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第2部 VSペッパー団編
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シングルマザーの下に生まれた春日ゆうきと春日はるきは二卵性双生児だった。
母親は水商売で稼ぐ貧しい家だった。
貧しいだけだったらよかったのかもしれない。
成長して、二人が5歳になったとき、はるきが周りの子供とは違うと、母親は思い出した。
すぐさま病院に駆け込み、判明した。
はるきは自閉症スペクトラム障害だった。
発達障害だ。
障がい者を嫌う母親は、突然はるきへの愛情を放棄した。
ゆうきには衣服と飯を与え、はるきには暴力と罵詈雑言を与えた。
それは年を重ねるにつれエスカレートしていった。
ゆうきは、弟のみすぼらしい姿をみて母親に怒りを覚えていた。
ついに児童相談所への連絡を決心する。
施設の人間が自宅を訪れ、やがて母親は虐待で捕まり裁きにかけられた。
母親以外に身寄りのない兄弟は施設に入れられ、快適な生活を送り優しい里親を待つだけだった。
そのはずだった。
えりんは全く普通の家庭の出身だった。
母親はパート、父親は中学教師の、ごくありふれた家庭。
えりんの誕生は彼らの家庭を温かく豊かにした。
望まれて生まれてきたことをえりんは無意識ながら感じていた。
しかし彼女が7つの頃、父親が変貌する。
それは仕事のストレスか、それとも父親の本性だったのか。
今の彼女の知るところではないが、家庭内暴力が始まった。
毎日のように殴られた。
母子共々痣が目立つようになった。
陰惨な暴力が二人を襲った。
いつしか母親はえりんを置いてどこかへ逃げてしまった。
それが父親の怒りに触れた。
すべての怒りの受け口となったえりんの身体は、見るも無残な姿だった。
痣だけでない。
必ず体のどこかが裂けていた。
目を殴られ、片目の視力も落ちていた。
それでも耐えた。
父親の為だと耐えた。
父親の為だと思えたから耐えられた。
ある日この家族のもとに警察が訪れた。
解放の時だった。
父親は捕まり、えりんは施設に移された。
これでもう、痛みを知る必要もない。
彼女はそう思っていた。
だいきはすでにその施設にいた。
捨て子の彼に過去はない。
ただこの施設で過ごし、この施設の闇に触れ続けた。
同年齢の4人はすぐに打ち解けた。
その4人に、闇が襲い掛かる。
ある時はるきが職員に呼び出しを受けた。
そのことを聞いただいきの顔が青ざめた。
呼び出しを受けた部屋ではるきは、折檻を受けた。
ひどいものだった。
鞭も棒も使って職員がはるきの身体を殴った。
激しく。
激しく。
ある時にはえりんが呼び出された。
だいきは知っていた。
女の子が呼び出しを受けたとき、その子が何をされるかを。
えりんが指定された部屋に入った。
途端に職員がえりんを拘束する。
拘束された体から服が剝ぎ落されていく。
その時になってえりんは気づいた。
周りの職員も裸だったことに。
この施設は一度入ったら成人するまで出られない。
出られるときには、念入りな脅迫とともに外の世界に送り出される。
それがこの施設の闇。
この闇を隠すためにボランティアを雇うほど、職員は陰湿だった。
そのボランティアの中に、日向ヒナタの姿があった。
参加者の中で一番若い彼に、施設の子供たちはすぐに懐いた。
そしてどうにかしてメッセージを送ろうとした。
手紙を送ろうとした。
耳打ちしようとした。
それ以外にも子供らしい工夫をした悲痛なメッセージはいくつも用意された。
だがすべて職員に潰された。
そしてこのようなことを画策した子供には特大の折檻が送られた。
骨を折られるものもいた。
