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25幸せの味
薔薇を手折り、邸に戻る。
公爵家の邸にはティールームが存在する。
お茶好きな公爵夫人の為に公爵様が職人に作らせたのだ。
私もお茶が好きであることから、邸の中に喫茶があるようだ。
趣味も派手さよりもレトロな感じだ。
白を統一させながらも展示されているティーカップは国宝級の貴重な品だ。
焼き上がりのスコーンの香りがする。
「お待たせしました」
「新作ね」
「はい。本日のお茶に合わせました」
上流階級ではアフタヌーンティーセットとして出され、あくまでケーキを引き立てると言われているけど、私はケーキよりもスコーンが好きだ。
「貴女の焼くスコーンは世界一だもの」
「光栄でございます」
侍女のメープルは給仕係の責任者でもある。
実家のクロテッド領地では甘いお菓子なんて食べられない。
王都で当たり前のように食されているパン。
特に宮廷貴族が食べるパンは一等小麦粉を使った高級な小麦粉だ。
対するクロテッドでは上質な小麦粉は多く収穫できない。
できたとしてもすべて王都に取り上げられる。
そんな中作られたのがスコーンだ。
貴族達が食べるスコーンはクッキー生地であるが、クロテッド領地のスコーンはパン生地のスコーン。
言うなれば二つに割れたスコーンだ。
形はシンプルで最古のスコーンと呼ばれているのだけど、飾り気はないが外はこんがりカリッとした触感で中身はふわっとしたもので私の大好物だった。
砂糖は入っておらずお菓子を作るよりも低コスト。
伝統的なスコーンは砂糖が入っていないので体にも良いしお腹も膨れる。
「美味しい…」
幼い頃から私は両親と一緒に食べるスコーンが大好きだった。
この味は私にとって家族との思い出の味だった。
「こんなに美味しいスコーンは他では食べられない」
「ありがとうございます」
お世辞ではなく本当に。
甘いクッキーやケーキよりも私はスコーンが好きだ。
「王都のお茶会ではこんな美味しいスコーンは出てこないわ」
「リネット様…」
「もしお店があったら絶対毎日通うわ」
お世辞じゃなくて本心だ。
王都のスコーンは美味しいのだけど胃もたれがする。
でもメープルのスコーンは飽きないのだ。
「王都では私のスコーンは…」
「先入観よ。食べたことがないからだ」
思い込みとは恐ろしい。
本当は美味しいものでも不味いと思えば不味いのだから。
「私はリネット様に美味しいと言っていただけるだけで十分でございます」
「ダメよ。スコーンに失礼だわ」
美味しい食べ物は多くの人に食べて貰ってこそだ。
独り占めは良くない。
「幸せは分け合うものよ」
一人だけでなく多くの人と幸せを分け合えばその幸せはもっと大きくなるのだから。
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