37 / 37
エピローグ
しおりを挟む
あれから干支が一回り。
亮治は、ルーキーイヤーにいきなりオールスターに選ばれた。さすがに先発とはいかなかったが初戦で2回を投げ、6連続三振なんて離れ業をやってのけた。
残念ながらその日はパ・リーグが負けたためMVPこそ逃したものの、当然優秀選手には選ばれ、そのお立ち台で『たかちゃ~ん、約束守ったよ~』と号泣したのは今でも語り種になっている。
入団以来12年連続で二桁勝利をあげ、今や誰もが認めるナンバーワンピッチャーだ。
人気、実力共球界随一と言われ、当然今年もファン投票ぶっちぎり1位でオールスターゲームの出場が決定した。
一方俺は膵臓癌で急逝した親父の跡を継ぎ、昔と変わらず丁寧な酒造りで人気の小さな酒造メーカーを守っている──杜氏頭と再婚した亮治のお母さんと、うちのお袋に支えてもらいながら。
「なあ…いい加減、一緒に暮らそうぜ」
大人になり、少し格好をつける事を覚えた亮治は、セックスの後に必ずこう言う。
いくつになってもこいつの目には俺しか映ってない事が堪らなく嬉しいけれど、俺はその言葉に頷いた事はない。
「バカ言うな。お前には大事な役目があろうが。俺にも俺の役目があるんで。お前がプロ辞めた時に……安心して帰ってこれる場所を、ちゃんと守っとかんにゃいけんじゃろ」
断るとわかっていても亮治は毎回同じ言葉を繰り返す。
きっと亮治も、俺が変わらずコイツの事だけを考えて生きていると実感したいんだろう。
「なあなあ、今年のオールスター、どこじゃ思う? なんと……甲子園なんで!」
「ほんまか!? ほしたらようやくリベンジじゃのぉ。バシッと決めてこいよ」
一頻り汗が引いたところで再び亮治が覆い被さってくる。体は悲鳴をあげているのに、俺は悦んでその重みを受け入れた。
ほぼ逢瀬の為だけに借りている、バカみたいに広いマンションのリビングで、冷房もつけないままで二人縺れる。
いつかのような夏の盛りではないのに、開け放たれた窓の外にはうんざりするほどの青空と──大きな入道雲が広がっていた。
亮治は、ルーキーイヤーにいきなりオールスターに選ばれた。さすがに先発とはいかなかったが初戦で2回を投げ、6連続三振なんて離れ業をやってのけた。
残念ながらその日はパ・リーグが負けたためMVPこそ逃したものの、当然優秀選手には選ばれ、そのお立ち台で『たかちゃ~ん、約束守ったよ~』と号泣したのは今でも語り種になっている。
入団以来12年連続で二桁勝利をあげ、今や誰もが認めるナンバーワンピッチャーだ。
人気、実力共球界随一と言われ、当然今年もファン投票ぶっちぎり1位でオールスターゲームの出場が決定した。
一方俺は膵臓癌で急逝した親父の跡を継ぎ、昔と変わらず丁寧な酒造りで人気の小さな酒造メーカーを守っている──杜氏頭と再婚した亮治のお母さんと、うちのお袋に支えてもらいながら。
「なあ…いい加減、一緒に暮らそうぜ」
大人になり、少し格好をつける事を覚えた亮治は、セックスの後に必ずこう言う。
いくつになってもこいつの目には俺しか映ってない事が堪らなく嬉しいけれど、俺はその言葉に頷いた事はない。
「バカ言うな。お前には大事な役目があろうが。俺にも俺の役目があるんで。お前がプロ辞めた時に……安心して帰ってこれる場所を、ちゃんと守っとかんにゃいけんじゃろ」
断るとわかっていても亮治は毎回同じ言葉を繰り返す。
きっと亮治も、俺が変わらずコイツの事だけを考えて生きていると実感したいんだろう。
「なあなあ、今年のオールスター、どこじゃ思う? なんと……甲子園なんで!」
「ほんまか!? ほしたらようやくリベンジじゃのぉ。バシッと決めてこいよ」
一頻り汗が引いたところで再び亮治が覆い被さってくる。体は悲鳴をあげているのに、俺は悦んでその重みを受け入れた。
ほぼ逢瀬の為だけに借りている、バカみたいに広いマンションのリビングで、冷房もつけないままで二人縺れる。
いつかのような夏の盛りではないのに、開け放たれた窓の外にはうんざりするほどの青空と──大きな入道雲が広がっていた。
0
この作品の感想を投稿する
みんなの感想(2件)
あなたにおすすめの小説
『定時後の偶然が多すぎる』
こさ
BL
定時後に残業をするたび、
なぜか必ず同じ上司が、同じフロアに残っている。
仕事ができて、無口で、社内でも一目置かれている存在。
必要以上に踏み込まず、距離を保つ人――
それが、彼の上司だった。
ただの偶然。
そう思っていたはずなのに、
声をかけられる回数が増え、
視線が重なる時間が長くなっていく。
「無理はするな」
それだけの言葉に、胸がざわつく理由を、
彼自身はまだ知らない。
これは、
気づかないふりをする上司と、
勘違いだと思い込もうとする部下が、
少しずつ“偶然”を積み重ねていく話。
静かで、逃げ場のない溺愛が、
定時後から始まる。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。
お気に入り登録しときますね♪
ありがとうございます
もう堪らなくて最高ですね!!幼馴染の青春と真っ直ぐに想いあってる二人が幸せそうで読んでるこちらまで幸せでニコニコしてしまいます。読みやすく野球を知らなくても大丈夫でした。周りの人も優しいし互いに信頼しあってる様子がとても伝わりました。執筆頑張ってください!!応援しております。
お言葉、ありがとうございます。
方言と野球とであれこれわかりにくい部分もあると思うのですが、きちんと伝わっているようで本当に良かった。
普段は大人同士の話を書く事が多く、初々しくも抑えられない強い思いを持っている幼馴染みカップルと言うのは自分でもとても新鮮です。
ますます真っ直ぐに、時にワチャワチャと二人の大切な時間を書いていきたいと思いますので、どうぞのんびりお付き合いください。