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97ゲルツォーネ侯爵家③
セレンティア王国の守護神でもある処女女神のアリテナは神話の中でも重要な役割を担っている。
歴代の王族の中には加護を持つ者を伴侶の迎えることで国が繫栄するとも言われている。
もし女神の加護を持つ者が王族であれば、その後見人。
特に母親の親族の権力は揺るぎないものとなるだろと思っていた。
なのに…
「どうして私の子ではないの!」
側妃ヴィネラーナは当初、我が子こそが女神に祝福され加護を得ていると覆いこんでいた。
社交界では我が子は女神の化身だと言って回っていたのに今更違いますなんて言えようもない。
「私が…私が加護持ちの子を産まないと…そうじゃないと!」
「落ち着かんか」
「この状況で落ち着けられないわ!あの生意気なリシウスの毒殺に何度失敗したと思っているの!」
「騒ぐな!」
ヴィネラーナは外見こそ美しいが癇癪持ちで、傲慢な性格だった。
侯爵令嬢であることをひけらかし権力を使ってやりたい放題をしてきたが、あくまで社交界内ではの話だ。
王宮内ではそう簡単にことは進まなかった。
国王の寵愛を自分が独占しているとばかりに見せつけても王妃は、常に笑顔で一緒に喜ぶばかり。
公の場では正妃の余裕だと褒めたたえる声が強くなり。
王妃として側妃に気を使って当然と言う態度に、他国の貴賓も評価した。
その一方で、我こそは王妃だと言わんばかりのヴィネラーナの態度を良く思わない他国の貴賓は妃としての字悪の無さを指摘し、加護を持つべき母親の器がないと言われる始末だ。
「一番不愉快なのはあの出来損ない魔導士達よ!」
「忌々しい」
「ベルシュタイン家が事あるごとにあいつ等を傍に置いて…席を外している時も結界魔術を使って邪魔しなければ、子を流せたのに!」
王妃が第一王子を解任した時、ヴィネラーナは流産させるためにあの手この手を使った。
事故に見せかけ、階段から突き落とそうととしたり。
寒い場所に押し込んだりと暗躍したが、そのすべてをぶち壊したのがベルシュタイン公爵夫人のサラサーテと府リーチェ伯爵夫人のアナスタシアだった。
結界魔術と、空間魔術を使い王妃を守り。
寒暖差が激しい場所には結界の中に工夫をして温度を一定に保つだけではなく護衛としてドワーフを派遣させる等様々な手で邪魔をして来たのだ。
「出来損ないの癖に!誰にも必要とされない害虫が!」
癇癪持ちのヴィネラーナは物に当たる。
美術品をたたき割り大暴れするも、一度癇癪を起せば手が付けられないことを理解していた。
「お父様!なんとかしてください!このままじゃ…」
「まだ手はある」
「え?」
「加護持ちが生まれても不幸な事故で亡くなればいいのだ」
暴れる娘を窘めながら不敵に笑みを浮かべるゲルツォーネ侯爵は、この先邪魔となる存在を消すことに躊躇などなかった。
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