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第2章小さな奇跡が生んだ真実の愛
42崩壊の始まり
シャンデラ伯爵家では、かつてない程の重い空気が立ち込めていた。
緊張感が漂う中、無言で圧力をかけるシャンデラ伯爵は息子に対して苦虫をかみ殺したような視線を向けている。
その隣にシャンデラ伯爵夫人も隣に立ち、沈黙を貫いていた。
「説明しろカミエル」
表情は買えなかったが手が震えていた。
床に散らばるのは数枚の書類で、破り捨てられたものもある。
「説明も何も、ご自分でお確かめになったではありませんか」
「ディアナが特別保護法に入っただと!誰がそんな許可をした」
「国の法律に貴方の許可は要りません。ご自分が法律とでも?」
笑みを浮かべるカミエルに絶句するシャンデラ伯爵夫人。
父親に向ける表情ではないと震え、乱暴な足取りでカミエルの元に近づき。
「貴様ぁ!」
「うっ!」
「きゃあ!貴方!」
拳を振り恐ろし、カミエルを殴り床に叩きつけられる。
「旦那様!」
「離せ!」
ジョナサンが前に立ちふさがり庇うも、シャンデラ伯爵は許さなかった。
「誰にそんな口を聞いている!お前が私の留守中に!」
「私は後は頼むと言われ、実行したまでです」
数日前に悪徳商人の詐欺被害にあってから、邸を空けることが増えたので当主代行をカミエルに任せていた。
そんな中、シャンデラ伯爵領地内で領民との間にトラブルが発生したことで対応をしなくてはならなくなったので邸内の事はすべて一任していた。
後を引き継がせるのはまだ先であるが問題ないだろうと思ったのだ。
その間何度か手紙が来たが、重要性を感じずに取り合わなかったが、立て続けに手紙が届き煩わしくなり報告をするなと同行した使用人に命じ手紙を遅らせたのだ。
だがカミエルは重要な報告があるので手紙を速達で送った。
ルーズベルト伯爵家とのことだと手紙に書いたのだが、取り合わなかった。
手紙の内容には正式な婚約解消が認められたことだった。
面倒だと手紙を読まずに捨ててしまった後になってすべての作業が終わったのは後の祭りだった、
「勝手に婚約解消を許してどういうつもりだ!」
「婚約解消は国王陛下がお許しになりましたし。ルーズベルト伯爵夫妻が慰謝料を支払い、当事者であるディアナとも話を済ませていますので問題ありません」
「親の同意がいるだろうが」
「私にすべて一任すると仰せでした。手紙では自分で判断しろと書かれていました」
「そういう意味ではない!」
シャンデラ伯爵が言ったのは簡単な事務作業のことだ。
ディアナの婚約関係にまで任せると言った覚えはないが、王都を離れるときにすべてを一任すると命じたのはシャンデラ伯爵だった。
「旦那様は領地代行としての役目を任されました。書類上では当主の権限はカミエル様にございます」
「ジョナサン!何を…」
「旦那様が不在の間、シャンデラ伯爵家の負債のすべてをカミエル様がすべて請け負われました」
「は?」
「領地に出迎えれている間、粗悪品の品々に関してお客様からクレームが参りました。ファティマ様が復学の後に問題を起こされた際にカミエル様がお一人で対応されたのですよ」
「何を言っている…子供同士の喧嘩で」
大げさだと言うシャンデラ伯爵はどれ程の仕事量をカミエルがこなしていたか知らない。
ファティマが復学後に起こした騒動は決して軽くない。
「隣国に外交の為嫁がれる子爵令嬢を扇で殴ろうとしたのです」
「は?」
「間に入ったハイネ殿下は怪我を負い、学園に呼ばれましたが母上がハイネ殿下を侮辱しました」
「あれは!」
知らなかった事実に絶句するシャンデラ伯爵に、弁解をしようとするシャンデラ伯爵夫人。
双方を見ながらカミエルは更なる失望感に襲われる。
事の重大さを理解してない二人に何を言っても無駄だと思ったのだ。
彼らは自分を正当化することだけに必死だった。
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