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182妖精の宮殿
殺伐としていた皇居内。
後宮で悪い空気が流れる中、使用人達は顔を合わせることなく下を向き仕事をしている。
特に雰囲気の悪いのは獅子宮だった。
何か失敗をすれば追放だけで終わらない。
使用人の入れ替えが激しく、入ったばかりの侍女や侍従達は辞めることばかり考えていた。
そんな獅子宮に仕える騎士達も護衛以外の時間は極力関わりたくなかった。
他の宮の警護に当たる騎士も同じだったが、唯一例外もある。
水晶宮の騎士団だった。
宮殿と言ってもこじんまりとしており、ほぼ騎士団が仕事をする部屋だった。
他の宮と異なり狭く、煌びやかさの欠片もなく外壁も罅だらけ。
侍女もほとんどいないと言われ別名影の宮殿と酷い言われようだったのだが…
宮殿の窓はステンドグラスでできており。
水晶がいたるところにはり巡られせられていた。
他の宮殿は宝石をあしらっていることから水晶の宮殿は貧乏くさいといわれているのだが…
新人の騎士は宮殿に入り目を奪われた。
確かに作りは古いが足元は床がガラスになっておりとても美しく、玄関から広間に行くまでの間に花と緑の小道が広がり幻想的だった。
窓は宝石のように輝き曇り一つない程に磨かれていた。
「ご苦労様です」
「はっ…」
騎士は唖然とする。
目の前には白衣に身を包む少女。
「あっ…あの、第二騎士団長に書類を」
「仰せつかっております。どうぞお入りください」
「えっ…はっ…はい」
他の宮では新人騎士は品定めのような目で見られることもある。
特に貴族出身の侍女は気位が高く礼節を重んじなければその程度の扱いを受けるのだが…
「失礼します。お客様でございます」
「ご苦労様、入ってくれ」
「かしこまりました」
ゆっくりとした所作だった。
足音を立てずに静かに歩きながらも、騎士に対して礼を尽くす所作に驚きを隠せない。
(こんな対応を受けたのは初めてだ)
一介の騎士に対してここまでの丁寧なもてなしを受けたの初めてだった。
「わざわざ届けて貰ってすまいな」
「いえっ…先日の予算に関してです!本来なら三日前に提出のはずなのに」
「獅子宮で少しいざこざがあったことは聞いている。期日は大事だが、仕方ないこともある」
人材の入れ替えに、他の宮に対する警備の予算削減でどことももめている。
皇太子殿下の宮殿をもっと豪華にすべきだと言う声に反発し他所の騎士団長同士も口論が続いており、下っ端の騎士は頭を抱えているのだ。
入って日が浅い騎士などはどうしよもなく、期日内に提出できない書類を持っていっては嫌味を言われる繰り返しだった。
「どうぞ」
「えっ…」
「喉が渇いているだろう。たしいたものはないが食べて、飲んでくれ」
テーブルに差し出されたのはお茶にお菓子だった。
本来なら見習いである騎士が口にすることもない色とりどりのお菓子だ。
(食べていいのか…こんなお菓子を!)
目の前に香るお菓子の香りに騎士は耐え切れなかった。
理性よりも食欲が先に働き食べてしまった。
それほどに飢えていたのだから。
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