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23警戒
基本、公爵家の侍女さんは理性的だった。
完璧な人間はいないけど、感情を表に出さないように教育を受けている。
感情を露にした侍女はまだ若いと言えど、辺境貴族で父君は名の知れた騎士だ。
いくら私を慮ってくれたとしてもあそこまで感情を爆発させることに違和感を感じるし、先ほど治療をしたときに干渉魔術を受けた。
精神治療系魔術を使う時に手に電流を感じた。
それは、私の魔術を誰かが邪魔しようとしたと言えるだろう。
公爵家筆頭のベルシュタイン家を良く思わない者は多い。
出る杭は打つべしと言うように大貴族であり、王族も礼を尽くす家柄故に目障りだと考える者は存在する。
貴族至上主義の家柄は他国と活発に貿易をすることを良しとしない。
特に女性後進国に援助すておられる公爵夫人を良く思わない者は公爵家の権威を失脚させたいのだろう。
いや、私がそんなことを考えるべきではない。
憶測で物を言うのは危険だし、今すべきことではない。
「少し、喉が渇いたわね」
「お茶の用意を…」
「私の部屋にハーブがあったから。それでお茶にしましょう」
私の荷物は既にこのお邸に運ばれている。
部屋には沢山の薬草や茶葉が保存しているので、癒し効果のあるハーブティーでお茶を用意しよう。
「少し動きたいの」
「リネット様…」
「このままでは私は本当に体が動かなくなるわ」
「承知しました」
実際問題、筋力の衰えを考える。
侍女さん達は私の体を心配しているからこそもう少しゆっくりして欲しいと思ったのだけど。
恐らくだけど。
彼女達からすれば回復力の速さに心配しているのだろう。
通常はもっと時間がかかるのだ。
二週間も意識不明で最悪の事態を想定していたのなら不安もあるだろう。
外に出ることを止めたのはは邸の外は私にとって無法務地帯の危険な場所。
レオナルド様もシシィ様が不在だからこそ清い過ぎている。
「庭園で薔薇も欲しいわ」
「でしたら私が…」
誰が聞いているか分からない。
だから私はこっそり耳打ちする。
「薔薇を見たいの」
「承知しました」
三人の侍女の中でリーダ的存在の彼女に言えば表情を変えずに頷いてくれた。
公爵家の薔薇には特別な結界を敷いている。
十年前に私がシシィ様への贈り物に薔薇の苗を送った。
薔薇は女神の象徴でもある。
同時に身を守る効果もあるのだから。
その薔薇を見たいということは邸内の安全を確認することになる。
ただし、二人の侍女には伝えない。
確信がないし、余計な心配をかけたくない。
私が治癒した侍女は恐らく外で穢れを受けた。
精神干渉系の魔術にしては随分と荒い。
洗脳と、黒魔術が少し混ざったような感じだけど、かなり穴だらけの魔術だ。
「私が庭園に出ている間にお菓子をお願いね」
「はい。最高のスコーンを準備いたします!」
これで少し時間を稼げる。
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