乙女ゲームの悪役令嬢の兄の婚約者に転生しましたが傷物になったので退場を希望します!

ユウ

文字の大きさ
56 / 219

52本当の天才~レオナルドside②






リーシュフェル帝国に到着した後も、ありえないことは多かった。
正規ルートではないとはいえ、港の周りに警備隊が巡回しているはずだったがタイミングよく見つけることもなかった。


だがタイミングの問題ではなかった。

「旦那様、港の周りで体調不良で倒れる者が増えているとか」

「人為的か」

「正確には植物の魔物によるもので」

「あー…」

森の中ならばまだしも人が多い港では植物の魔物は無差別に人を襲うことはないはずだ。


「被害にあったのはギルド…他に警備隊などです」

絶対に偶然じゃないだろ。
ピンポイントで狙われているということか。


「旦那様、言いたくはありませんが」

「分かっている」


港にある花屋を見て帝国内の豊穣の加護がほとんど行き届いていないことに気づく。


セレスティア王国の聖花はリネットが育てたと言ってもいい。
特にベルシュタイン家で生産している薔薇や百合などは観賞用だけでなく結界の元となっている。

瑞々しさも良く美しさも申し分ない。
対する帝国の花々は見た目が悪く、形も悪い。


魔法の国と言えど、すべてに行き渡ることができないと思い知った。


レストランに至ってもそうだった。
食文化の進みが悪いのだと思い知った。


外装は悪くないレストランだが、食事は散々なものだった。
見た目こそはいいものの味が酷く何を食べたか分からないようだったが、周りの客は普通に食事をしている。


幼少期にもこの店に入り食事をしたがあの時は食に対する関心はなかった。
まだそれほど加護の影響を受ける前だから完全に味覚障害になっているわけではないかった。


味が分かっていても、私はまずいと思わなかった。



だがあの時。
幼い頃にリネットに渡されたポーションの味。


美味しいと思ったんだ。
それ以降、素朴なお菓子を食べさせてもらった時の味はしっかり覚えている。



私はあの日からずっと美味しいものを食べていたんだな。


リィデン学園では寮生活であったが、リネットが作ってくれた食事を食べて来た。
卒業後も、リネットの実家の肉や魚を食べて、ベルシュタイン家に卸してもらうようになって私の食生活は良かった。


だから気づけなかったんだ。


リネット自身の才能に。
白の魔導士としての才だけでなく彼女自身の才能に。


「とりあえず口直し、口直し」


レストランで食べた気がしなかったのか、何所からか空間魔術を使ってバスケットを取り出し出来立てのサンドイッチを取り出す。


「ありえない…」

「言うなレナ」

言いたいことは分かるぞレナ。
通常どんなに魔力の高い種族でもアイテムボックスは容量の広さは無限にできても、出来立てを取り出すことはできない。

永久保存するにはエルフ並みの魔力が必要になるのに対し。

「あっ…冷たい方がいいから冷やさなきゃ」

「温度を保つだけでなく…」


聞けば療養中に空間魔術を使って温度調整ができないかと考えたそうだが、やろうと思ってできるものじゃない。


「短期間でこんな…」

「恐ろしいですわ」

本当の天才というのはリネットのような人を言うのだろう。

同時に真の天才魔導士は人外に愛される。

その意味を改めて思い知ることになる。


「大変です旦那様」

「今度は何だ…」


そう、私などは少し優秀なだけの凡人だ。
リネットは本当の天才で、私の想像の上を行くのだから。



感想 116

あなたにおすすめの小説

【完結】引きこもりが異世界でお飾りの妻になったら「愛する事はない」と言った夫が溺愛してきて鬱陶しい。

千紫万紅
恋愛
男爵令嬢アイリスは15歳の若さで冷徹公爵と噂される男のお飾りの妻になり公爵家の領地に軟禁同然の生活を強いられる事になった。 だがその3年後、冷徹公爵ラファエルに突然王都に呼び出されたアイリスは「女性として愛するつもりは無いと」言っていた冷徹公爵に、「君とはこれから愛し合う夫婦になりたいと」宣言されて。 いやでも、貴方……美人な平民の恋人いませんでしたっけ……? と、お飾りの妻生活を謳歌していた 引きこもり はとても嫌そうな顔をした。

義妹に婚約者を譲りました。貧乏伯爵に嫁いだら、溺愛と唐揚げが止まりません

夢窓(ゆめまど)
恋愛
「お姉さまの婚約者が、欲しくなっちゃって」 そう言って、義妹は私から婚約者を奪っていった。 代わりに与えられたのは、“貧乏で無口な鉄面皮伯爵”。 世間は笑った。けれど、私は知っている。 ――この人こそが、誰よりも強く、優しく、私を守る人、 ざまぁ逆転から始まる、最強の令嬢ごはん婚! 鉄面皮伯爵様の溺愛は、もう止まらない……!

