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プロローグ
軽やかな音楽が流れる。
豪華なシャンデリアに大勢の使用人。
美しい令嬢が優雅にお茶を飲みながら緊張感が走る。
正直この場に場違いな毛色の違う生き物がいる。
そう、ここはベルシュタイン公爵家。
数多の貴族の中でも武闘派集団と呼ばれた貴族で開国前から存在する名門貴族。
その昔は国の最後の砦と言われる最強の戦士が存在したとも言われるが、今は公爵家筆頭と言われており王族との調和を何よりも考えている。
なのだけど、隣で眉間の皺を寄せながらお茶を飲むのは私の婚約者。
そして反対側で優雅にお茶を飲むのは婚約者の妹君で、私の義妹になる予定のエリザベート様だ。
「エリザベート。兄も口うるさく言いたくない」
「ならば言わなければいいではありませんか。最近のお兄様は姑のようにネチネチですわね」
「誰の所為だ!誰の!昨日も隣国の王女をフェンシングでボコボコにしたそうじゃないか!」
「あら?勝負を挑まれたのでお相手をしただけですわ」
扇を片手で微笑む横顔は美しい。
けれど、その微笑みに兄であるレオナルド様はご立腹だ。
正義感の強いエリザベート様は立場の弱い貴族の方を見ると手助けしてしまうお優しい肩ではある。
その一方で身分を使って傍若無人な態度を取る方は許せないのか容赦がない。
ただし真っ向から仕返しをすることはない。
そんな真似をしたら社交界で問題になるのだから。
未来の王妃となる立場もある故だ。
「レオナルド様。どうか落ち着きくださいませ。エリザベート様は嫌がらせをされている下級生を庇われたのです」
「庇い方にもやり方が…ぐっ!薬をくれ…胃が痛い」
公爵家の子息であり、一番の出世頭とも言われる方だけど。
苦労が絶えず本日も胃を抑える。
現在学園で騒動が起きていることもあり、その騒動の関係者の妹を窘めているのだけど。
「お姉様、本日のお菓子も絶品ですわ。次回のお茶会に調子乗っている馬鹿共の口に突っ込んで差し上げたいですわ」
「やるんじゃない!」
「あら?半分冗談ですわ」
「お前は…ああ!胃が痛い!」
このように少しばかり荒っぽい性格をされている。
けれど公爵家のご令嬢故に今まで許されて来たし、無茶はしておられなかったのだけど。
あまりやり過ぎるとお家も問題が起きる。
かといって私は辺境地の田舎貴族でもある故に何もできない。
こうしてお茶を用意して話を聞くだけだった。
本来ならば公爵家の妻になれるような身分ではない。
王族や高位貴族の婚約は口約束なだけで本当に結婚するとは限らない。
婚約当初は私も囁かれていたのだけど。
何故か婚約は続行し、来週私達は結婚をする。
「お姉様、結婚式ももうすぐですわね」
「ええ…結婚と言っても婚約中も伯爵家に厄介になっているので変わりませんわ」
レオナルド様は公爵家のご子息であるが伯爵の地位も持っておられる。
継承以外で爵位を賜れるのは稀なのに、すごい方だわ。
第一王子の覚えもめでたい。
社交界では女性の憧れなのだけど…
「結婚したらまた命の危険が」
「ならば私が全員ぶっ飛ばします」
「頼むから止めてくれ」
社交界では薔薇姫等と呼ばれているエリザベート様だけど。
根は優しく正義感が強く不正を嫌う方だ。
地方出身の貴族である私を差別することはない。
「それにしてもお姉様のご実家の特産物のお菓子はどれも絶品ですわ。いっそうのこと私もお兄様のお邸に…」
「距離はそうないだろ!」
「あら?まだ何も言ってませんわ」
現在ベルシュタイン公爵家と伯爵家の行き来はしているけど日帰りだ。
同居となると問題が生じるのだ。
私は別にいいのだけど。
レオナルド様が猛反対したので現在に至る。
この時はまだ、私の身近で大騒動が起きると思っていなかった。
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