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77女神に弓引いた者達~フェリックスside⑤
社交界では自分よりも身分の高い貴族に声をかけることは論外。
声を荒げることすら問題になる。
「この国では、他国の勅使に対してこのような態度を取るのですかな?」
「えっ…」
私の言葉に驚いた表情をする。
何故驚くのだろうか。
「私は侯爵という地位にありますが、国の代表たる私を侮辱することは、グレゴリー様の母君は我が帝国に宣戦布告をされたと言う事でしょうか」
「何を!」
「違います!何を誤解をなさっているのですか…そんな大げさな」
大袈裟だと?
自身の発言がいかに祖国を危険に晒しているのか分からないのか。
「貴女はこの国の公爵家の人間を侮辱し、私の愛する妻を死んだと虚偽の発言をされました。過去に私の妻が呪われたと妄言をされましたね」
「えっ…」
「やはり覚えておられませんか。三年前私の妻が呪われている。女神の呪いを受けたと」
祖国に帰ることもできず、噂を流されたミラーシャが社交界でどんな扱いを受けたか。
「えっ…あー…」
「私の妻は今の健在です。そもそも女神の呪いとは何なのでしょう?」
そんな記述はない。
女神の裁きを受けた者はいるが、道から外れた者だ。
「妻は幼少期よりイシュミール正教の教えに従い、信仰心もありました。女神の怒りを買うような真似をしたことはありません。にもかかわらず何故?」
私の言葉に目を泳がす。
この程度の問いに答えることもできないのか。
「貴様!我が国の聖女を愚弄する気か!」
「聖女…とね?」
「何が言いたい」
この者は本当に学がないな。
正教皇国では他国の貴族令嬢が聖女を名乗ることに反感が強い。
その理由は聖職者の侮辱と、各国の教皇猊下を見下す行為だと考えられているか。
「貴女は教皇猊下の許可を頂き聖女を名乗っていませんよね?それは詐欺罪に値しますよ」
「え?」
「この場に厳しい正教皇国の勅使がいれば間違いなく貴女は聖女を名乗った罪で罰せられます。我が国では聖女を受け入れておりません」
「貴様!無礼な…」
私の言葉を侮辱と取ったのだろうが先に無礼を働いたのはどっちだ。
相手が王族ならば問題になるだろうが既に、廃嫡が決まっており社交界でも孤立状態にあるならば痛くもかゆくもない。
「聖女を否定する国など不要だ!母上に言いつけてやる」
ここまで来て母親頼みか。
「母君の権力に泣きつくとは情けないことですわ」
「うむ…母君に頼るとは親離れができておりませんな。自立をお勧めしますよ」
援護射撃と言わんばかりか。
義姉上と義兄の阿吽の呼吸は実に素晴らしい。
「待ってください!私は…」
「例え、貴女が聖女だと名乗られても。我が帝国は聖女を認めないとのことです」
「そんな…」
私の言葉にショックを受けているようだが、当然の事を言ったまでだ。
「何をしている!」
「リシウス!」
そこに騒ぎを聞きつけたリシウス殿下が現れ空気は更に悪くなるが知った事ではない。
ただ分かっているのは、自称聖女と元王子の立場が更に悪くなると言うことだが自業自得だろう。
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