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幕間 魔王と側近の内緒話
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聖女がいる部屋から出てきて廊下に出ると、魔王はその美しい眉を吊り上がらせて側近に食って掛かった。
「なんだ、あの聖女! 天然か?」
「しー、聞こえたらどうするんです!」
「よりによって、結婚しろだと? 一体何を考えているんだ」
「望む通りに、お嫁さんにしてあげたらいいじゃないですか」
「嫌だよ。あのバカ勇者をつけあがらせて調子に乗らせて、それでも加護を与えるために祈りつづけて、あんな手の付けようがない怪物を産みだした元凶があいつだろう」
「しかし、彼女の望む通りにすれば、主神の寵愛は我ら魔族のもとに戻ってきます」
「主神ねえ……。そんなもの、魔族には必要ない」
「何言ってるんですか。聖女の祈りさえ手に入れば、魔族は以前の力を取り戻します。そうすればもう、毎日イモばっかりの食卓ともお別れですよ。食べたいでしょう、お肉」
「おまえな、財政がひっ迫しているからって、俺の食費から最初に削るのをやめてくれ。聖女には貴重な果物も小麦も惜しまず与えていたじゃないか」
「見栄を張ったんですよ、足元見られるわけにはいきませんから。あなただって、昨日はノリノリだったじゃないですか」
「そういう作戦だったから実行しただけだ! 誰が好き好んで、あんな格好で歯の浮くようなセリフを……」
「だからって、まさか誘拐してくるとは思いませんでした」
「……」
「勇者と聖女のつながりが薄れて結界にほころびが生じた隙に聖女に会い、魔族の窮状を訴えて同情を買って聖女を調略しましょうとは言いましたが、攫ってきてくださいなんて言ってないんですよ」
「……ほっとけなかったんだよ、泣いてたから」
「ほーほーなるほど。勇者に捨てられて傷心しているところを、タイミングよく迎えに行ったんですね。しかも、あんなにキザったらしく、痛いほど恰好をつけて!」
「おい、お前の作戦だったからな。『年頃の娘の関心を買うには雰囲気が最重要です!』とかいって」
「いやー、聖女さまもお目が高い。まさか、我らが魔王様を選んで求婚するとは」
「待て。まさか、あの話受けろって、本気で言うわけじゃないよな? 聖女と結婚なんてできるか! 俺は魔王だぞ」
「あたりまえですよ、彼女の処女を失うわけにはいきません。主神の寵愛が失われますからね」
「……主神、処女厨のロリコンかよ。最悪だな」
「しー! 聞こえたらどうするんです!」
「お前もたいがい、いい性格してるよな……」
「カタチだけでいいんですよ。聖女様の望み通り、お嫁さんにしてあげましょう」
「いや、だって、形だけ伴侶になったって、心が伴わないと祈りは届かないだろう」
「だから優しくしてあげるんです。優しくして、弱さを受け入れてあげれば、徐々に心の壁は溶かされていくでしょう。長い時間をかけて絆を深めていけば、心もそのうち伴っていきますよ。幸い、と言っては気の毒ですが、彼女は生涯をかけた恋を失ったばかり。付け入る隙は、アリアリのアリです」
「そんなに単純はずあるか。あのツラの皮一つで、自分の何倍も歳をとっている国の重鎮と渡り合って勇者を保護してきたんだぞ、あいつは」
「ぐだぐだ言ってないで、言う通りにしてくださいよ。あなたと聖女がくっつけば、全部丸く収まるじゃないですか!」
自分の部屋から扉一枚隔てた廊下でこんな会話がなされていることを、聖女リディは知る由もない。
「なんだ、あの聖女! 天然か?」
「しー、聞こえたらどうするんです!」
「よりによって、結婚しろだと? 一体何を考えているんだ」
「望む通りに、お嫁さんにしてあげたらいいじゃないですか」
「嫌だよ。あのバカ勇者をつけあがらせて調子に乗らせて、それでも加護を与えるために祈りつづけて、あんな手の付けようがない怪物を産みだした元凶があいつだろう」
「しかし、彼女の望む通りにすれば、主神の寵愛は我ら魔族のもとに戻ってきます」
「主神ねえ……。そんなもの、魔族には必要ない」
「何言ってるんですか。聖女の祈りさえ手に入れば、魔族は以前の力を取り戻します。そうすればもう、毎日イモばっかりの食卓ともお別れですよ。食べたいでしょう、お肉」
「おまえな、財政がひっ迫しているからって、俺の食費から最初に削るのをやめてくれ。聖女には貴重な果物も小麦も惜しまず与えていたじゃないか」
「見栄を張ったんですよ、足元見られるわけにはいきませんから。あなただって、昨日はノリノリだったじゃないですか」
「そういう作戦だったから実行しただけだ! 誰が好き好んで、あんな格好で歯の浮くようなセリフを……」
「だからって、まさか誘拐してくるとは思いませんでした」
「……」
「勇者と聖女のつながりが薄れて結界にほころびが生じた隙に聖女に会い、魔族の窮状を訴えて同情を買って聖女を調略しましょうとは言いましたが、攫ってきてくださいなんて言ってないんですよ」
「……ほっとけなかったんだよ、泣いてたから」
「ほーほーなるほど。勇者に捨てられて傷心しているところを、タイミングよく迎えに行ったんですね。しかも、あんなにキザったらしく、痛いほど恰好をつけて!」
「おい、お前の作戦だったからな。『年頃の娘の関心を買うには雰囲気が最重要です!』とかいって」
「いやー、聖女さまもお目が高い。まさか、我らが魔王様を選んで求婚するとは」
「待て。まさか、あの話受けろって、本気で言うわけじゃないよな? 聖女と結婚なんてできるか! 俺は魔王だぞ」
「あたりまえですよ、彼女の処女を失うわけにはいきません。主神の寵愛が失われますからね」
「……主神、処女厨のロリコンかよ。最悪だな」
「しー! 聞こえたらどうするんです!」
「お前もたいがい、いい性格してるよな……」
「カタチだけでいいんですよ。聖女様の望み通り、お嫁さんにしてあげましょう」
「いや、だって、形だけ伴侶になったって、心が伴わないと祈りは届かないだろう」
「だから優しくしてあげるんです。優しくして、弱さを受け入れてあげれば、徐々に心の壁は溶かされていくでしょう。長い時間をかけて絆を深めていけば、心もそのうち伴っていきますよ。幸い、と言っては気の毒ですが、彼女は生涯をかけた恋を失ったばかり。付け入る隙は、アリアリのアリです」
「そんなに単純はずあるか。あのツラの皮一つで、自分の何倍も歳をとっている国の重鎮と渡り合って勇者を保護してきたんだぞ、あいつは」
「ぐだぐだ言ってないで、言う通りにしてくださいよ。あなたと聖女がくっつけば、全部丸く収まるじゃないですか!」
自分の部屋から扉一枚隔てた廊下でこんな会話がなされていることを、聖女リディは知る由もない。
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