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98ゲルツォーネ侯爵④
加護を持てないならば、加護を持つ者を伴侶として迎えればいい。
ベルシュタイン家は公爵筆頭であるが、現在は王族派の勢力が弱い状況下だった。
こちらが婚約を申し入れれば、無下にはできないだろう。
「ベルシュタイン家の娘を婚約者に迎える」
「え?」
「公爵家の娘を婚約者に持てばお前の子は王太子になるのが決定だ」
「けど…」
「なぁに、婚約と言っても形だけだ。加護持ちは代々短命だ」
大きすぎる力は、時として己の身を滅ぼす。
過去に女神の加護を受けすぎて、短命だった者は少なくない。
「加護を持つ娘を伴侶に迎え、尚且つ公爵家の後ろ盾を得て第一王子を潰すのだ。その間にベルシュタインの娘もな?不幸にも加護を受けすぎて…若くして亡くなる」
「それって…」
「加護を受けすぎる以外にも寿命を短くする方法はある。女神の呪いをかける方法がな?」
過去に故意的に呪いをかける行為は禁じられている。
禁術と言われる行為だった。
「体が弱り、心を弱らせ社交界で噂を流せばいい。同時にベルシュタイン家を叩くこともできよう」
「ふふっ…いい考えだわお父様。あの生意気な女を」
二人は、その後密かに動いた。
同時に社交界にある噂をバラまいたのだ。
女神の加護を受ける者が幼い間は強すぎる力に耐え切れなくなり死んでしまう場合は、女神の加護を受けるに相応しくない。
その場合は新たな加護を受けるのだと。
女神の加護を受け入れられない者は生を持つ資格がないのだと。
加護を持ちながらも加護を受け入れられない悪しき子だとも。
案の定、その噂で社交界で陰口をたたかれるようになったエリザベートは精神的にも弱っていた。
「既に虫の息だわ。いい気味だわ…このまま死ねばいいのよ」
「その前に、公爵家の後ろ盾をしっかりと得るようにしておけ」
「ええ…でもまだ邪魔なのがいるわ」
「ああ、嫡男か」
ベルシュタイン家を完全に潰すには長男のレオナルドがいる。
「あの子供には別の呪いを植え付けてある。あれも加護を持つ身故に体が小さい…その贄の魔術を使って味覚を奪っている」
「そんなことをしないで闇魔法で病ませればいいのに」
「それでは面白くないだろう?それに妹が加護に飲まれて死ぬ姿を見せた方がいい」
幼い妹が苦しみ、加護により死ぬ様を目の当たりにすれば絶望する。
そして精神を病み、加護に耐えることもできなくなったレオナルドは死ぬとおうのが目論見だった。
立て続けに我が子を失ったベルシュタイン家は呪われていると噂が流れれば、後は脆いのだ。
「そして、傷心したベルシュタイン公爵を私の物にすれば」
「領地も財産も奪い、そして王妃は孤立するわ」
すべてが計画通りに上手く行くと思ったが、その計画は崩れてしまった。
エリザベートが加護を完全に得ることに成功したことを神官から知らされた。
同時に二人が仕組んだ呪いは跳ね返され術者が呪い返しを受けてしまったのだった。
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