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183見習い騎士の涙
お菓子を口にして涙を零す騎士に、周りは何も言わなかった。
「申し訳ありません…」
「誰も咎めはしないさ」
言葉を吐かずとも、表情を見て理解をした。
他所の宮殿の事情も、現在騎士団が荒れていることもエルフレッドは知っていたのだ。
「お茶よりもココアの方がいいですね」
「うっ…ぐずっ」
情けなさと安どで心がいっぱいだった。
「君は研修中の見習い騎士だね」
「はい…北の辺境地出身の貴族です」
「三男か?」
「はい…」
泣きながらココアを飲む騎士を見てエルフレッドは痛ましい視線を向けた。
帝国ではノブレス・オブリージュを掲げている。
貴族の家の子息は最低一人は騎士として宮廷に仕える義務がある。
元々は貴族であっても国に尽くすべきだと初代皇帝が義務付け、戦争になった時も高位貴族も戦場に向かう法律が作られたのだが、ここ数年では皇族に反旗を翻さないために人質として宮廷遣いを義務付けている。
しかも騎士とは名ばかりの下僕扱いも受けるのだ。
研修期間や新人は実家に帰ることも許されず親が危篤でも死に目に会うことも許さないと言う厳しい決まりが今年になって導入された。
また、財を持ちすぎるのを防ぐために過度な納税も増えたのだ。
皇帝陛下が寝込んでから。
騎士の少年はその所為で実家に仕送りもできず、狭い箱庭の世界で孤独な日々を過ごした。
上司の命令は絶対で、皇太子に不況を買う者は被告人だとも叩き込まれていた。
また宗教に関心を持つことも禁じられ苦しみながら過ごしていた。
そんな中、水晶宮でステンドグラスを目にして里心が芽生え、尚且つ優しくされたことで何かがプツンと切れてしまったのだ。
「家族を思い出すな。国のため以外に考えるな…親は死んだと思えと言われました」
「馬鹿げている」
「副団長…」
「こんなずさんな指導をするとは…私は部屋に家族の写真を飾りながら腹筋をしているぞ!」
自慢の上腕二頭筋を見せる。
胸には家族写真が貼られており、背中には愛娘の落書きが書かれている。
「家族を守る為に私達は戦うのだ」
「そうだ。国を守る以前に愛する者が国にいるから守る!それの何がおかしい!フンッ!」
他の騎士達も上着を脱いでマッスルポーズを取る。
実に暑苦しい光景である。
「お前達、服を着ろ。妙齢のご婦人もいるんだ!」
「私は気にしませんが」
「気にしてくれ…」
話しは少し脱線したが既に疲れ切っている騎士を休ませた後に聞き取りをした。
その結果、第三騎士団以下は既に崩壊寸前であることを聞かされるのだった。
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