれも似たようなものだった。
寮生の中には使用人を同行させていない生徒も多く、彼らは自力で薪を手に入れていた。


余裕がないのだから。

「少しぐらいいただけませんか」

「シャンデラ伯爵家は資産家でしょう?うちは貧しい貧乏男爵なのよ」


普段から裕福であることを自慢するファティマの悪評により助けてくれる人はいない。

困り果てるバーバラに一人の使用人がため息をつきながら助言をした。

「仕方ないわね…」

「え?」

バーバラは顔を上げた。
悲しそうな顔をしたのは演技だった。


困っているのは事実だが…


(案外ちょろいわね)

少し悲しそうな顔をして困ってますと言う顔をすれば気の毒に思って薪を分けてもらえると思ったのだ。

自分で薪を取りに行くのは面倒だし、薪割をするのはもっと面倒で嫌だった。
何処までも他力本願なバーバラだったが、この後すぐに叩き落されることとなるのだった。


「そんなに困っているならルクティアさんに頼んだらどう?」

「え?」

「私達も薪が足りなくて困っていたら彼女が分けてくださったのよ」


バーバラは固まった。
何故ここでルクティアが出てくるのか分からない。


「北の寮は敷地も広くて、ディアナ様の錬金術で薪を沢山作ってくださっているとか」

「ルーカスさんも時々薪を分けてくださるのよ」


「本当にうらやましいわ。私達使用人の中で一番いい暮らししているわよね?」



心底羨ましそうにするが妬みはなかった。
彼女達は薪が足りず困っているときはルクティアが都合してくれたし、薪割にルーカスが助けてくれることも多いからだ。



「そういえば、あちらの寮は最近リフォームされたそうね」

「古い寮ではありけど、元は王族が別邸にされていましたもの」

「遠くから見ましたが。趣があって素敵で…羨ましいわ」



何時の間にかディアナ達が住まう寮が羨ましいと楽しそうに話す彼女にバーバラはとぼとぼと歩いていく。


これ以上聞きたくなかったのだから。


(何よ…何よ!)



ずっと見下していたルクティアがいい思いをしている。
そんなことあり得ない。


きっと何かの間違いだと思いながらも歩く先はディアナ達が暮らす寮に向かっていた。

(どうせ酷い暮らしに決まってる!)


自分達が惨めな思いをしているなら、ディアナ達はもっと惨めでいてくれないと許せないと思いながら足を進めた。


その先に絶望が待っているとは気づかずに。


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