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番外編
番外編3. 慎二と佳奈の話(上)
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お久しぶりです!
奏の両親、慎二と佳奈が大学生の時の話です。2人のイメージが少し変わってしまうかもしれません。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
文学部にすごく可愛い女子がいる。同じ学部の友人がそんなことをわざわざ報告してきたのは、大学に入ってすぐの春だった。サークルの勧誘を掻い潜って家に帰った俺に、わざわざそいつが連絡してきたのだ。
文学部の一年のその女子は、美人で可愛いのだと言う。
よくわからない話に、僕は一人暮らしを始めた部屋であくびを堪えていた。
「それはよかったね。そのサークル入るといいよ」
適当に相槌を打っていたら、「お前も入るんだよ」と電話口に言われた。
聞けばそのサークルは、散歩をメインにしつつも、行き先で見つけた建物をみんなでスケッチすることを目的とするサークルらしかった。「ペンと足サークル」なんて名前がついていて、不思議なサークルがあるものだなと思った。
結局、建築家になりたい僕にとっても有意義かもしれないと思って、そいつと一緒にサークルに入った。
メンバーは全員話すことが大好きと明言するくらいの人たちで、部室のソファでそれぞれだらだらと話していた。むしろ描くことではなく、話すことがメインのサークルなのかもしれない。部屋に入ってすぐに間違えたと思った。
そんな中、窓の外を眺めながらスケッチをしている女子が一人いた。僕らよりも早くサークルに入会していた彼女が、話題に上がっていた可愛い女子だということは後から知ったけれど、確かに真っ直ぐに伸びた髪が綺麗で目を引く子だった。
「今日はすごく天気がいいから外にスケッチしに行きませんか?」
外を眺めていた静かな雰囲気とは違い、予想以上に溌剌とした声が窓辺から周りに提案した。可愛い新入部員にみんな関心があるのか、すぐに反応して荷物を用意し始めた。
そのままキャンパスから出て、街中を歩いた。結構栄えた街にある大学だったから描ける建物はたくさんある。すぐに建物に目星をつけて、それを対象に線を引いた。
サークルの男子たちはみんな彼女と一定距離を保っていた。逆に女子たちはこっちによってきて僕のスケッチブックを覗き込む。
「宮本くんだっけ?」
「はい」
「慎二くんって呼んでいい?」
別になんて呼ばれても構わない。頷いてまた絵に戻った。サークル内で真剣に描いているのは俺と彼女くらいで、他はおしゃべりに講じながらそれなりにペンを動かしていた。一緒に入った友人もそうだった。
街の中の絵を描くのは楽しかった。僕はスケッチに夢中になった。サークルの活動がしっかり勉強の方にも反映されているのも楽しかった。
サークルは週に三回で、参加してもしなくてもいい。みんなそれなりにやる気がないから、来たりこなかったりだった。だけど僕はサークルという大義名分に乗せられるままに、スケッチブックを手に、部室に行っていた。彼女も毎回来ているメンバーだった。
だから自然と話す回数も増えたし、その分彼女の趣味であったりも知った。大笑いを本当に楽しそうにして、逆に微笑む時には少し下を向く。顔を上げた時にキラキラと光っている瞳であったり……。彼女はスケッチしてきたどの建物よりも綺麗だった。
僕は彼女に夢中になっていた。
ただただ思い出作りが目的なのだろう合宿で、恋愛の話になった。
「佳奈ちゃんはどんな人がタイプなの?」
三年生の先輩が佳奈にそう聞いた。彼女はしばらく考えてから、おもしろそうに笑う。それだけで、周りの空気は柔らかくなる。
「具体的なタイプっていうとわからないけど……、そうですね。外見だったら男らしい顔立ちが好きですね」
彼女はハリウッドの有名な俳優を例に上げた。僕は自分の顔を思い出した。優男と言われてきた僕が彼女の理想と遠く離れていることはわかった。
「ええ! 顔じゃなくて性格は?」
先輩は拗ねたように口を尖らせてなお聞いた。僕も耳をそばだてた。
「性格はよくわからないですけど、暖かい家庭築けるような夫婦になりたいです。私の将来の夢なので」
「結婚まで想定してるんだ?」
「え? 付き合うのに結婚まで考えられないような男の人は嫌ですよ!」
遊んでいる連中もいるからか、彼らに気を遣って、彼女は冗談のように笑って言った。けれど本当にそういうふうに考えていることは僕にはなんとなくわかった。
「暖かい家庭」という言葉がすごく僕の中に染み込んで行った。
それ以来僕はなんだか街にある立派なビルにはあまり興味を持てなくなった。元々は、いつか東京に僕のデザインしたビルを建てたいなんて野心を持っていたのに、そんなことはどうでもいいとすら思えてきていた。
それよりも僕は、一軒家に心惹かれるようになった。それぞれの家庭を作り、守る小さな城。そんな家という概念と存在に憧れるようになっていた。
僕は明らかに佳奈という存在に感化されていて、そして佳奈という存在が好きだった。彼女がいつか結婚を前提に誰かと付き合うのなら、それは僕であってほしいと思った。
