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187広がる綻び
声を出せない人は多く、不満が募った先に向かうのは悪意だ。
一つ、一つが小さくとも、集まれば恐ろしい程の憎悪になりそれは瘴気となる。
瘴気とは人に負の感情を与える。
通常は攻撃的な感情になるのではなく自身を責めたりマイナスの感情を与えるが、攻撃的な性格の人間は瘴気の影響で他者に暴力を与えたる。
現在獅子宮内では身分が低い者への暴力行為が増えていると聞く。
暴行を与えた本人は指導だと言うが、パワハラもいい所だ。
幸いにも翡翠宮は使用人が極端に少ない。
水晶宮は侍女がほぼいないし、エルフレッド様の部下の方が交代制でお世話をしていたのでそこまで影響は出ていない。
現在一番問題になっているのは聖女が住まう宮だ。
侍女が日替わりで泣きながら去る者や怪我をする者にと問題が多い。
「もう真っ黒です」
げんなりした表情で報告してくれるメープル。
獅子宮の侍女達は勿論だけど、聖女の侍女も怪我をして宮から出て来るとか。
「私は平和ですね」
翡翠宮担当のジルに至っては平和だという。
「第二皇子殿下は女嫌いと言われておりますが、その点を省けば悪くない…いいえ、むしろ良い方です」
「良いとは?」
眉を顰めるレナ。
情報がまるでない第二皇子殿下はどのよう方なのか。
「第二皇子殿下は口数が少ない方です…ですが、会話がないわけではありません」
「差別的な事はないの?」
「むしろ、私のような者に対して親切です…というか、小さい子供のように扱われまして」
「ふむ…」
私は腕を組み思案した。
女嫌いという噂は本当かもしれない。
でも、人嫌いというのは違う気がするのだ。
「社交界が嫌いなのかもしれません。レナ様が来た時は即逃げてましたし…大人の女性が怖い人は幼少期にトラウマがありますし」
「それは私に対する嫌味かしら?」
「はははっ…確かにレナ様は鬼嫁の代表ですけど」
「ジル!」
口は災いの元。
私も他人の事を強く言えないけど、ジルも学んだ方がいい。
けれど収穫はあった気がする。
噂で聞く程第二皇子殿下は愚かではない。
むしろ聡明である可能性が高いことと、身分で判断しないのがいい証拠だ。
ジルは天真爛漫であるが鋭い感性を持つ。
幼少期から騎士の教育を受けてきたこともあり大人の男性を見る目は確かだ。
「第二皇子殿下は白でよいかと」
「メープル?」
「ジルの感性は間違いありません」
レナは優秀であるけど貴族社会に慣れ過ぎて、人を見る目がジル程素直じゃない。
理性的であるのは武器だけど時としてジルの目利きは天性のものだとも言われているのだから。
「リネット様、あの女は何がしたいのでしょうか」
「そこね…」
レナの言葉に私も困り果てていた。
シャルロットは帝国に来て何をしたいのか。
もし、彼女が私と同じ転生者であると仮定するとして、物語通り王子様と結ばれたいというだけならば引っ掻き回し過ぎだ。
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