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24薔薇園
ベルシュタイン家には大きな庭園がある。
表向きは美しい庭園に見えるけど、表向きはだ。
身分が高ければ命の危険性は高く、大きな加護を受けていれば猶のことだ。
その為常に身を守る為に周りを警戒しなくてはならないが、警戒するのは人だけではない。
人の目を盗んで使い魔を飛ばしたり、呪いをかけようと考える貴族は多い。
その為邸には結界を敷く必要がある。
ただし、誰もかれも疑うわけにはいかないので小さな結界を張り巡らせている。
結界魔術とは様々な方法があり、魔法使いなどは精霊を使ったり魔法陣を描いたりなどするけど。
白の魔導士の一族特有の結界魔術はかなり古い。
直接魔術を使うと言うよりも自身の魔力を込めた花の苗を庭に植えて結界を作る。
苗に魔力を込めて、花が開くまで育てることで結界も強化できる。
かなり面倒な作業で、宮廷魔導士達からは馬鹿にされているけど、結界を長期間持続させるにはこれが一番効率的だ。
どんな強大な魔力を持つ魔法使いでも長期間の結界の維持は困難だ。
国全体の結界を強固にすることは不可能に近いからこそ定期的に結界を張りなおす必要がある。
ならば小さな結界を作り、結界を成長させればいい。
私の父が考えたのは花を結界にしてその結界を成長させる術式だ。
庭園の薔薇は公爵家の侵入者を阻む存在として今日まで重宝されていたのだから。
「リネット様?」
「止まって」
庭園に入り、私は薔薇の香りに違和感を感じる。
「甘ったるい香りがする…薔薇の香気じゃない」
「わずかに…」
私が育てた薔薇じゃないことに気づく。
違う花が植え付けられたとしても、こんな甘ったるい香りのする花はないはずだ。
シシィ様は甘すぎる香りは好まない。
むしろ柑橘系のような香りを好んでおられる。
「あったわ…これね」
「黒い百合?」
一凛だけ咲く黒い百合。
その百合が周りの薔薇を枯らしてしまっている。
「この庭園の薔薇の名前はエリザベート…シシィ様自身です」
「その薔薇を汚すなど!」
杞憂であればと願ったけど。
公爵家を憎む誰かがエリザベート様を呪おうと考えたのか。
それともレオナルド様?
これだけでは分からないし何とも言えない。
「いかがいたしますか」
「勿論」
この黒い百合をこのままにできない。
「一瞬で色が…」
「百合に罪はありません」
結界魔術と治癒魔術を使って色を抜くことで、穢れを浄化できる。
「花好きの彼女はこの黒い百合の穢れに当たったのでしょう」
穢れとは負の感情を膨れ上がらせる。
私が受けた仕打ちが耐えられなかったのだろう。
「ジルは真面目で一途です」
「ええ、穢れを受けたのは彼女が純真だったから」
穢れは純真な心を持つ人間を好み、負の感情を受けやすい。
「微々たる侵入ですが…」
「承知いたしました」
薔薇に外から結界魔術を被せて私は薔薇園を後にした。
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