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98女傑
しおりを挟む驚きのあまり言葉も失っている私に彼女は気づいたようだ。
「まぁまぁ、貴女ですか」
「はい…」
「お見苦しいところをお見せしました。まったくこれだから男は困ります。殿下、もう少し気を使ってください」
「お前が言うな!」
堂々と言ってのける所がすごいわ。
相手は王族なのにこの遠慮のない物言いはもはや尊敬に値する。
「お初にお目にかかります。私は現財務大臣を務めさせていただいております。エラノーラ・ガリエルと申します」
「リーゼロッテ・シネンシアと申します」
「存じております。お会いできる日を楽しみにしておりましたのに、殿下と来たら」
「その話は後にしてくれ」
長くなりそうなので、とりあえず座るように命じて気まずいお茶会が始まった。
「本来ならば王宮ににて皆にお披露目をしていただくのが筋でした。ですが、現在王女殿下は他国を飛び回っておりますので」
「どうでしたの?」
「ですが、謁見のまで皆の前で挨拶をしていただくべきですわ。そんなに私達に紹介したくなかったのですか?」
「ぐっ…」
「本当に軟弱な方です事。だからその年で大学も飛び級できないのです。無能ですわ。む・の・う!」
二度も言ったわ。
しかも最後の方は強調している。
「悪かったな。お前のような天才ではなくて」
「はぁー…男というのは女が完璧だとこうも卑屈になるのですね?仕方ありませんわ。殿下は私とは違いますから」
「お言葉ですが…レグルス殿下は我が国では優秀な成績を…」
「他の貴族と互角など王家としてアウトですわ。王族たるもの、他の貴族よりも勉学ができて当然。それに見合うだけの努力はして当たり前!王女殿下は10歳で大学で学ぶべき学問をすべてマスターしているのです」
シビアだわ。
これ以上ない程のシビア。
「隣国の教育はゆとり教育なのでしょうね?王太子殿下があんなアホで。側近は輪をかけもっとアホ。東洋にはざる馬鹿という言葉もありましたわね」
「ざる馬鹿?」
「すくいようがない馬鹿ってことだ」
なるほど水が流れてしまうものね。
面白い例え方だけど、一応元王太子なのに。
「隣国の悪い噂は筒抜けですわ。婚約者の暴走を止められない馬鹿王子だとか。しかもその尻拭いを一人の令嬢に丸投げして責任を押し付け逃げたとか」
噂が飛躍している!
尾ひれがついてとんでもないことになっているわ!
「そもそも婚約者の手綱を掴んでおけないなんてなんたる体たらく」
「言葉に気をつけろ」
「事実ですわ」
強い。
とんでもなく強い。
この国は女性が強いと聞いていたけど、ここまでとは思わなかった。
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