子供たちはもはやあきらめていた。
ヒナタが来た時には、その瞬間だけ楽しいひと時を過ごす。
そしてボランティアが帰っていったら、言いがかりをつけられながら折檻を受ける。
それ以外に自分たちの人生はない。
これよりも良い選択肢が存在しない。
そう子供たちは信じていた。
だが、だいきたちは違った。
必ず大人を打ち破る手段はある。
どんな方法を執ろうとも、大人に打ち勝つ手段はある。
そして4人がとった方法は、暴力だった。
施設内でも人通りが少ない部屋。
その部屋のロッカーで待ち伏せすることにした。
自分たちが持っている一番堅いおもちゃを手にして、大人を倒すために。
一人の職員がやってきた。
ロッカーの目の前を通り過ぎる。
その瞬間、4人が飛び出した。
男の頭目掛けておもちゃを振り下ろす。
命中した。
続けて振り下ろそうとしたとき、男が叫んだ。
途端にぞくぞくと部屋の中に職員が入り込んできた。
慌てたように部屋に入り、目の前の光景を目にすると、その顔が赤く染まっていった。
大人たちは反逆に対する怒りに任せて子供たちを殴った。
ただひたすらに殴り、壁に打ち付け、床に叩き落した。
嫌な音も響いた。
子供たちが完全に動かなくなったころ、一人の職員が取り乱したように何かを言ったことを、薄れていく視界の中でだいきたちは聞いていた。
「おい待て! もしかしてこいつら・・・まさかし・・・・・・」
目が覚めるとだいきでも知らない部屋で寝かされていた。
狭い部屋にベッドだけが置かれている。
頭が痛い。
ふらふらする、が、じきにそれも治った。
外に出るためにドアノブに手を掛けるが、開かない。
閉じ込められていた。
さしずめ、これも何かのお仕置きだろうと子供たちは思っていた。
子供たちが能力に気づいたのは、これの少し後だった。
怒りに壁を叩くとその壁に穴が開き、水に触れると別の世界に飛び、人に見られると姿が変わる・・・。
自分たちが特別な力を手にしたことは明白だった。
そして、必然的に彼らは思う。
「この能力で大人たちを殺せるんじゃないのか。」
実行に移すまでに時間はかからなかった。
ドアをたたき壊し、職員室に進み、眼に映った大人を問答無用で狩る。
あまりにも爽快だった。
少し殴っただけで大人たちが簡単に潰れていく。
遠くからでも手にくっついたものを投げれば死んでいく。
殺して、殺して、殺しまわった。
そしてようやく、いつも4人が遊んでいた、子供たちが集まる部屋に到着した。
解放の時が来た。
そう確信して扉を開けると、大人が子供を皆殺しにしていた。
だいきは、職員の男に向かって叫んだ。
「なにしてんだてめえ!!」
職員は叫び返す。
「うるせえ!! お前こそなに人を殺してんだ! お前たちのせいで口封じしねえといけねえだろうがよぉ!!」
その言葉を聞いて、4人は真に、大人がクソであるかを知った。
男が続けて叫ぶ。
「第一なんで生きてんだよお前!! あんとき死んでたじゃねえかああ!!」
そう言って、男はまた一人の子供を刺殺した。
だいきが踏み込んだ。
最高速で男に到達し、首元を掴んで床にたたきつける。
「てめえ!!」
「はッ! 俺が死んでもな! 子供を殺したのはお前たちっておもわれるだ・・・」
だいきの拳が男の頭に触れた。
途端に肉が弾け飛ぶ。
床一面、施設全体に血しぶきが残された。
だいきがはるきに声を掛ける。
「別世界に俺たちを入れて。」
はるきが静かに答える。
「判った。」
だいきが、次は3人に向かって問いかけた。
「オレは、これから他の施設のクソどもを殺したい。ついてきて、くれるよな。」
誰も何も言わなかった。
ただ頷いて、だいきの肩に触れた。
「ありがとう・・・。」
はるきが蛇口を捻った。
水が流れてシンクを流れる。
「じゃあ行こう。」
「うん。」
