73 / 219
66運命を乗り越えて~リュドミーラside②
リーシュフェル帝国の事情は知っていた。
魔法至上主義な考えが強く、科学者が少ない国でもある。
第二皇子のフェリックス殿下も火の女神の加護を持ち自身も火魔法を得意とする。
帝国の皇族、貴族は攻撃魔法を得意とするが、その一方で治癒の魔法が使えないのが難点とされる。
一部では強い攻撃魔法があれば治癒の魔法は不要だと考えられていたが、本当の意味で国の行く末を案じる方は違った。
魔法至上主義ではないフェリクス殿下は、セレンティア王国の魔術に関心があり。
魔法ではなく魔術に強い関心を持たれ、一時期留学に来られていた。
その当時、留学の滞在先となったのがベルシュタイン家だった。
病弱で学校にもいけない私を彼は元気づけ、私達は愛し合うようになった。
けれど私は長く生きられない。
相手は帝国の第二皇子で大変優秀な方だった。
時代の皇帝に望まれる方だった。
けれど…
「リュドミーラ。私の妻になって欲しい」
「でも…」
「君の体も。一族の事も聞いている。だが運命は耐えるものか?」
強いられた運命に抗うことはできない。
できるはずがないと諦めていた私に手を差し伸べてくださった。
「運命は乗り越えるものだ…私と一緒に乗り越えよう」
私はずっと諦めてしまったのだと思った。
兄はずっとベルシュタイン家の運命に抗っていたと言うのに私は何もしなかった。
運命を受け入れるなんて言って、本当は自分で何も変えようとしなかった。
弱かった私。
運命と戦い続けた兄。
だから強くなろうと思い、この方と生きる道を選んだ。
習慣も文化も違う。
貴族の婚姻は政略結婚がほとんどだった。
対する私達は恋愛結婚で国同士の利益はない。
私との婚姻はフェリックス様にとっても茨の道だった。
結婚の条件は皇族籍の除籍に、辺境地にて男爵の爵位だけが許される。
これまで第二皇子として生きて来た身としては許しがたい境遇でありながらも真実の愛を貫くと言ってくだった。
社交界にもほとんど出ることはないかもしれない。
それでも私は二人で頑張ろうと思えたのは献身的に支えてくださったフェリックス様と、婚姻を後押ししてくださった兄のご友人の温かい言葉があったからだ。
「ミラーシャ。人は運命を乗り越えられます。どうかお幸せに」
「はい。ヴィルフレッドお兄様…」
兄の親友で白の魔導士様であったヴィルフレッドお兄様。
妹のように接し治癒魔術で何度も助けてくださった。
「君が幸福でありますように」
「これは…」
「魔石だ。お守りに」
そう言って差し出されたのアメジスト色の魔石だった。
綺麗に加工されとても美しい銀細工の髪飾りに着けられていた。
「付与魔法を使ったものだ。アスクピアーナの加護がありますように」
ただ私の幸福を祈ってくださった優しい方。
私は幸せになれる。
絶対に…
こんなにも思ってくださる方がいるのだから。
「待っていてくれ。女神の運命にも負けない治癒師を育てて見せる。魔法にも負けない魔術で」
「はい…」
私のような人が大勢いる。
大きな力を得る対価の犠牲になる人を。
そんな人を救いたいとおっしゃったヴィルフレッドお兄様は白の魔導士に相応しい方だ。
そう信じることができた。
けれど、これがヴィルフレッドお兄様と最後の挨拶だった。
あなたにおすすめの小説
【完結】引きこもりが異世界でお飾りの妻になったら「愛する事はない」と言った夫が溺愛してきて鬱陶しい。
千紫万紅
恋愛
男爵令嬢アイリスは15歳の若さで冷徹公爵と噂される男のお飾りの妻になり公爵家の領地に軟禁同然の生活を強いられる事になった。
だがその3年後、冷徹公爵ラファエルに突然王都に呼び出されたアイリスは「女性として愛するつもりは無いと」言っていた冷徹公爵に、「君とはこれから愛し合う夫婦になりたいと」宣言されて。
いやでも、貴方……美人な平民の恋人いませんでしたっけ……?
と、お飾りの妻生活を謳歌していた 引きこもり はとても嫌そうな顔をした。
義妹に婚約者を譲りました。貧乏伯爵に嫁いだら、溺愛と唐揚げが止まりません
夢窓(ゆめまど)
恋愛
「お姉さまの婚約者が、欲しくなっちゃって」
そう言って、義妹は私から婚約者を奪っていった。
代わりに与えられたのは、“貧乏で無口な鉄面皮伯爵”。
世間は笑った。けれど、私は知っている。
――この人こそが、誰よりも強く、優しく、私を守る人、
ざまぁ逆転から始まる、最強の令嬢ごはん婚!
鉄面皮伯爵様の溺愛は、もう止まらない……!
