君は優しいからと言われ浮気を正当化しておきながら今更復縁なんて認めません

ユウ

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第一章

10記憶





香ばしいお茶の香りはアスランの前世でもなじみのあるお茶だった。

(緑茶を焙じた茶か…)


アスランには前世の記憶があった。
遠い昔の記憶で今でもふと思い出すことがある。

この国とは文化が異なる国で。
小さな島国であった。

日本と呼ばれる国だった。
戦乱の世に生まれて、決して恵まれた生い立ちではなかった。


幼少期はとても苦労しながらも、優しい領主に見初められ嫡男の守役となったのだ。


酒や女に溺れることを良しとしないとても生真面目な男だだった。
その中で最も好んだのは一杯のお茶だった。


「甘い…」

「殿下、味が解りますか」

「うん…もっと」


味覚障害になっているルクシアは味が解りもっとせがみ、パンを一口食べる。


「美味しい」

「されはようございました…って、何を泣いておられるのです」

「え?」

お茶を飲みながらアスランはぼろぼろ涙を流していた。


「どうしたんだ。何所か痛いのか…それとも誰かに苛められたのか?」

アスランは平民上がで王子の側近になった。
功績はあるが身分至上主義の貴族には疎まれているので嫌味を言われ、病の王子の側近であることも出世を妨げる原因となっていた。


だがその程度の事はアスランにとっては取るに足らないものだ。


「いえ…」

「殿下、アスラン様が苛め程度で泣くはずがありません。転んでもただで起きる方ですか」


「じゃあ、何故泣いているんだ」


ルクシアにとってアスランは兄のような存在だった。
母から見捨てられて、一人ぼっちになったルクシアにとって精神的な支えだった。


「申し訳ありません。なんでもありません」

「そうか…」


言いたくないなら無理に聞くような真似はしなかった。
まだ幼さは残りながらもルクシアは人の気持ちが解る聡明な王子だった。


「殿下、こちらのパンはふかふかですぞ」

「うん…美味い」

「それはようございました。スープもございますぞ」


コロネが温めなおしたスープは黄金色にか輝いていた。
具はないのでとても質素だと思いながら食べた瞬間に口の中で豊かな味が広がった。

「これは…」

「具材を煮込んであえてシンプルなスープに仕上げているそうです。汁だけを取った贅沢なスープですぞ」

「美味しい…すごく」

味がちゃんとする。
何よりも温かみのある味を気に入ったルクシアはもっと欲しがり、その日から味覚を取り戻したのだ。


一方アスランは懐かしい味に動揺していた。


(これは…そんなはずはない)

このお茶の味は前世で何度も飲んだ味だった。

忘れることができない味だった。


だが、偶然だろうと言い聞かせたのだが。


その日からコロネが運んでくる軽食の毒見をするようになったのだ。


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