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31とある少女の苦悩⑤
しおりを挟む婚約者と話をするとおっしゃられていたけど、私はそう簡単に行くのかと思った。
話しをして誤解は解けるのか、そんな不安を抱いている中。
他の生徒会役員の人が作業をしながら話しているのを聞いてしまった。
これまでは幹部の方達と話していた。
「会長に、副会長…いい加減にしてほしいな」
「ああ、自分達の事情を持ち込まないでほしいな。だが、俺達も人の事は言えないが」
「ああ、私の婚約者も関与している」
他の生徒会の人達の婚約者の女性が私を毛嫌いしている?
「女子生徒に嫌われてるからと過度に庇い、ステラ嬢が女子の中に入れない状況になっている」
「なのに本人達は正義の味方気取りで、婚約者に冷たくするだけだ。しかも侯爵令嬢の機嫌取りをリーゼロッテ嬢に丸投げだ…社交界では彼女の婚約者が侯爵令嬢の奴隷になるように命じているそうだ」
「先日の舞踏会でも互いに微笑み踊っていたそうだ…気の毒だ」
私は愕然とした。
平民である私は社交界の噂は知らない。
でも学園でここまで噂が流れるなんて相当だ。
「殿下は自分が嫌なことをリーゼロッテ嬢に押し付けていることを理解していない」
「ああ…だから俺達は距離を置いている。本当の意味で学園の為に心を砕いているのはあの方だろ?」
「先日警備の見直しをされているのも…ステラ嬢の嫌がらせの対策をしていたが…本人も問題がある」
私の名前が出たこと度にドキッとした。
「平民であることは理解している。だが受け身のままではいじめる側はつけがある」
「どんなに警備を強めてもはっきりと身の潔白を言わない以上は…」
「風紀員も動けない」
はっきりしない…
私はずっと何も言わなかった。
我慢するだけで自分自身で違うともそうだとも言わなかった。
ただ流されるまま。
生徒会の幹部の皆さんに守ってもらうだけで?
一番悪いのは――
「私だ」
その場にしゃがみこみ、私はこれまでの行動を振り返る。
相手は貴族だから平民の私では何も言えない。
そういいながら流されてきた。
「なのに殿下は状況を悪化させるだけで、面倒事はリーゼロッテ様に丸投げだろ?」
「お可哀想な方…アグネス様の幼馴染の癖にキャンベルさんを咎めないことを責められた、一方で生徒会幹部はアグネス様からステラ嬢を守れないことを無能だというなんて」
「彼ら、勘違いをしているんじゃないか」
「彼女は辺境伯爵令嬢であるが、この学園の苦情処理係じゃないのに」
私の曖昧な行動の所為でリーゼロッテ様は周りから責められている?
「教師も介入するより生徒同士で片づけさせた方が対面もいいからな」
「その犠牲者がリーゼロッテ様ってわけだ」
震えて声が出せなかった。
私よりもずっと辛い状況にありながらあの方は私を助けて下さった。
救いあげようとしてくださった?
そう思うと胸が苦しくなり、私は人知れずその場から離れた。
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