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18婚約者~レオナルドside⑨
「今も覚えてる」
過去を思い出しながら冷めた紅茶を飲む私は後味が少し苦いと感じた。
「お兄様の初恋でしたものね」
「言うな…」
「その後、お姉様は役立たずの口先だけので阿呆共に責任を問われて退学になりましたわね」
「エリザベート…」
庇う気はない。
あの騒動の後に負傷したリネットは役立たずの出来損ないと中傷され、魔物の襲撃から領地を守れなかったことで学園まで追放になった。
結界が破られたのは、領地に穢れが集まっていたからだ。
そもそも国の結界すべては結界師が管理しているわけではない。
女神の結界が敷かれる王都を中心として多くの魔導士が延長戦で結界を敷き、契約している精霊が結界の力を強めている。
領地の結界が崩れたのはその地精霊が契約者との心が離れている所為だ。
「第一、他所の領地の結界師が善意で手助けしてくださったのに責任を取れと慰謝料を請求し学園は退学処分だなんてどういう神経してますの」
「ああ、彼らは感謝されて当然だと言うのに」
「私納得いきませんの。嫌われ魔導士だなんて不名誉なこと。最弱の魔導士の二つ名も許せません」
国のお荷物。
いなくてもいい存在だと罵倒することも許せなかった。
「父上が切れる寸前だった」
「ええ、お父様の友人と言えばコロリと態度を変えながらも責任は擦り付けましたわね」
大規模な事件だった。
防ぐこともできたのに領主は責任を取る気はなく、学園側もリネットに責任を押し付けた。
「おかしいだろ…結界師だろうと相手は子供だぞ」
学園内にはそれなりの魔力治る魔術師もいる。
魔法使いもいたのに何もしなかったしできなかったんだ。
「魔物から生徒を守る何所からオロオロしただけ。どっちが役立たずなのでしょうね?」
この世は不公平なことばかりだ。
善良な人間が損をして他人を踏みつける人間が得をしている。
「私は悔しい…今も変わらない」
「私もですわ。屑男をボコボコにすることしかできません」
「それは止めろ」
やり方をもう少し考えて欲しいものだ。
愚昧は社交界で完璧な令嬢だと思われているが父同様で理性的とは言い難い。
まぁ時と場合によっては頭を使うが、知能的ではない。
「私はあの日の事を一生忘れません」
あの時の事。
それはリネットがエリザベートに結界を敷いた時のことだろう。
「加護を拒否している私にお姉様は手を握り、大丈夫だと言ってくださったのです」
「ああ…」
「私、怖かったんです」
加護を受け入れきれないでいた所為で体が壊れそうだった。
大きすぎる力に恐怖を抱くのは普通のことだが、周りは弱いと言う。
大きすぎる加護を受けたことがない者は分からないのだろう。
「お姉様が苦しみを取り除いてくださいました。女神の干渉を受けて苦しかったでしょうに…痛かったでしょうに」
杖が砕ける程の威力だ。
体全身にも痛みが走っただろう。
その所為でほとんどの魔力を失ってしまった。
エリザベートを救う対価として。
「当然の役目だと。できて当然だと言う馬鹿は多いですわ」
「ああ…」
「できもしない癖に。お姉様がその後社交界で笑いものにされ、魔術師失格のレッテルを貼られ、死にぞこないとまで言われました…虐めもありました」
理不尽な扱いを受け、生きていることが罪なような言われ方。
許せなかった。
なのに私は何もできずにいた。
何を言っても他人は聞いてくれない。
同情しているのだと、憐れんでいるのだと勘違いされ。
私が彼女を庇えば悪く言われて、何もできなかったあの頃は自分を恨んだものだ。
けれど俺が思う以上にリネットは強かった。
退学になったことも受け入れ、修行の為に領地に戻り魔力が無くても前向きに生きていた。
その強さに私は…
恋をしたんだ。
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