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159大罪人の一族②
何の躊躇もなく去って行く侍女長を止めようとするも。
「お世話になりました。ああ…裏門から侵入されたら終わりですので」
最後にと言わんばかりに言い残して足早に去って行く。
「裏切者めが!忠誠は何所に行った!」
残されたゲルツォーネ侯爵は広間で独りだった。
既に数名の侍女は解雇されている。
王宮から追放された後に、八つ当たりをしたあげく解雇を言い渡したのだ。
侍女達はこれ幸いと言わんばかりに邸を出て行った。
彼女達も傍若無人な主人に嫌気がさしていた。
解雇を言い渡されるのを待っていたとのだから。
最後まで侍女長が残っていたのは、若い侍女を完全に見届ける責任があったのだ。
権力を使って理不尽な行いをされる可能性があるからだ。
「忠誠心?これまで望まない形でずっと仕えてまいりました。夫を殺され、無理やり貴女にこの身を汚され今日まで娼婦として生きてきました」
「娼婦だと…」
「ええ、娼婦です」
侍女という役職を得ていても、侍女長にとってはゲルツォーネ侯爵に忠誠心の欠片もない。
「ヴィネラーナ様は貴女に似て我儘で身の程を弁えない欲の塊です…陛下を騙し、宮廷を騙した詐欺女」
「貴様!」
「しかし悪事はいずれバレるのです。今から苦しんでください…貴方がこれまで踏みにじった人達の分まで生き地獄を味わってくださることを心から望みます。私は貴方に苦しんで惨めに生きて欲しいですわ」
「何を…」
今まで従順だと思っていた侍女長に絶句した。
その前は汚いものを見るよう目をしていたのだから。
「お前は私を…」
「口に出すのも深いです。愛する夫を殺され、無理やりこの牢獄に留められた私はいずれ貴方が地獄に落ちて欲しいと望みましたの。今日まで生きていてよかったですわ」
憎しみしかない表情。
同情心の欠片もななくゲルツォーネ侯爵は現実を受け入れられなかった。
「あの自称聖女は貴方達大罪人を裁く為にこれからも踊るでしょうね」
「待ってくれ…助けてくれ!」
「助けるわけないでしょう?悪魔のような女を聖女に祭り上げ真の救世主様をぼろ雑巾にした…それが貴方の罪です。その罪をしっかり受け入れなさいませ」
もはや追いかける力も残っておらずその場に崩れるが侍女長はそのまま去って行くだけだった。
ゲルツォーネ侯爵家は最後の侍女を失い。
邸の主人だけとなるのだった。
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