乙女ゲームの悪役令嬢の兄の婚約者に転生しましたが傷物になったので退場を希望します!

ユウ

文字の大きさ
30 / 219

28侍女の敬愛~メープルside③




体に走る悪寒。
忘れたと思っていたあの感覚。


「何だ!」

「地面が揺れる…」


――怖い!
忘れることなどできなかった。

五年前の恐怖が消えない。


あの時と同じで。


「大変だ!ブラックケンタウロスだ!」

「暴走している!」

「逃げろ!」


やだ…
逃げないといけないのに足が動かない。


あの時と同じだった。
逃げることも敵わず死を待つだけ。


「えっ…」


痛みが来ることはなかった。
私に襲い掛かるはずのブラックケンタウロスは閉じ込められていた。



「お痛が過ぎるわね。あまり騒ぐのは止めようか」


小さな結界の中に閉じ込められたブラックケンタウロス。


すごい!
詠唱も無しに結界を出すなんて。


あの時と同じだった。
邪竜に襲われそうになった時も詠唱無しで結界を敷いて私達を守ってくださった。



まるで奇跡の御業だった。


安堵するのもつかの間。
被害に合った人達は魔女様に向かってあろうことか無礼極まりない態度を取った。



「おい!何やってんだ!」

「被害が出る前に動けよ!」

「店が壊れたじゃねぇか!この役立たずが!」



感謝の言葉を述べるよりも罵倒を浴びせ、物を投げだす。


「こうなる前に対応しろよ!」

「何のための結界師だ!」

「アンタの所為で店が!」


何を言っているの?
魔物が暴走したのは魔女様の所為じゃない。


それに、魔女様はどう見ても宮廷魔導士ではない。
警備責任者も腰を抜かして何も出いなかった癖に、何でこんな。


「困りますよ。もっとちゃんとしてくれないと」

「これだから戦えない魔導士が…魔導士の名を返上すればいいものを」


周りは魔女様を責め立てる中、ようやく宮廷魔導士が到着した。



「この騒ぎは…」


「魔物が暴走したようで…」

「そんなことは聞いていません。この騒ぎを起こしたのは貴女ですか。本当に迷惑な存在ですね」



何で…


遅れて来たくせに!
何もしなかった癖に何でよ!



泣きそうになる私は魔女様と視線が合ったが、口元に人差し指を当てられた。


まるで何も言わないでというように。



魔女様は責められて罵倒されても甘んじていらした。





何も言えない私は悔しくて仕方なかった。


後日、祭りで魔物が暴走した事件は宮廷魔導士の活躍とその場で店を出していた人達の活躍でけが人は出なかったと新聞に載っていた。



「酷い…酷すぎる!」

新聞を破り床に叩きつける。


「何が宮廷魔導士よ!」


魔女様の手柄を奪って、のうのうとするのが許せなかった。


けれど、私が訴えても無駄だと言うことが分かっていた。

「メープル…お前に手紙が来ているぞ」

「手紙なんて…」

「何でも屋台でお前が出店したスコーンを買ってくれた人だとか」

「見せて!」


白い魔女様だ!
あの屋台で私のスコーンを買ってくださったのは一人だもの。



手紙にはスコーンが美味しかったことが書かれていた。
同時にあの事件で嫌な思いをさせてしまったお詫びが丁寧に書かれていた。


「メープル…」


なんてお優しい方なのかしら。


「私は決めたわ…」


辺境地の貴族の娘として。
白い魔女様にお仕えしたいと心から願った。


私の命を救っていただき、心をも救ってくださった方。


国も、王族も信用できない。

けれどあの方を信じたいと思ったのだった。


感想 116

あなたにおすすめの小説

【完結】引きこもりが異世界でお飾りの妻になったら「愛する事はない」と言った夫が溺愛してきて鬱陶しい。

千紫万紅
恋愛
男爵令嬢アイリスは15歳の若さで冷徹公爵と噂される男のお飾りの妻になり公爵家の領地に軟禁同然の生活を強いられる事になった。 だがその3年後、冷徹公爵ラファエルに突然王都に呼び出されたアイリスは「女性として愛するつもりは無いと」言っていた冷徹公爵に、「君とはこれから愛し合う夫婦になりたいと」宣言されて。 いやでも、貴方……美人な平民の恋人いませんでしたっけ……? と、お飾りの妻生活を謳歌していた 引きこもり はとても嫌そうな顔をした。

義妹に婚約者を譲りました。貧乏伯爵に嫁いだら、溺愛と唐揚げが止まりません

夢窓(ゆめまど)
恋愛
「お姉さまの婚約者が、欲しくなっちゃって」 そう言って、義妹は私から婚約者を奪っていった。 代わりに与えられたのは、“貧乏で無口な鉄面皮伯爵”。 世間は笑った。けれど、私は知っている。 ――この人こそが、誰よりも強く、優しく、私を守る人、 ざまぁ逆転から始まる、最強の令嬢ごはん婚! 鉄面皮伯爵様の溺愛は、もう止まらない……!

