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27.子供の頃の夢
しおりを挟む幼い頃、私は官僚になりたかった。
それも中央の文官になって出世して沢山の人を幸せにしたかった。
今でこそ国は安定しているけど、国の外は停戦と開戦の繰り返し。
母が聖女として命がけで戦場を走り回ったように私も沢山の人の笑顔を守りたかった。
母のような特別な治癒力は受け継がなかった。
できるのは魔術師でも簡単にできる治癒と結界を敷く事だけ。
だから私は文官になって政治に関わりたかった。
でも、この国では官僚補佐になれても文官になる事は難しい。
知った時は泣いたけど、でもチェイス侯爵家に嫁いだ後には学問を生かして多くの人を救おうと心に誓った。
だけど、チェイス侯爵も夫人も政治なんて全く興味がなく、逆に罵倒された。
くだらない事を考えるな。
女が政治を口にすることは野蛮だと。
こっそり勉強する事も許されなかった。
女が学問をすることははしたない。
ずっと拒否をされて来たけど。
「ジゼル様、貴女は我が国の大臣にも負けぬ才をお持ちです。感服いたしました」
「そんな…」
アクアパレス王国の人は私を否定しなかった。
「私など…」
「いいえ、これ程の教養を身に着けるのは長年の努力が必要だったはずです。努力は嘘をつきませんよ」
宰相閣下の言葉は私の胸に染みた。
私の時間は無駄ではなかったと証明してくださったようです。
「ピッコロ、何時まで握っているつもりだ」
「おや?嫉妬ですか?随分と心が狭いですね、坊ちゃま」
「誰が坊ちゃまだ!」
何故に?
一国の王太子殿下が坊ちゃまって。
「ジゼル様、ピッコロ様とウィルフレッド殿下は幼馴染でございます。旧知の仲です」
「まぁ、そうだったのですか」
若いと思ったけど、もしかして私が思うよりもずっと若いのかしら?
「私の年齢が気になりますか?」
「えっ…そんなことは」
「いい加減になさい!」
スパンと音が聞こえた。
「いてっ…セラ!痛いって」
「痛いではありません。無礼ではありませんか」
背後で美しい女神様が冷たい視線を浮かべている。
「ご無礼をお許しくださいませ」
「あっ…あの」
「お初にお目にかかります。セラヴィ・アダージョと申します」
「ジゼル・ユーモレスクでございます」
なんて美しい女性かしら?
思わず魅入ってしまうような美しさだわ。
「はははっ!美しいでしょう!我が婚約者殿は…いで!」
「場所を弁えなさい」
「スイマセン」
何故だろうか?
女神様のようにお美しい方なのに、閻魔大王様の影が見てた気がする。
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