【完結】身代わりに病弱だった令嬢が隣国の冷酷王子と政略結婚したら、薬師の知識が役に立ちました。
朝日みらい
恋愛
リリスは内気な性格の貴族令嬢。幼い頃に患った大病の影響で、薬師顔負けの知識を持ち、自ら薬を調合する日々を送っている。家族の愛情を一身に受ける妹セシリアとは対照的に、彼女は控えめで存在感が薄い。
ある日、リリスは両親から突然「妹の代わりに隣国の王子と政略結婚をするように」と命じられる。結婚相手であるエドアルド王子は、かつて幼馴染でありながら、今では冷たく距離を置かれる存在。リリスは幼い頃から密かにエドアルドに憧れていたが、病弱だった過去もあって自分に自信が持てず、彼の真意がわからないまま結婚の日を迎えてしまい――
行き遅れのお節介令嬢、氷の公爵様と結婚したら三人娘の母になりました
鳥柄ささみ
恋愛
お節介焼きで困っている人を放っておけないシアは、数多のご令嬢達から人気の令嬢だ。毎日ファンレターが届き、社交界に出れば令嬢に取り囲まれるほどである。
けれど、それに反比例するように男性からの人気はなく、二十七だというのに嫁の貰い手もないため、毎日母から小言をもらっていた。
そんなある日のこと、突然公爵家から縁談の話が。
シアは公爵家がなぜ自分に縁談など持ち掛けるのかと訝しく思いつつ話を受けると、なんと公爵の後妻として三人の娘の母代わりになれと言われる。
困惑するも、自分へ縁談を持ちかけた理由を聞いて、お節介なシアは嫁ぐこと決めたのだった。
夫になるレオナルドはイケメンなのに無表情で高圧的。三人の娘も二女のアンナを除いて長女のセレナも三女のフィオナもとても反抗的。
そんな中でもお節介パワーを発揮して、前向きに奮闘するシアの物語。
※他投稿サイトにも掲載中
ハズレ嫁は最強の天才公爵様と再婚しました。
光子
恋愛
ーーー両親の愛情は、全て、可愛い妹の物だった。
昔から、私のモノは、妹が欲しがれば、全て妹のモノになった。お菓子も、玩具も、友人も、恋人も、何もかも。
逆らえば、頬を叩かれ、食事を取り上げられ、何日も部屋に閉じ込められる。
でも、私は不幸じゃなかった。
私には、幼馴染である、カインがいたから。同じ伯爵爵位を持つ、私の大好きな幼馴染、《カイン=マルクス》。彼だけは、いつも私の傍にいてくれた。
彼からのプロポーズを受けた時は、本当に嬉しかった。私を、あの家から救い出してくれたと思った。
私は貴方と結婚出来て、本当に幸せだったーーー
例え、私に子供が出来ず、義母からハズレ嫁と罵られようとも、義父から、マルクス伯爵家の事業全般を丸投げされようとも、私は、貴方さえいてくれれば、それで幸せだったのにーーー。
「《ルエル》お姉様、ごめんなさぁい。私、カイン様との子供を授かったんです」
「すまない、ルエル。君の事は愛しているんだ……でも、僕はマルクス伯爵家の跡取りとして、どうしても世継ぎが必要なんだ!だから、君と離婚し、僕の子供を宿してくれた《エレノア》と、再婚する!」
夫と妹から告げられたのは、地獄に叩き落とされるような、残酷な言葉だった。
カインも結局、私を裏切るのね。
エレノアは、結局、私から全てを奪うのね。
それなら、もういいわ。全部、要らない。
絶対に許さないわ。
私が味わった苦しみを、悲しみを、怒りを、全部返さないと気がすまないーー!
覚悟していてね?
私は、絶対に貴方達を許さないから。
「私、貴方と離婚出来て、幸せよ。
私、あんな男の子供を産まなくて、幸せよ。
ざまぁみろ」
不定期更新。
この世界は私の考えた世界の話です。設定ゆるゆるです。よろしくお願いします。
編み物好き地味令嬢はお荷物として幼女化されましたが、えっ?これ魔法陣なんですか?
灯息めてら
恋愛
編み物しか芸がないと言われた地味令嬢ニニィアネは、家族から冷遇された挙句、幼女化されて魔族の公爵に売り飛ばされてしまう。
しかし、彼女の編み物が複雑な魔法陣だと発見した公爵によって、ニニィアネの生活は一変する。しかもなんだか……溺愛されてる!?
彼は亡国の令嬢を愛せない
黒猫子猫
恋愛
セシリアの祖国が滅んだ。もはや妻としておく価値もないと、夫から離縁を言い渡されたセシリアは、五年ぶりに祖国の地を踏もうとしている。その先に待つのは、敵国による処刑だ。夫に愛されることも、子を産むことも、祖国で生きることもできなかったセシリアの願いはたった一つ。長年傍に仕えてくれていた人々を守る事だ。その願いは、一人の男の手によって叶えられた。
ただ、男が見返りに求めてきたものは、セシリアの想像をはるかに超えるものだった。
※同一世界観の関連作がありますが、これのみで読めます。本シリーズ初の長編作品です。
※ヒーローはスパダリ時々ポンコツです。口も悪いです。