乙女ゲームの悪役令嬢の兄の婚約者に転生しましたが傷物になったので退場を希望します!

ユウ

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144精霊王



人間の小さいと人外ではもはや価値観が違う。
こちらの常識は精霊にとっては非常識になるのは重々承知していたのだが。


「精霊王様」


「マリーって呼んでくださらない?主様」

「あの…」

何で主様?
どうしてこうなった!
何時そうなった!


「私、従魔契約することにしました」

「‥‥は?」


精霊が従魔契約って何?


「だって、精霊王になって五千年…そろそろ腰を据えてもいいかと思いましてね」


「いや、無理です」


「あら?私はまだまだピチピチでしてよ?国一つウィンクで沈められてよ?」


何でウィンク?
呪文とかじゃなくて?

「ああ、呪文っていうのは雰囲気を出すための演出ですわ。そんなのはいりません。人間族の中では粋がっている連中が声高らかに呪文を唱えていますが痛いですわ。ダサいですわドン引きですわね」


歴代の偉大な魔術師の努力を鼻で笑った。

でも、私も詠唱はしてなかった気がする。
攻撃魔術と異なり治癒魔術は詠唱ではなく直接患者に触れて心に語り掛ける。

そもそも詠唱している間に患者が死ぬ可能性もあるから効率的な方法を取っている。



――あれ?
そうなると詠唱って結構邪魔だったりする?


「儀礼詠唱は別ですけどね」

「はぁ…」

私が聞く前に答えてくださった。


「分からないという表情ですわね」

「はい」

「そもそも水の精霊と風の精霊と土の精霊はアスクピアーナ様の従者だったのですわ」



‥‥ああ、思考回路が停止だ。

頭が痛い。
何も考えられなくなる。


「補足しますと、私達の主でもありますの。故に末裔である方に仕えるのは当然。ですが、これまでの振る舞いを見て、御使いすべきだと判断した次第です」


「振る舞い…」


そんな振る舞いをした覚えはない。
大体私はそんな大それたことをしただろうか?


「無自覚ですか。流石あの天然無限人外誑し女神様の末裔です」

今、ものすごく失礼極まりないことを言われた気がする。


「本来ならば精霊総会で人間達の度重なる欲深き行動に嫌気がさしましてね…これを機会に人間への加護をすべて引きはがすべきだと言う案が出されました」

「えっ…」

「勿論、善人は残します。ですが、この世界の人間九割は滅ぼすべきだと思いましてね。灰色の時代に一度戻して。選ばれた人間だけを楽園に住まわせようと」


ものすごい恐ろしいことを言われた。
灰色の時代ってあれだよね?
ギリシャ神話でも出て来る鉄の時代を指している。


そんな世界で今の人間が生きている訳もない。


「ですが、貴女の熱心な祈りに心打たれた精霊王が後五百年程の猶予を与えることとなりました」

「五百年…」

「我らにとっては五百年など長い時間ではありません…ですが、その時にまたしても同じ過ちを繰り返すことは許されません」


これ以上の慈悲はない。
五百年もあれば、立て直すこともできる。

歪んだ歴史を受け入れ、次代に繋げるには十分な時間だ。

けれど、何故思い直してくれたの?

そんな私の疑問に精霊王様は穏やかに微笑んだ。


「貴女をはじめとする良き正義を貫く者がいたから」


その人が誰かなんて言うまでもない。


あのお二人であることが分かった。





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