そんな思いを拗らせた僕はとうとう彼女に告白をした。
結果は惨敗。顔が好みじゃない。そう言われた。
奏の両親、慎二と佳奈が大学生の時の話です。2人のイメージが少し変わってしまうかもしれません。
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文学部にすごく可愛い女子がいる。同じ学部の友人がそんなことをわざわざ報告してきたのは、大学に入ってすぐの春だった。サークルの勧誘を掻い潜って家に帰った俺に、わざわざそいつが連絡してきたのだ。
文学部の一年のその女子は、美人で可愛いのだと言う。
よくわからない話に、僕は一人暮らしを始めた部屋であくびを堪えていた。
「それはよかったね。そのサークル入るといいよ」
適当に相槌を打っていたら、「お前も入るんだよ」と電話口に言われた。
聞けばそのサークルは、散歩をメインにしつつも、行き先で見つけた建物をみんなでスケッチすることを目的とするサークルらしかった。「ペンと足サークル」なんて名前がついていて、不思議なサークルがあるものだなと思った。
結局、建築家になりたい僕にとっても有意義かもしれないと思って、そいつと一緒にサークルに入った。
メンバーは全員話すことが大好きと明言するくらいの人たちで、部室のソファでそれぞれだらだらと話していた。むしろ描くことではなく、話すことがメインのサークルなのかもしれない。部屋に入ってすぐに間違えたと思った。
そんな中、窓の外を眺めながらスケッチをしている女子が一人いた。僕らよりも早くサークルに入会していた彼女が、話題に上がっていた可愛い女子だということは後から知ったけれど、確かに真っ直ぐに伸びた髪が綺麗で目を引く子だった。
「今日はすごく天気がいいから外にスケッチしに行きませんか?」
外を眺めていた静かな雰囲気とは違い、予想以上に溌剌とした声が窓辺から周りに提案した。可愛い新入部員にみんな関心があるのか、すぐに反応して荷物を用意し始めた。
そのままキャンパスから出て、街中を歩いた。結構栄えた街にある大学だったから描ける建物はたくさんある。すぐに建物に目星をつけて、それを対象に線を引いた。
サークルの男子たちはみんな彼女と一定距離を保っていた。逆に女子たちはこっちによってきて僕のスケッチブックを覗き込む。
「宮本くんだっけ?」
「はい」
「慎二くんって呼んでいい?」
別になんて呼ばれても構わない。頷いてまた絵に戻った。サークル内で真剣に描いているのは俺と彼女くらいで、他はおしゃべりに講じながらそれなりにペンを動かしていた。一緒に入った友人もそうだった。
街の中の絵を描くのは楽しかった。僕はスケッチに夢中になった。サークルの活動がしっかり勉強の方にも反映されているのも楽しかった。
サークルは週に三回で、参加してもしなくてもいい。みんなそれなりにやる気がないから、来たりこなかったりだった。だけど僕はサークルという大義名分に乗せられるままに、スケッチブックを手に、部室に行っていた。彼女も毎回来ているメンバーだった。
だから自然と話す回数も増えたし、その分彼女の趣味であったりも知った。大笑いを本当に楽しそうにして、逆に微笑む時には少し下を向く。顔を上げた時にキラキラと光っている瞳であったり……。彼女はスケッチしてきたどの建物よりも綺麗だった。
僕は彼女に夢中になっていた。
ただただ思い出作りが目的なのだろう合宿で、恋愛の話になった。
「佳奈ちゃんはどんな人がタイプなの?」
三年生の先輩が佳奈にそう聞いた。彼女はしばらく考えてから、おもしろそうに笑う。それだけで、周りの空気は柔らかくなる。
「具体的なタイプっていうとわからないけど……、そうですね。外見だったら男らしい顔立ちが好きですね」
彼女はハリウッドの有名な俳優を例に上げた。僕は自分の顔を思い出した。優男と言われてきた僕が彼女の理想と遠く離れていることはわかった。
「ええ! 顔じゃなくて性格は?」
先輩は拗ねたように口を尖らせてなお聞いた。僕も耳をそばだてた。
「性格はよくわからないですけど、暖かい家庭築けるような夫婦になりたいです。私の将来の夢なので」
「結婚まで想定してるんだ?」
「え? 付き合うのに結婚まで考えられないような男の人は嫌ですよ!」
遊んでいる連中もいるからか、彼らに気を遣って、彼女は冗談のように笑って言った。けれど本当にそういうふうに考えていることは僕にはなんとなくわかった。
「暖かい家庭」という言葉がすごく僕の中に染み込んで行った。
それ以来僕はなんだか街にある立派なビルにはあまり興味を持てなくなった。元々は、いつか東京に僕のデザインしたビルを建てたいなんて野心を持っていたのに、そんなことはどうでもいいとすら思えてきていた。
それよりも僕は、一軒家に心惹かれるようになった。それぞれの家庭を作り、守る小さな城。そんな家という概念と存在に憧れるようになっていた。
僕は明らかに佳奈という存在に感化されていて、そして佳奈という存在が好きだった。彼女がいつか結婚を前提に誰かと付き合うのなら、それは僕であってほしいと思った。
そんな思いを拗らせた僕はとうとう彼女に告白をした。
結果は惨敗。顔が好みじゃない。そう言われた。
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