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57帝国の叔父夫婦
リュドミーラ様はお茶好きな奥様だった。
同時にファッションリーダでもある方で、調度品はどれも素敵な品ばかりだ。
特にお好きなのは骨董品だった。
「あら?このティーカップ」
「気づきまして?」
「ヴァレット・ウッドですね」
テーブルに置かれるティーセットは王国御用達の中でも最高級の食器。
三大器のブランドの一つだ。
見た目だけ華やかなブランドと異なり機能性も良いとされる千年の歴史を持つ名品だ。
かくいう私も前世の頃から西洋食器が大好きだった。
和の食器も好きだけど。
「お茶の色が透き通るようで…」
「リネット様なら分かってくださると思いましたわ」
前世では百貨店に限らず、フリマも回りまくった。
このゲームに嵌ったきっかけは美術品の中にある西洋食器が見事だからだ。
「ですが、この食器は…毒味用ですか?」
「えっ…」
普通のティーカップではないことに気づく。
「リネット様。お解りになるのね」
何故か侯爵家の信用人の皆さんも動きが止まった。
「えっ…何かおかしいことを」
「いいえ、通常王族ぐらいにしかこのからくりには気づかないのです」
「レオ、お前の奥方は神眼の持ち主か?」
「そんなスキルはありません」
何故か侯爵様も目をぱちくりさせながらレオに尋ねた。
普通に考えればわかるだろ?
カップの中心部に銀をあしらっている。
カップの外側にもおしゃれに見える程度の銀のコーティング。
これは触れた部分に毒が付着しないか見極めるもの。
給仕係はカップの内側に手がつくような真似はしないけど、外側は触るだろう。
そして毒が外側に付着したまま、カップに手を取れば口に毒が当たる。
強力な毒ならば口に入れなくても効果はあるのだから。
その予防と同時に毒を塗られた時に指紋がくっきりわかる作りだ。
「このティーセットは帝国の中でも古く、動乱の時代に使われたもの」
「…皇族を抜けてもリュドミーラ様は命の危険があるのですか」
「残念なことにね」
爵位が上位であれば命を狙われる危険性がある。
男爵から侯爵の地位まで得た侯爵様は相当優秀な方だ。
現在は距離を保ちながら皇居から少し距離を置いていると聞く。
それは帝国内で問題が起きているということか。
いや、部外者の私がこんなことを考えるなんていけない。
「お茶がまずくなるわね。止めましょう」
「申し訳ありません」
楽しいお茶会を台無しにしてしまう所だった。
「リネット様はビスケットがお好きでしたでしょ?」
「はい」
クッキーも好きなのだけどビスケットの方が好きだった。
「実は私もなのよ。クッキーよりも大好きで」
シンプルなものから色鮮やかなビスケットが並ぶ。
「こちらは帝国でも人気なの。是非召し上がって」
「はい…」
一枚手に取ろうとした時、微かに香ったスパイスに違和感を感じた。
「私もいただこうかしら」
「まったく。君はビスケットに目がないな」
私がビスケットから僅かに感じるスパイスの香りとミルクティーの色の違和感に気づいた。
「これ、毒です」
香りも色も分かりづらいようだが、確かに毒だった。
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