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80最大の武器
しおりを挟む泣きじゃくるステラはずっと心の中でしまい込んでいたのかもしれない。
両親の事をあまり話さなかったのは、学園での心無い言葉に傷つけられ過ぎていたからなのかもしれない。
「学園に入ってすぐに母親の躾が悪いと言われました」
「…誰かとは聞かないわ」
「聞かなくても解るだろ。そんな不愉快なことを言うのは」
お兄様の表情が鬼を通り越して魔王のようだわ。
目で人を殺せそうね。
「母が学園長に色目使ったとか…」
「ないだろ。いかに貴族の邸で働いていても面識はないはずだ」
レオもドン引きしていた。
なんて陰湿なのか、言葉にするのも嫌だわ。
私も早くに母を亡くしたことであることないことを言われていたけどステラはずっと言われ続けていたのだろう。
学園に入ったのも正当な理由がある。
彼女がすぐれているからだと言うのに勝手な思い込みで噂を流し、しかも敬愛する母親の尊厳を踏みにじられたらどんなに傷つくか。
「私の所作は母が教えてくれました」
「貴女のお母様は女性としても、一人の人間としてもしっかりしている方なのね」
社交界に限らず、女性が学びに精を出すことは良くないと考える人は少なくない。
国が女性の独立を阻んでいるからだ。
その一方で夫死別した妻や、親を亡くした子供達は一人で生きて行かなくてはならなくなっても周りが手を差し伸べるのは難しい。
「これから先、君の事を悪く言う連中は増えるだろう。我が国でも学園でも母君が優秀であればある程不愉快な噂が流れるだろう」
「何で…」
「それは貴女のお母様に劣等感を持つ故よ」
ステラが周りに評価されればされる程、周りは悪い噂を流すでしょう。
ティメリア王国以上に酷い噂を流す人達は増える。
「だが、そんな馬鹿な連中に振り回されるなど時間の無駄だ。俺は幼少期に悟った…そうしないと生きていくのもしんどいからな」
「そんな繊細な神経を持ってたんですか」
「喧嘩を売っているのか」
本心なのか、嫌がらせなのか解らなけど。
レオなりに励まそうとしているのだと解るんだけど…
なんとうかこの二人の関係性はこれなのよね。
「ステラ、貴女のお母様は噂に傷ついていたらした?」
「いえ…いいえ!」
きっと噂なんて跳ね返す程の強い方だったのだろう。
「だったらもう傷つくのも泣くのも止めましょう。笑ってやりなさい。そんなくだらないことを言う連中は可哀想な人だと」
「そうだぞステラ、なんだったら俺が…」
「お兄様、隣国でも血祭は止めてください」
本当にこの人はやることが極端だ。
「武器は多い方がいいわ。マナーも私達を助けるものとなるのだから」
カスメリア王国で戦っていくには多くの武器が必要だわ。
マナーもその一つなのだから。
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