【完結】身代わりに病弱だった令嬢が隣国の冷酷王子と政略結婚したら、薬師の知識が役に立ちました。

朝日みらい
恋愛
リリスは内気な性格の貴族令嬢。幼い頃に患った大病の影響で、薬師顔負けの知識を持ち、自ら薬を調合する日々を送っている。家族の愛情を一身に受ける妹セシリアとは対照的に、彼女は控えめで存在感が薄い。 ある日、リリスは両親から突然「妹の代わりに隣国の王子と政略結婚をするように」と命じられる。結婚相手であるエドアルド王子は、かつて幼馴染でありながら、今では冷たく距離を置かれる存在。リリスは幼い頃から密かにエドアルドに憧れていたが、病弱だった過去もあって自分に自信が持てず、彼の真意がわからないまま結婚の日を迎えてしまい――

行き遅れのお節介令嬢、氷の公爵様と結婚したら三人娘の母になりました

鳥柄ささみ
恋愛
お節介焼きで困っている人を放っておけないシアは、数多のご令嬢達から人気の令嬢だ。毎日ファンレターが届き、社交界に出れば令嬢に取り囲まれるほどである。 けれど、それに反比例するように男性からの人気はなく、二十七だというのに嫁の貰い手もないため、毎日母から小言をもらっていた。 そんなある日のこと、突然公爵家から縁談の話が。 シアは公爵家がなぜ自分に縁談など持ち掛けるのかと訝しく思いつつ話を受けると、なんと公爵の後妻として三人の娘の母代わりになれと言われる。 困惑するも、自分へ縁談を持ちかけた理由を聞いて、お節介なシアは嫁ぐこと決めたのだった。 夫になるレオナルドはイケメンなのに無表情で高圧的。三人の娘も二女のアンナを除いて長女のセレナも三女のフィオナもとても反抗的。 そんな中でもお節介パワーを発揮して、前向きに奮闘するシアの物語。 ※他投稿サイトにも掲載中

【完結】子爵令嬢の秘密

りまり
恋愛
私は記憶があるまま転生しました。 転生先は子爵令嬢です。 魔力もそこそこありますので記憶をもとに頑張りたいです。

ハズレ嫁は最強の天才公爵様と再婚しました。

光子
恋愛
ーーー両親の愛情は、全て、可愛い妹の物だった。 昔から、私のモノは、妹が欲しがれば、全て妹のモノになった。お菓子も、玩具も、友人も、恋人も、何もかも。 逆らえば、頬を叩かれ、食事を取り上げられ、何日も部屋に閉じ込められる。 でも、私は不幸じゃなかった。 私には、幼馴染である、カインがいたから。同じ伯爵爵位を持つ、私の大好きな幼馴染、《カイン=マルクス》。彼だけは、いつも私の傍にいてくれた。 彼からのプロポーズを受けた時は、本当に嬉しかった。私を、あの家から救い出してくれたと思った。 私は貴方と結婚出来て、本当に幸せだったーーー 例え、私に子供が出来ず、義母からハズレ嫁と罵られようとも、義父から、マルクス伯爵家の事業全般を丸投げされようとも、私は、貴方さえいてくれれば、それで幸せだったのにーーー。 「《ルエル》お姉様、ごめんなさぁい。私、カイン様との子供を授かったんです」 「すまない、ルエル。君の事は愛しているんだ……でも、僕はマルクス伯爵家の跡取りとして、どうしても世継ぎが必要なんだ!だから、君と離婚し、僕の子供を宿してくれた《エレノア》と、再婚する!」 夫と妹から告げられたのは、地獄に叩き落とされるような、残酷な言葉だった。 カインも結局、私を裏切るのね。 エレノアは、結局、私から全てを奪うのね。 それなら、もういいわ。全部、要らない。 絶対に許さないわ。 私が味わった苦しみを、悲しみを、怒りを、全部返さないと気がすまないーー! 覚悟していてね? 私は、絶対に貴方達を許さないから。 「私、貴方と離婚出来て、幸せよ。 私、あんな男の子供を産まなくて、幸せよ。 ざまぁみろ」 不定期更新。 この世界は私の考えた世界の話です。設定ゆるゆるです。よろしくお願いします。

編み物好き地味令嬢はお荷物として幼女化されましたが、えっ?これ魔法陣なんですか?

灯息めてら
恋愛
編み物しか芸がないと言われた地味令嬢ニニィアネは、家族から冷遇された挙句、幼女化されて魔族の公爵に売り飛ばされてしまう。 しかし、彼女の編み物が複雑な魔法陣だと発見した公爵によって、ニニィアネの生活は一変する。しかもなんだか……溺愛されてる!?

彼は亡国の令嬢を愛せない

黒猫子猫
恋愛
セシリアの祖国が滅んだ。もはや妻としておく価値もないと、夫から離縁を言い渡されたセシリアは、五年ぶりに祖国の地を踏もうとしている。その先に待つのは、敵国による処刑だ。夫に愛されることも、子を産むことも、祖国で生きることもできなかったセシリアの願いはたった一つ。長年傍に仕えてくれていた人々を守る事だ。その願いは、一人の男の手によって叶えられた。 ただ、男が見返りに求めてきたものは、セシリアの想像をはるかに超えるものだった。 ※同一世界観の関連作がありますが、これのみで読めます。本シリーズ初の長編作品です。 ※ヒーローはスパダリ時々ポンコツです。口も悪いです。