はるきに続いてみんなが頷いた。
4人の身体が水に吸い込まれていく。
こうして何季市の施設には誰もいなくなった。
母親は水商売で稼ぐ貧しい家だった。
貧しいだけだったらよかったのかもしれない。
成長して、二人が5歳になったとき、はるきが周りの子供とは違うと、母親は思い出した。
すぐさま病院に駆け込み、判明した。
はるきは自閉症スペクトラム障害だった。
発達障害だ。
障がい者を嫌う母親は、突然はるきへの愛情を放棄した。
ゆうきには衣服と飯を与え、はるきには暴力と罵詈雑言を与えた。
それは年を重ねるにつれエスカレートしていった。
ゆうきは、弟のみすぼらしい姿をみて母親に怒りを覚えていた。
ついに児童相談所への連絡を決心する。
施設の人間が自宅を訪れ、やがて母親は虐待で捕まり裁きにかけられた。
母親以外に身寄りのない兄弟は施設に入れられ、快適な生活を送り優しい里親を待つだけだった。
そのはずだった。
えりんは全く普通の家庭の出身だった。
母親はパート、父親は中学教師の、ごくありふれた家庭。
えりんの誕生は彼らの家庭を温かく豊かにした。
望まれて生まれてきたことをえりんは無意識ながら感じていた。
しかし彼女が7つの頃、父親が変貌する。
それは仕事のストレスか、それとも父親の本性だったのか。
今の彼女の知るところではないが、家庭内暴力が始まった。
毎日のように殴られた。
母子共々痣が目立つようになった。
陰惨な暴力が二人を襲った。
いつしか母親はえりんを置いてどこかへ逃げてしまった。
それが父親の怒りに触れた。
すべての怒りの受け口となったえりんの身体は、見るも無残な姿だった。
痣だけでない。
必ず体のどこかが裂けていた。
目を殴られ、片目の視力も落ちていた。
それでも耐えた。
父親の為だと耐えた。
父親の為だと思えたから耐えられた。
ある日この家族のもとに警察が訪れた。
解放の時だった。
父親は捕まり、えりんは施設に移された。
これでもう、痛みを知る必要もない。
彼女はそう思っていた。
だいきはすでにその施設にいた。
捨て子の彼に過去はない。
ただこの施設で過ごし、この施設の闇に触れ続けた。
同年齢の4人はすぐに打ち解けた。
その4人に、闇が襲い掛かる。
ある時はるきが職員に呼び出しを受けた。
そのことを聞いただいきの顔が青ざめた。
呼び出しを受けた部屋ではるきは、折檻を受けた。
ひどいものだった。
鞭も棒も使って職員がはるきの身体を殴った。
激しく。
激しく。
ある時にはえりんが呼び出された。
だいきは知っていた。
女の子が呼び出しを受けたとき、その子が何をされるかを。
えりんが指定された部屋に入った。
途端に職員がえりんを拘束する。
拘束された体から服が剝ぎ落されていく。
その時になってえりんは気づいた。
周りの職員も裸だったことに。
この施設は一度入ったら成人するまで出られない。
出られるときには、念入りな脅迫とともに外の世界に送り出される。
それがこの施設の闇。
この闇を隠すためにボランティアを雇うほど、職員は陰湿だった。
そのボランティアの中に、日向ヒナタの姿があった。
参加者の中で一番若い彼に、施設の子供たちはすぐに懐いた。
そしてどうにかしてメッセージを送ろうとした。
手紙を送ろうとした。
耳打ちしようとした。
それ以外にも子供らしい工夫をした悲痛なメッセージはいくつも用意された。
だがすべて職員に潰された。
そしてこのようなことを画策した子供には特大の折檻が送られた。
骨を折られるものもいた。
子供たちはもはやあきらめていた。
ヒナタが来た時には、その瞬間だけ楽しいひと時を過ごす。
そしてボランティアが帰っていったら、言いがかりをつけられながら折檻を受ける。
それ以外に自分たちの人生はない。
