所詮は他人事と言われたので他人になります!婚約者も親友も見捨てることにした私は好きに生きます!

ユウ

文字の大きさ
4 / 210

3孤独の中で

しおりを挟む





今できることをしなくてはならない。
弱い自分をしかりつけ、必死にできることをした。

私の立場上王太子殿下に意見することは難しい。
ならばこれ以上問題が起きないようにあらゆる手を尽くしたのだ。


生徒会役員でもない私は直接意見できる立場にない。

だからこそ警備の配置を変えてもらったり、嫌がらせがこれ以上酷くならないように動いたのだけど、嫌がらせを無くすことはできなかった。


小さなことしかできない私。
そんな中アグネスの気分展開にと舞踏会に出るようになったが、そのパートナーをサリオンが勤めるようになった。


「当然だろう」

「ごめんなさいね」

二人は私が許すことを前提で言うので拒否権はない。


けれど…


「サリオン、今度のパーティーは」

「悪いが不参加だ。形式だけだからいいだろ?アグネスが…」


お茶会、行事のすべて。
サリオンの優先するのはアグネスとなり私は常に一人で社交界で噂が流れた。


「所詮噂だろ?無視すればいい」

「そうよ。この程度では社交界は生きていけないわ」

「将来の為の勉強だ。アグネスに感謝しなくてはな」


堂々と言う二人。
だけど知っていたのかしら。

その日は私の誕生日パーティーだったのに。


形式だけのものだと言ったあの日は母の命日だった。
少しの時間でもいいから母の命日前に花を手向けて欲しいと言おうとしただけ。

領地に来てほしいのではない。
母の眠る海に花を手向けて祈って欲しい。

僅かな時間だけなのにそれすら無駄だと言われたようで悲しかったけど。


「ごめんなさいお母様」


でも嫌な顔をしてこられてもお母様は喜ばない。


だから私はお母様にお祈りした。

竪琴を片手に。


「見事だな」

「え?」

海に向かって旋律を奏でていると誰かに声を掛けられた。


「あまりにも綺麗で」

「恐れ入ります」


見慣れない顔だった。
学園の生徒ではなさそうな雰囲気だった。


「宮廷音楽団の団員なのか?」

「とんでもありません」

「これほど見事な腕なのに惜しいな。俺は初めてこんな綺麗な曲を聞いたぞ」

「光栄です」


何所の何方が知らないけど嬉しい。
音楽は私にとって大切な絆でもありお母様との思い出だった。

私の音楽で笑顔になる人を見るのが好きだった。

でも、一番身近な人は笑顔になってくれなかった。


『なんか優雅さに欠けるわね』

『華やか場所にふさわしくないだろ』


私の音楽はダイナミックさに欠ける。
派手さがないので、パレードなどには不向きだったのも自覚しているし、この曲は神様に捧げる曲でもあるので華やかさというよりも哀愁感のある曲だから好みじゃなかったみたいだ。


「奥が深いな」

「え?」

「俺はもっとこの曲が聞きたい」


名前も知らない人。
だけど演奏者にとってはこんなに嬉しいことはない。


ずっと悲しいことばかりだったから嬉しかった。


「俺はこんなに綺麗な音色を奏でる人は初めてだ」


この時の言葉が傷ついた私を救ってくれた。


「俺の名前はレオって言うんだ」

一人耐え忍んでいた私に優しいメロディーを奏でてくれた私と彼との出会いだった。


誰にも理解して貰えない。
心の胸の内を晒すこともできない私にレオは何も言わずに傍にいてくれた。


私の悩みを話すわけでもないのに彼はなんとなく察してくれているかのようだった。


辛い日々を過ごしながらギリギリの所で留まることができたのは彼の支えがあったからなのかもしれない。

だけど、私の心は既に離れかけていたことに私自身気づいていなかった。


あの言葉を聞くまで。





しおりを挟む
感想 617

あなたにおすすめの小説

恋人が聖女のものになりました

キムラましゅろう
恋愛
「どうして?あんなにお願いしたのに……」 聖騎士の叙任式で聖女の前に跪く恋人ライルの姿に愕然とする主人公ユラル。 それは彼が『聖女の騎士(もの)』になったという証でもあった。 聖女が持つその神聖力によって、徐々に聖女の虜となってゆくように定められた聖騎士たち。 多くの聖騎士達の妻が、恋人が、婚約者が自分を省みなくなった相手を想い、ハンカチを涙で濡らしてきたのだ。 ライルが聖女の騎士になってしまった以上、ユラルもその女性たちの仲間入りをする事となってしまうのか……? 慢性誤字脱字病患者が執筆するお話です。 従って誤字脱字が多く見られ、ご自身で脳内変換して頂く必要がございます。予めご了承下さいませ。 完全ご都合主義、ノーリアリティ、ノークオリティのお話となります。 菩薩の如き広いお心でお読みくださいませ。 小説家になろうさんでも投稿します。

王妃の仕事なんて知りません、今から逃げます!

gacchi(がっち)
恋愛
側妃を迎えるって、え?聞いてないよ? 王妃の仕事が大変でも頑張ってたのは、レオルドが好きだから。 国への責任感?そんなの無いよ。もういい。私、逃げるから! 12/16加筆修正したものをカクヨムに投稿しました。

どうして私にこだわるんですか!?