【完結】身代わりに病弱だった令嬢が隣国の冷酷王子と政略結婚したら、薬師の知識が役に立ちました。

朝日みらい
恋愛
リリスは内気な性格の貴族令嬢。幼い頃に患った大病の影響で、薬師顔負けの知識を持ち、自ら薬を調合する日々を送っている。家族の愛情を一身に受ける妹セシリアとは対照的に、彼女は控えめで存在感が薄い。 ある日、リリスは両親から突然「妹の代わりに隣国の王子と政略結婚をするように」と命じられる。結婚相手であるエドアルド王子は、かつて幼馴染でありながら、今では冷たく距離を置かれる存在。リリスは幼い頃から密かにエドアルドに憧れていたが、病弱だった過去もあって自分に自信が持てず、彼の真意がわからないまま結婚の日を迎えてしまい――

行き遅れのお節介令嬢、氷の公爵様と結婚したら三人娘の母になりました

鳥柄ささみ
恋愛
お節介焼きで困っている人を放っておけないシアは、数多のご令嬢達から人気の令嬢だ。毎日ファンレターが届き、社交界に出れば令嬢に取り囲まれるほどである。 けれど、それに反比例するように男性からの人気はなく、二十七だというのに嫁の貰い手もないため、毎日母から小言をもらっていた。 そんなある日のこと、突然公爵家から縁談の話が。 シアは公爵家がなぜ自分に縁談など持ち掛けるのかと訝しく思いつつ話を受けると、なんと公爵の後妻として三人の娘の母代わりになれと言われる。 困惑するも、自分へ縁談を持ちかけた理由を聞いて、お節介なシアは嫁ぐこと決めたのだった。 夫になるレオナルドはイケメンなのに無表情で高圧的。三人の娘も二女のアンナを除いて長女のセレナも三女のフィオナもとても反抗的。 そんな中でもお節介パワーを発揮して、前向きに奮闘するシアの物語。 ※他投稿サイトにも掲載中

【完結】子爵令嬢の秘密

りまり
恋愛
私は記憶があるまま転生しました。 転生先は子爵令嬢です。 魔力もそこそこありますので記憶をもとに頑張りたいです。

ハズレ嫁は最強の天才公爵様と再婚しました。

光子
恋愛
ーーー両親の愛情は、全て、可愛い妹の物だった。 昔から、私のモノは、妹が欲しがれば、全て妹のモノになった。お菓子も、玩具も、友人も、恋人も、何もかも。 逆らえば、頬を叩かれ、食事を取り上げられ、何日も部屋に閉じ込められる。 でも、私は不幸じゃなかった。 私には、幼馴染である、カインがいたから。同じ伯爵爵位を持つ、私の大好きな幼馴染、《カイン=マルクス》。彼だけは、いつも私の傍にいてくれた。 彼からのプロポーズを受けた時は、本当に嬉しかった。私を、あの家から救い出してくれたと思った。 私は貴方と結婚出来て、本当に幸せだったーーー 例え、私に子供が出来ず、義母からハズレ嫁と罵られようとも、義父から、マルクス伯爵家の事業全般を丸投げされようとも、私は、貴方さえいてくれれば、それで幸せだったのにーーー。 「《ルエル》お姉様、ごめんなさぁい。私、カイン様との子供を授かったんです」 「すまない、ルエル。君の事は愛しているんだ……でも、僕はマルクス伯爵家の跡取りとして、どうしても世継ぎが必要なんだ!だから、君と離婚し、僕の子供を宿してくれた《エレノア》と、再婚する!」 夫と妹から告げられたのは、地獄に叩き落とされるような、残酷な言葉だった。 カインも結局、私を裏切るのね。 エレノアは、結局、私から全てを奪うのね。 それなら、もういいわ。全部、要らない。 絶対に許さないわ。 私が味わった苦しみを、悲しみを、怒りを、全部返さないと気がすまないーー! 覚悟していてね? 私は、絶対に貴方達を許さないから。 「私、貴方と離婚出来て、幸せよ。 私、あんな男の子供を産まなくて、幸せよ。 ざまぁみろ」 不定期更新。 この世界は私の考えた世界の話です。設定ゆるゆるです。よろしくお願いします。

編み物好き地味令嬢はお荷物として幼女化されましたが、えっ?これ魔法陣なんですか?

灯息めてら
恋愛
編み物しか芸がないと言われた地味令嬢ニニィアネは、家族から冷遇された挙句、幼女化されて魔族の公爵に売り飛ばされてしまう。 しかし、彼女の編み物が複雑な魔法陣だと発見した公爵によって、ニニィアネの生活は一変する。しかもなんだか……溺愛されてる!?

彼は亡国の令嬢を愛せない

黒猫子猫
恋愛
セシリアの祖国が滅んだ。もはや妻としておく価値もないと、夫から離縁を言い渡されたセシリアは、五年ぶりに祖国の地を踏もうとしている。その先に待つのは、敵国による処刑だ。夫に愛されることも、子を産むことも、祖国で生きることもできなかったセシリアの願いはたった一つ。長年傍に仕えてくれていた人々を守る事だ。その願いは、一人の男の手によって叶えられた。 ただ、男が見返りに求めてきたものは、セシリアの想像をはるかに超えるものだった。 ※同一世界観の関連作がありますが、これのみで読めます。本シリーズ初の長編作品です。 ※ヒーローはスパダリ時々ポンコツです。口も悪いです。