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閑話2緊急事態
しおりを挟む誰もが口を閉じる。
リシウスの口調は軽いが空気を悪化させるには十分だった。
「あげくの愚弟はリネット姫に国外対違法を言い渡したそうだ」
「「「は?」」」
これは初耳だった。
事件現場にいた者でなければ知りえないことだが、報告には上がって来ていない。
「どういうことでしょうか」
「どうもこうもない。愚弟は人違いと知った後に謝罪もなく意識不明の彼女に国外追放を言い渡したそうだ。重体の令嬢に死ねと言うようなものだ」
「なんと…」
「まぁ、以前から白の魔女殿に敵地に行かせたり、魔力が使えな領地に放り込もうとした悪徳貴族もいたからな」
ちらりと視線を向ければバツの悪そうな表情をする者も少なくなかった。
「守るだけ守ってもらってこれはないだろ。故に彼女の結界師の任を解くことになった」
「なっ…何を」
「別に問題ないだろ?一人魔術師がいない…いや、彼女は既に魔術師でもないか?最弱の魔導士が魔術師を名乗ることすら無礼らしいからな」
笑いながら言うも、言葉には棘がある。
「そうだ。結界ならば例の生徒に一任すればいい」
「例の…とは」
「愚弟が骨抜きになっている令嬢だ。聞けば光の魔力の保持者と聞く」
この度の元凶である人物だ。
学園内でも素晴らしい魔力を持つと評価され、人望も厚く信者もいる程で聖女様と崇められている。
「大変優秀な貴殿のご子息も聖騎士のスキルを持っているのだろう?」
「えっ…はい」
「ならば、その令嬢と貴殿のご子息と愚弟に結界を敷かせ、尚且つ暴走する魔物を大人しくさせよ」
あくまで魔物は殺さず生かし、森に返せと命じられぞっとする一同。
「殿下、何故…」
「以前、王都内でブラックケンタロウスが暴走した件を覚えているか」
「はい…」
王都内で行われた女神の祭りでのことだった。
「魔物の中には群れで動くこともある。無暗に殺してしまえば今度は群れで襲い掛かる可能性もある。故に暴走を止めて森に返す方が被害も少ないだろ」
言っていることは分かるが、やれと言われて簡単にできることではない。
「しかし殿下」
「当時はまだ学生で12歳だったリネット姫は一人でされた。貴殿の子息はもう成人している年齢だ…できないわけはないだろう?」
「あっ…いえ」
しどろもどろになり何も言えなくなる。
簡単そうに見えるが、かなり難しいことだった。
魔物を滅するのは新人魔術師でもできなくはない。
だが、暴走を止めて大人しくさせた後に森に帰せす行為は上級テイマーでも難しいのだ。
「一人の幼き令嬢ができたのだ。そなたたちなら簡単に完璧に行えるであろう?王都内の結界も完璧に張りなおせよう?」
「もっ…もちろんです!」
引く引けなくなった彼らは断れるはずもない。
「では、この度を思ってリネット姫の任を解くこととする」
リシウスの宣言により、リネットは正式に結界師としての役目を解任ということになった。
それがきっかけで宮廷師団が崩壊するきっかけになるとはこの時貴族達が知る由もなかった。
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