これよりも良い選択肢が存在しない。
そう子供たちは信じていた。
だが、だいきたちは違った。
必ず大人を打ち破る手段はある。
どんな方法を執ろうとも、大人に打ち勝つ手段はある。
そして4人がとった方法は、暴力だった。
施設内でも人通りが少ない部屋。
その部屋のロッカーで待ち伏せすることにした。
自分たちが持っている一番堅いおもちゃを手にして、大人を倒すために。
一人の職員がやってきた。
ロッカーの目の前を通り過ぎる。
その瞬間、4人が飛び出した。
男の頭目掛けておもちゃを振り下ろす。
命中した。
続けて振り下ろそうとしたとき、男が叫んだ。
途端にぞくぞくと部屋の中に職員が入り込んできた。
慌てたように部屋に入り、目の前の光景を目にすると、その顔が赤く染まっていった。
大人たちは反逆に対する怒りに任せて子供たちを殴った。
ただひたすらに殴り、壁に打ち付け、床に叩き落した。
嫌な音も響いた。
子供たちが完全に動かなくなったころ、一人の職員が取り乱したように何かを言ったことを、薄れていく視界の中でだいきたちは聞いていた。
「おい待て! もしかしてこいつら・・・まさかし・・・・・・」
目が覚めるとだいきでも知らない部屋で寝かされていた。
狭い部屋にベッドだけが置かれている。
頭が痛い。
ふらふらする、が、じきにそれも治った。
外に出るためにドアノブに手を掛けるが、開かない。
閉じ込められていた。
さしずめ、これも何かのお仕置きだろうと子供たちは思っていた。
子供たちが能力に気づいたのは、これの少し後だった。
怒りに壁を叩くとその壁に穴が開き、水に触れると別の世界に飛び、人に見られると姿が変わる・・・。
自分たちが特別な力を手にしたことは明白だった。
そして、必然的に彼らは思う。
「この能力で大人たちを殺せるんじゃないのか。」
実行に移すまでに時間はかからなかった。
ドアをたたき壊し、職員室に進み、眼に映った大人を問答無用で狩る。
あまりにも爽快だった。
少し殴っただけで大人たちが簡単に潰れていく。
遠くからでも手にくっついたものを投げれば死んでいく。
殺して、殺して、殺しまわった。
そしてようやく、いつも4人が遊んでいた、子供たちが集まる部屋に到着した。
解放の時が来た。
そう確信して扉を開けると、大人が子供を皆殺しにしていた。
だいきは、職員の男に向かって叫んだ。
「なにしてんだてめえ!!」
職員は叫び返す。
「うるせえ!! お前こそなに人を殺してんだ! お前たちのせいで口封じしねえといけねえだろうがよぉ!!」
その言葉を聞いて、4人は真に、大人がクソであるかを知った。
男が続けて叫ぶ。
「第一なんで生きてんだよお前!! あんとき死んでたじゃねえかああ!!」
そう言って、男はまた一人の子供を刺殺した。
だいきが踏み込んだ。
最高速で男に到達し、首元を掴んで床にたたきつける。
「てめえ!!」
「はッ! 俺が死んでもな! 子供を殺したのはお前たちっておもわれるだ・・・」
だいきの拳が男の頭に触れた。
途端に肉が弾け飛ぶ。
床一面、施設全体に血しぶきが残された。
だいきがはるきに声を掛ける。
「別世界に俺たちを入れて。」
はるきが静かに答える。
「判った。」
だいきが、次は3人に向かって問いかけた。
「オレは、これから他の施設のクソどもを殺したい。ついてきて、くれるよな。」
誰も何も言わなかった。
ただ頷いて、だいきの肩に触れた。
「ありがとう・・・。」
はるきが蛇口を捻った。
水が流れてシンクを流れる。
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「うん。」
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