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5心のままに
しおりを挟む私はキャンベルさんの事を何も知らない。
噂通りなのか、それとも違うのか。
でも、こんなの間違っている。
「何をしているの貴女達!」
彼女は怯えるような表情をしていた。
助けを求めるような目をして。
私は北の辺境伯爵家の娘。
何より、私自身が許せない。
「リゼ!」
「ちょうどいいところに…」
私は二人を無視して、手を差し出す。
「怪我は?」
「あっ…ありません」
けれど、精神的に痛めつけられた状態だったのだろう。
泣くのを必死で我慢していたのが解る。
「あの…」
「リゼ!どういうことなの!」
「どうもこうもないわ。二人は彼女に何をしようとしたの」
「えっ…リゼ?」
私はどうしてもキャンベルさんが噂通りの人には見えなかった。
何も言わずにただ申し訳なさそうな表情をしている。
「こんな人気のない場所に呼び出して・・」
「私は注意をしてあげてだけで」
「そうだ。だんまりを決め込んで!」
本気で言っているのだろうか。
一人は侯爵令嬢でもう一人男子生徒だわ。
二人に責められれば何も言えないのは当然だ。
「言えるわけないじゃない」
「は?」
「解らないの?彼女はクラスでも仲間外れにされ、責められ手孤立しているのに」
「だから何だ?」
そんな状態で何が言えるというの。
「フェアじゃないわ卑怯だわ」
「何ですって?」
「私は正々堂々としている貴女が好きだった。でもこれは自分より弱い人を虐げているだけだわ!」
「貴様!」
本当に、何時からだろう。
サリオンが私をお前とか貴様と呼ぶようになったのは。
何時以来だろう。
婚約者であり幼馴染だったのに使用人のように接するようになったのは。
あの時私を他人だと言った時に私の心は離れてしまっていたのかもしれない。
「貴女は変わりましたねアグネス様」
「えっ…何を」
「以前の貴女は少し融通の利かない所はあれど、このような真似を…サリオン様。今の貴方は紳士ではありませんわ」
「何だと!」
他人だというならそれでいい。
もう私達は元に戻れないのだから。
「キャンベルさん、この場で正直にお答えになってください」
「えっ…」
他の生徒が集まってきている。
ちょうどいいわ。
「貴女は本当に生徒会の皆さんと不適切な関係を結ばれましたか…不正をしてこの学園に入られましたか?」
「…が…ま…す」
「はっきりお言いなさい!違うかそうか」
曖昧なままではいけない。
「貴女が間違ったことをしていないならはっきり言いなさい」
周りは彼女の言葉に耳を貸さない。
でも、言わなければ。
声に出して言わなくてはならない。
じゃないとこのままずっと変わらない。
「この学園のカリオンに誓って言いなさい。例えこの場にいる生徒が貴女を信じなくてもこの学園の創始者様は聞いているはず」
「私を信じてくださいますか」
「貴女が真実を口にするならば私は信じます」
困惑しているのは無理もない。
だって今まで助けられなかった私を信じろなんて無理な話だもの。
そんな中二人は私を責めるような視線を向けた。
「何を言っているのリゼ!」
「お前はそんな女の味方をするのか」
「今は彼女と話しているんです。横入りしないでくださる?」
「なっ!」
これまで逆らうことをしなかった私が逆らったのを驚いたのだろう。
でも、もう二人と縁を切ることにした私は従う必要はない。
もしかしたらこの後私は咎められるかもしれない。
相手は侯爵令嬢。
流石に学園が退学になることはないとしても。
それでも私は正しいことをしたい。
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