地獄の沙汰も慈愛次第!婚約者は姉を溺愛したので私は真実の愛を貫きます!

ユウ

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第三章時を超えた想い!純白の絆が奇跡を生む!

45優しい王子様





生徒会室を出るハイネは静かにその場から去ろうとした時だった。



「ハイネ殿下」

「ブリリアント嬢?」


学園を休んでいたマリーが静かに声をかける。
制服ではなく女商人が着るような服装だった事から今しがた帰国したのだと気づく。


「今戻ったのか」

「はい」


「聞いていたのか」


偶然とはいえ、聞かれていたことにバツの悪そうな表情をする。


「ハイネ殿下はディアナの王子様です」

「は?」

「お姫様を優しく包み込む優しい王子様と同じです」



優しい王子様。
子供に読み聞かせる童話の一つだった。

元は教会のステンドグラスの絵に描かれていた王子様が、ある少女に恋をして具現化した。
最後は少女の幸福のために魔法を使って消えてしまう悲恋である。



「例え何があっても少女を守る優しい王子様です」


「買いかぶり過ぎだ」

「でも、王子様の心はどうなりますか」

「ブリリアント嬢?」


ハイネを見ながら傷ついたような表情をする。


「いつも我慢して、一度ぐらいは我が儘になるべきですわ!じゃないと屈折した人間になります!」


「屈折…」


ポカーンと口を開けたまま固まる。
ある意味ディアナ以上の怖いもの知らずだった。


ここが社交場なら不敬罪だと罰せられるのだが、ハイネは気にすることはない。



「そうか、不良になるな」

「いいえ、たまには不良になるべきです!少しは周りを困らせればいんです。学生の間ぐらい自由に」



(本当に、ディアナといい彼女といい)


ハイネは少しこの国の女性を見くびっていたのかもしれない。
思ったよりも皆強く、自身での身の振り方を理解しながらも現状に甘んじることなく変えようとしている。


(むしろ頼もしいな)



王族という狭い箱の中にいたままでは気づけなかった。
むしろ王族のハミダシモノであったからこそ多くの世界を知ることができた。



(そうだ。俺はまだこれからなんだ)


狭い箱庭にいざる得ない二人の為にも。
外の世界に出ることが許された立場だからこそできることはある。


「そうだな。少しは許されるだろうか」


「何を仰せですの?ハイネ様に異論を唱えるならそれこそ権限を使うべきですわ!」

「そうか…そうだな」



ずっと我慢して来た。
王族であって王族ではない立ち位置に苦しみながらも唯一の心の拠り所を見つけたのが錬金術だった。


錬金術をきっかけにハイネは多くの絆を手にした。


初恋は散ってしまった。

けれど、新たな一歩を踏み出したハイネは新たな花を見出した。


「では、少しだけ付き合ってくれ。今日は私の失恋記念日とする」

「お任せください!失恋した時は思いっきり騒ぐんです!そしたら新しい恋を見つければいいのですわ!」


力こぶを作りドヤ顔をするマリーはお世辞にも織女とは言い難かったがハイネにとって救いだった。



そしてこの二人が後に、世界を結び大商人として名を轟かすことになるのはまた別の話だった。



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