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第一章
34翡翠宮の農園
本来極寒の地では南部の野菜を育てるのは不可能に近い。
魔肥を使えば別だが、そんな高価な肥料を用意できるはずもない。
…のだが。
「トマトだ」
「おいおい、何の冗談だよ。三日でこんなに作物ができるのか」
何故か、翡翠宮の農園が豊作だった。
しかも夏にしか収穫できない野菜も食べごろになっている。
「とりあえず」
「待て待て!」
試しに食べようとするグレーテルをコロネは必至で止める。
「何普通に食べようとしているんだ」
「え?」
「毒だったらどうするんだ」
コロネの反応は普通だった。
しかし目の前に美味しそうな野菜が並んでいるならば食べない手はない。
「食べたくて」
「お前な…」
困った表情をするも、こうなったら聞かない。
「先に食べるなよ」
「はい」
コロネは頭が痛くなった。
万一腹痛をおこしたらアスランに殺される。
見た感じ毒があるとは思えなかったが、まったく害がないとは言えないのだ。
「それにしてもこれ、観葉植物じゃないのか?」
「え?食べれますよ」
この国ではトマトはまだ食用として使われていなかった。
他の国でも観葉植物にされてることが多かったので食べる習慣は少なかった。
「美味しいんですよ」
「うっ…」
先に食べると言った手前食べないわけにはいかない。
「ん?」
トマトにかぶりつくと思った味ではない。
甘さと後味の酸っぱさが何とも言えなかった。
「美味い」
「夏には最高の野菜です。喉の渇きも取れるし」
「美味いな。これは癖になる」
コロネは体格が大きく、大食漢であることから誤解を招かれやすいが実は野菜や果物を好む。
職業柄、肉魚を常日頃から口にするがベジタリアン志向だ。
彼にとってはトマトは最も理想的で好む味だ。
「本日はこちらを使おうかと」
「何にするんだ。」
「スープからメインに使えます」
一時間後、本日の献立が完成した。
「何これ。今日の食事真っ赤」
アスランにしごかれて疲れた表情をするルクシアは食卓を見て絶句した。
何故なら食卓に並んだのは赤い物ばかりだった。
トマトのサラダにミネストローネにトマトパスタにデザートはトマトのゼリーだった。
「本日はトマト尽くしですぞ」
「いや、ですぞじゃないよコロネ!」
肉はあるがほとんど野菜だ。
体には良さそうだが野菜ばかりでげんなりする。
「俺、野菜嫌い」
ボソッと言うも、お残しは許されなかった。
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