風見ゆうみ
恋愛
「手柄をたてて君に似合う男になって帰ってくる」そう言って旅立って行った婚約者は三年後、伯爵の爵位をいただくのですが、それと同時に旅先で出会った令嬢との結婚が決まったそうです。 それを知った伯爵令嬢である私、リノア・ブルーミングは悲しい気持ちなんて全くわいてきませんでした。だって、そんな事になるだろうなってわかってましたから! 婚約破棄されて捨てられたという噂が広まり、もう結婚は無理かな、と諦めていたら、なんと辺境伯から結婚の申し出が! その方は冷酷、無口で有名な方。おっとりした私なんて、すぐに捨てられてしまう、そう思ったので、うまーくお断りして田舎でゆっくり過ごそうと思ったら、なぜか結婚のお断りを断られてしまう。 え!? そんな事ってあるんですか? しかもなぜか、元婚約者とその彼女が田舎に引っ越した私を追いかけてきて!? おっとりマイペースなヒロインとヒロインに恋をしている辺境伯とのラブコメです。ざまぁは後半です。 ※独自の世界観ですので、設定はゆるめ、ご都合主義です。

見た目を変えろと命令したのに婚約破棄ですか。それなら元に戻るだけです

天宮有
恋愛
私テリナは、婚約者のアシェルから見た目を変えろと命令されて魔法薬を飲まされる。 魔法学園に入学する前の出来事で、他の男が私と関わることを阻止したかったようだ。 薬の効力によって、私は魔法の実力はあるけど醜い令嬢と呼ばれるようになってしまう。 それでも構わないと考えていたのに、アシェルは醜いから婚約破棄すると言い出した。

【完結】婚約破棄されたので、引き継ぎをいたしましょうか?

碧井 汐桜香
恋愛
第一王子に婚約破棄された公爵令嬢は、事前に引き継ぎの準備を進めていた。 まっすぐ領地に帰るために、その場で引き継ぎを始めることに。 様々な調査結果を暴露され、婚約破棄に関わった人たちは阿鼻叫喚へ。 第二王子?いりませんわ。 第一王子?もっといりませんわ。 第一王子を慕っていたのに婚約破棄された少女を演じる、彼女の本音は? 彼女の存在意義とは? 別サイト様にも掲載しております

冤罪で殺された聖女、生まれ変わって自由に生きる

みおな
恋愛
聖女。 女神から選ばれし、世界にたった一人の存在。 本来なら、誰からも尊ばれ大切に扱われる存在である聖女ルディアは、婚約者である王太子から冤罪をかけられ処刑されてしまう。 愛し子の死に、女神はルディアの時間を巻き戻す。 記憶を持ったまま聖女認定の前に戻ったルディアは、聖女にならず自由に生きる道を選択する。

はっきり言ってカケラも興味はございません

みおな
恋愛
 私の婚約者様は、王女殿下の騎士をしている。  病弱でお美しい王女殿下に常に付き従い、婚約者としての交流も、マトモにしたことがない。  まぁ、好きになさればよろしいわ。 私には関係ないことですから。

現聖女ですが、王太子妃様が聖女になりたいというので、故郷に戻って結婚しようと思います。

和泉鷹央
恋愛
 聖女は十年しか生きられない。  この悲しい運命を変えるため、ライラは聖女になるときに精霊王と二つの契約をした。  それは期間満了後に始まる約束だったけど――  一つ……一度、死んだあと蘇生し、王太子の側室として本来の寿命で死ぬまで尽くすこと。  二つ……王太子が国王となったとき、国民が苦しむ政治をしないように側で支えること。  ライラはこの契約を承諾する。  十年後。  あと半月でライラの寿命が尽きるという頃、王太子妃ハンナが聖女になりたいと言い出した。  そして、王太子は聖女が農民出身で王族に相応しくないから、婚約破棄をすると言う。  こんな王族の為に、死ぬのは嫌だな……王太子妃様にあとを任せて、村に戻り幼馴染の彼と結婚しよう。  そう思い、ライラは聖女をやめることにした。  他の投稿サイトでも掲載しています。

処理中です...